第八話「オリーブ」
6時に家を離れ、チタン村に向かう二人。
特に問題もなく進んでいく。
その途中で、レイはやけに存在感のある洞窟を見つける。
それを指さして、問いかける。
「ゼルさん。あれって何ですか?」
「ん? あぁ、あれか。いわゆる『ダンジョン』ってやつだな」
「あれがダンジョンかあ! 」
ダンジョンは世界中にたくさんあり、いま二人が見ているのがまさにそれである。
ダンジョン内には、モンスターがおり、不思議なことにそれを倒すと消滅し、その場になんらかのアイテムが落ちる。
そのアイテムを売ることによって金を設ける、というのが冒険者の基本である。
他にも宝箱などがあり、それも売ったりする。
そのためかなり危険なため、入口の前に注意がかかれた看板が置かれていたりする。
「そうだな。村で武器買って、それなりに練習をしたら行ってみるか」
「はい!」
洞窟の前を通り過ぎ、レイは上機嫌に道を進んでいった。
※
歩き始めて20分ほどで目的の場所についた二人。
シユル村には畑や牧場などがあったが、チタン村は全くない。
その代わり家具や武器などを売っている店が多い。
「よし、とりあえず宿をとるぞ。ついでにそこで飯も取ろう」
「もう決めてあるんですか?」
「あぁ、いつも俺が行ってるところだ」
ゼルはシユル村で一晩過ごすときの方が多いが、武器の修理などでチタン村に泊まったりもする。
そこでいつも泊まっている宿を使おうというわけだ。
部屋をとり、朝食もその宿で済ませる。
邪魔な荷物を置いた二人はさっそく、武器を買いに行く。
「レイはどんな武器が欲しいんだ?」
どの種類がいいか知りたかったため、ゼルはそう聞く。
「かっこいいやつがいいです!」
「……参考になんねぇな」
武器についてはほとんど決めてなかったようだ。
「まぁ、あそこは色んなのが置いてあるしそこで決めればいいか」
※
「ここだ」
と、ゼルはある建物の前で止まる。
レイはその建物をみて。
「小っちゃいですね」
率直な感想を伝える。
「外見は残念だが中身はすげぇぞ?」
「はぁ。」
「とりあえず中に入るか」
店の入口であろうドアを開き、
「オリーブ? いるかー?」
と呼びかける。
すると奥からそれに対する返事が来る。
「オー! ゼルダナ? ひさしいナ! ちょっと待っててクレ」
若干片言なしゃべり方で応える。
1分ほどまっていると、さきほど声がしたほうから人が現れる。
「……」
レイはこの武器屋の主である人の容姿を見て絶句する。
彼女、オリーブは緑髪の長髪で帽子をかぶり、緑の瞳を持った、
――幼女であった。
※
「なるほどナ。そこの少年の武器が欲しいト」
「そうだ、作ってくれるか?」
ここオリーブの店は武器屋であるが武器を売るだけでなく、客から頼まれた物を作るというオーダーメイド的なこともやっている。
「全然かまわなイゾ。どんなのにスルか決めてクレ」
「助かる。レイ、周りの武器みて決めるぞ」
「……」
レイはまだ彼女の事を信じ切れていない。
「少年! ワタシの事を疑っているナ!? 言っておくガ、ここの武器はワタシが作ったものなんだからナ!」
腰に手を当て自慢げに言う。
「安心しろ。こいつはこんななりだが腕は確かだ」
「こんなとハなんダ! こんなとハ!」
ゼルの言い草に憤怒する。
「褒めたんだがなぁ」
「ワタシの姿をバカにするナ!」
どうやらオリーブは自分の容姿に不満を持っているらしい。
「んじゃレイ、見ながら決めるぞー」
「マテ! まだ話は終わってな……」
「はいはい。オリーブさんは美人でカッコイイナー」
ゼルは彼女を適当に流す。
頬をプクーと膨らませながらそっぽを向くオリーブ。
「ハハハ……」
そんな二人を見たレイは乾いた笑いしかできなかった。
くだらない言い合いがあったが無事、レイは欲しい武器を見つけることができた。
「ゼルさん、これが欲しいです」
「ほぉ、刀か」
レイが選んだのは約1メートルほどの刀。
シンプルなデザインなものだった。
「いいんじゃないか?」
「オ、決まったのカ」
話の内容から決まったと感じ取ったオリーブは選ばれた武器を見に来る。
「……フム。そんなカンジで作ればいいのダナ?」
「はい」
「任せてオケ。それジャ、二週間後くらいにまた来てクレ」
「できるだけ良いのを頼むぞ?」
「フン! ワタシを誰だと思っているんダ!」
かなりの自信があるようだ。
「そうだオリーブ。なんでもいいから木刀を二本くれないか」
「ン? 全然いいケド、なんでダ?」
「こいつ剣術とか何も知んねぇから教えようと思ってな」
「そういうコトカ。それナラ、コレとコレを持ってイケ」
近くにあった物を二つゼルに差し出す。
「ありがとよ」
「ワタシの作った武器を使うんダ。しっかり教えてやれヨ」
「おう」
「少年もガンバルのダゾ!」
「は、はい!」
どんな武器ができるのかと期待する反面、プレッシャーを感じてしまうレイであった。