10、一掃・石の雨
村からついてくることになった少女の名前はティルと言うらしい。
「ティル、あなた武器は持ってる?」
「アクセが魔法高速化、それだけだけど」
「それなら一応、悠斗から短剣借りておいて」
「ん?どうしてだ?」
「接近戦用の武器の一つくらい持っているべきだからよ」
「ボクはいいけどユウトはいいのかい?」
「腰に二本も差しているんだし一本くらいいいんじゃない?」
「ああ、別にいいぜ」
そういって腰から短剣を一本取って渡す。
「ほい」
「ありがとう」
「あとユウトとナッシュは打ち逃したゴブリンとか見かけたら潰してって」
「あいよ」
※※※
「二時の方向に大軍やで」
三十分ほど歩いてやっとゴブリンが見つかった。
顔を向けるといるわいるわわんさかわんさか…
「群れ、報告よりも大きくなっているわね」
数はざっと700程度だろうか。
外見はおそらくほとんどの人の思い描いているものと同じだろう。
唯一予想外なのは様々なものを持っていることか。
棍棒、角材、錆びた刀、動物の骨、石、ゴブリン、金槌…あ、パラボラアンテナみたいなものを持っているやつもいる。
「ねえ、ちょっとやばくない?一旦戻ろうよ」
…ティルよ、シルリアを甘く見ないほうがいいぞ。
「シルリアちゃん、軽く頼んますわ」
「分かってるわ」
シルリアは左手の袖を少し捲くる。そして、手首につけていたブレスレットに人差し指と中指を乗っける。
「混沌より生まれし貫くものよ、数多の姿を喚びて集い、我が指す彼方へ、血を求め、肉を求め、赴くがままに貫け。―石葬雨―」
……なんか前回の炎旋より聖句の量が格段に多い気がするんですけど……
空中に小さな魔方陣が次々に展開されると、ずあぁぁぁ…と虚空より鋭く尖った石が無数に生まれてくる。
それらはシルリアがゴブリンの大群に指を向けるとそちらに飛んで行き…
どごごごごぉぉぉ!!!!!
どれもがゴブリンを追跡し雨のように降り注ぐ。
「相変わらずどえらいもんぶっ放すなぁ」
「ほんと、まさに無敵って感じだよなぁ」
シルリアの強さを知っていた二人はのんびりそんな感想を述べる。
「 。」
開いた口が塞がらないとはこんなことだ!と言えちゃうくらいに口をあんぐり開けて驚いているティル。
「なあナッシュ、討ち逃しってあると思う?」
「一、二匹来るかなって所だと思うで」
「やっぱりそうか」
「そんなにゴブリンと戦いたいのかしら?」
「いや、どっちでもいい」
「遠距離攻撃用の魔法でも使えれば達成感得られそうなんやけどな」
「あれ?ナッシュって魔法使えなかったっけ?」
「わいは簡単な補助魔法しか使えへんよ」
「そうなんだ……そうだシルリア、今度訓練で魔法教えてくれないか」
「別にいいわよ」
「なんや?自分、魔法の道でも目指すん?」
「いや、少し興味がわいただけ」
「そうなんや、素質あるとええなあ」
「素質?」
「魔力最大自己内保有量と気中魔力親和性っていう……簡単に言うと魔力の最大量と回復速度のことや」
「へぇ、そんなのが関係してくるんだ」
「って!ちょっと待って!何でさっきの魔法に驚かないんだよ!」
やっと正気に戻ったティルが声を上げる。
男性二人は顔を見合わせて、
「「あれがシルリア(ちゃん)だから」」
声をそろえて言った。




