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冒険少女と箱庭遊戯

「みなさん。お久しぶりですこんにちは。そしてこんばんは。新生徒会長の斎藤千佳さいとうちかです」


「みなさん。お久しぶりですこんにちは。そしてこんばんは。副会長の中原麻子なかはらまこです」


「麻子、私たちは第一話以来ね。どうかしら? 久しぶりの登場は?」

「千佳と一緒じゃなければよかったのにね」


「どうしてかしら? わたしは麻子と一緒で嬉しいわ」

「こっちは嬉しくないんだけど?」

「こんなに好意を抱いているのに?」

「私は大嫌いだけどね!」

「その嫌悪感すごくいいわよ。麻子。いつまでもそのままで私を嫌いでいなさい」

「……気持ち悪いんだけど……」


「ところでわたしはいつまで『新』生徒会長と言っていればいいのかしら?」

「知らないわよ」


「生徒会選挙からずいぶん時間が経っているのだけど、そろそろ『新』を取ってもいいのかしら?」

「勝手に取ればいいんじゃないの?」

「麻子はいつ『新』を取ったのかしら?」

「わたしは最初から『新』なんて付けてないから。あんたの勝手で理不尽な推薦からずっと『副会長』だから」

「そう。なら明日からただの『生徒会長』としましょう」


「ねぇ、なんでわたしは千佳とこんな殺風景なところにいるのよ?」

「これよ」

「なに? 手紙?」

創造神さくしゃからの召集令状よ」

「はぁ召集令状? 創造神さくしゃ?! 私たちふたりを名指しで?」

「ええ、令状によるとまえがきをしてほしいそうよ」

「まえがき?」

「令状によると創造神さくしゃは『俺やっぱダメだ。もうダメだ』そうよ」

「なにいってんのこの創造神さくしゃは? まえがきをしろってなに?」

「ええ、ホント。なにがダメで、どうダメでなにがやっぱりなのか、この一文では伺えないわ」

「いや、そっちの事じゃないんだけど……えっと他になんか書いてないの?」

「『俺やっぱダメだ。もうダメだ』『まえがき頼む』以外になにも書いてないわ」

「ちょっと、それじゃなに? このまえがきは私たちに丸投げなの?」

「そうね。そういうことになるわ」

「じゃあ、別に適当にやればいいんじゃないの? 特にこれをやってほしいってことが書いてないんだし」


「では、この場で私たちは何をやればいいのかしら?」

「え~っと~前回のあらすじとか言っとけばいいんじゃない?」


「くだらないわ。実にくだらないわ麻子」

「そう? けっこういい線だと思ったんだけど?」


「前回の事を知りたければ前回の小説を読み返せばいいだけのことじゃない。あらすじで物語の進行状況を知りたいなんておこがましいわ」


「おおぅ……身もフタもない事言ってるな~。じゃあ千佳はなにかいい案はあるの」

「いい案? 案なら『この創造神さくしゃに従う必要はないわ。帰りましょう』よ」


「う~ん、それもそうね。じゃあ帰る?」

「ええ、ねぇ麻子。この後スノバで卒業式の事で話があるわ」

「卒業式? ずいぶん先の話しね?」

「前生徒会長を含め三年生には気持ちよく卒業してほしい。それに前生徒会長の赤崎先輩には私たちの生徒会は大丈夫ですってところを見せて、安心して卒業してほしいもの」


「へぇ~考えてるんだ。でもあんたとふたりきりってのはお断り。大嫌いだから」

「好きなコーヒーをおごるわ」

「……言っておくけどそんな事じゃ乗らないから」

「ケーキも付けるわ」

「……ケーキふたつ食べていい?」

「許可するわ」

「なんで上から目線。いいわ。じゃあ行きましょう。大っ嫌いだけどね!」


「麻子。そのまま私を嫌いのままそばに居てほしい」

「ちょ、気持ち悪いんだけど……」

「髪、のびたわね」

「あんたほどじゃないわよ」

「この髪のにおい……久しぶり……」

「……臭いをかぐのやめてよ」

「あらごめんなさい。じゃあ行きましょう」

「あ、千佳ちょっと待って」

「どうしたの?」


「せっかくこんな殺風景な所に来たんだから仕事をするの」

「仕事?」

「タイトルコールよ」


「……くだらないわね。私は先に行ってるわ」

「あいよ~ゴホン。では、第四話『冒険少女と箱庭遊戯』をお楽しみください! それでは!」

「開きました」

 私はクリスタルパネルのボタンを一度だけ押しステータス画面をショートカット起動させる。


「うん。じゃあさっき少し説明したけどこの『No Link』っていうのを説明するね。このステータスを見ると今はまだ『No Link』のままだけどこれを『Link』に変える方法を教えるからね」

 刹那くんは自分のアンブレイドの柄を握り強めな感じで下方向にひっぱる。ガシャンという金属音が響き、刹那くんのアンブレイドの柄の部分がスライド展開して青いボタンが姿を現す。


「ほら見てごらん。この開閉ボタンとクリスタルパネル起動ボタンの間に青いボタンが出てきたでしょ? これがLinkボタンね。これを押すとね……」

 刹那くんは青いボタンを押して柄を手で押し戻しスライドさせたアンブレドを元の状態へと戻した。


「で、ステータスと開くとほら、さっきまで『No Link』ってなっていたのが『Link』に変わっているでしょ?」

 確かに。分かりやすく点滅して『Link』になってる。私は自分のステータス画面に視点を落とす。なるほど私のステータスは『No Link』のままになってる。あの青いボタンが『Link』ってボタンなんだな。


「じゃあ、凪紗ちゃんもやってみようか」

「はい」

 返事をして私はいったんステータスを閉じる。閉じたのを確認して刹那くんと同じ様にアンブレイドをひっぱってみた。


「あ、あれ、硬いなぁ」

 刹那くんのようにひっぱれない。ガシャンって言わないな。あ、あれ、ううっ、ど、どうしょう……


「凪紗ちゃん。さっきのスロットを開くより強くひっぱってみて。遠慮しないで思いっきりひっぱっていいよ。腕力も向上してるけどこの程度でアンブレイドは壊れたりしないから」

「あ、はい」

 刹那くんの助言で今度は力を込めて思いっ切りひっぱってみる。


 ガシャン!


「おおっ開いた!」

 刹那くんと同じ金属音が辺りに響き、アンブレイドがスライド展開。開閉ボタンの下から青いボタンが姿を現す。


「うん、これはけっこう力を込めないと開かないからね。じゃあさっそくその青いボタンを押してみようか?」

「はい」

 ポチっと青いボタンを押してみる。


「押したらステータスを開いて『Link』になってるか確認してみて」

「わかりました」

 刹那くんの指示通りにステータスをショートカット起動させる。

 ステータス画面にはさっきの刹那くんと同じように点滅してる文字で『Link』と表示になっていた。


「うん、これでリンクができる状態になったね」

 これでリンクができるのかぁ。あれ、でも待てよ? そもそも『リンク』ってなんだろ? 『リンク』できる状態になったのはわかったけど『リンク』そのものの説明ってされたっけかな?


「あ、あの刹那くん。その、今『リンク』できる状態ってのはわかりましたけど、その『リンク』自体ってなんですか?」

「あ、そうか、しまった……ごめん」

 あの感じだと刹那くんも私にリンクの事をいい忘れたみたい。でも大丈夫ですよ。今教えてくれれば。


「ごめん『リンク』って言うのはね、ふたつのスキルを同時に使用することなんだ」

「ふたつのスキルを同時に?」

「そう、例えば今凪紗ちゃんのAとBスロットには『加速』と『滑走』が装着してるよね? それを同時に使用するってことなんだ」

「同時に使用ですか」

 同じ事をオウム返しで返してしまった……う〜ん言葉の引き出しが少ないな……私は。


「そう『滑走』と『加速』は個々でも使えるけどリンクさせると『滑走』の効果に『加速』を上乗せさせられる。つまり滑走が加速してより早く行動できるってことなんだけど……この説明で意味とかわかる? 大丈夫?」

「えっと……リンクっていうのはスキルをふたつ同時に使って効果を相乗させるって事でいいんですか?」

「う〜ん、微妙な言い回しだけどまぁそう言うことだね。さらに言うと、スキルの組み合わせによっては意味のないものもあるし、逆で効果的なのもあるから組み合わせはよく考えてね、とは言っても凪紗ちゃんはまだどれだけの種類のマテリアルプレートがあるかわからないから難しいよね」

「は、はぁ」

 スキルの組み合わせか……刹那くんの言う通りどれだけプレートの種類があるか私は知らないからなぁ、わかってるのは『加速』と『滑走』だけだし。う〜んスキルの組み合わせかぁ……


「あ、それと気をつけてほしいんだけど、リンクするとスキルをふたつ同時に使用するからスキルキャパも最低40必要だからね」

「よ、40ですか?!」

「そう、使い所をよく考えてね。『リンクを使わない』っていうのもひとつの選択としてありだから」

 う〜んなるほど。深い! アンブレイドバトルは私が思っていた以上に深いな! でも、使いこなせるかぁ、リンク。


「次にリンクのオンオフだけどさっきの青いボタンを押せばリンクが解除されて、ステータスが『No Link』に変わる。で、もうひとつがリンク状態を維持したままスキルだけを使用しない方法だけど、さっきスキルを使用するとき教えたダイヤルがあるよね?」

「はい」

 私はアンブレイドのスキルダイヤルに目をやる。


「ステータスが『Link』状態の時にこのダイヤルをニュートラルの位置に戻せば『Link』状態を維持したままスキルを使用できない状態に持っていける。スキルを使いたい時にはダイヤルを左右どちらかに回せばリンクを再開してスキル同時使用可能状態になるからね」

「は、はい、青いボタンを押せばリンクを解除。リンクを維持したままスキルを使いたくないならダイヤルをニュートラルに戻せばいいんですね? で、使いたいときはダイヤルを回すと?」

「うん、そう覚えておいていいよ」

 う〜ん、リンクかぁ。確かにスキルの組み合わせで効果的かもしれないけど……ムズかしいな……今回は『使わない』かもしれないな。


「やっぱりピンとこないよね?」

「えっ、あ、いえ大丈夫ですよ」

「ごめんね実戦でしか試せなくて。なんなら俺と戦う? それだったらスキルを使えるよ。あ、でも、スキルキャパの回復に時間がかかるな……今、100だしなぁ……本番でスキルキャパがないと苦しいし」

 あ、アゴに手を当てて考え出しちゃった……もしかしてこれは、本気で私と戦おうかどうか考えてるのかな? イヤですよ絶対!


「刹那くん。私なら大丈夫です。実戦で試しますから」

「ホントに大丈夫?」

「はい。刹那くんと戦うのは模擬戦でもイヤですし。それより時間があまりないですから講義の続きをお願いします」

「うんわかった。そうだね。ごめん気をきかせちゃったね……じゃあ、講義に戻るね」

「はい」

 ホントにこのひと……とても真剣でマジメで、どこまでも優しいひと……私の思った通りのひとだ。今日は初めて話したけどどんどん好きになっていく。どんどん大好きになっていくよ。


「そうだな、リンクの説明はこんな所かな? あ、戦闘用のプレートもリンクもスキルも鏡の外では使えないからね。気をつけてね」

 ん? そう言えばプレートには『一般用』と『戦闘用』があるって言ってたよね? 『一般用』って……


「はい。あのさっき『一般用マテリアルプレート』って言ってましたけど一般用は鏡の外でも使えるんですか?」

 当然の疑問。戦闘用と一般用の違いってなんだろ? やっぱり鏡の外でも使えるのかな?


「うんそうだよ、一般用はプレート自体にマナを篭めていて、篭めたマナ消費して使用するんだよ」

「へぇ〜プレート自体にマナを篭めるんですか? なら戦闘用にもマナを篭めればいいんじゃないですかね?」

「いや、それはダメだね。一般用は『マナの使いきり』で『使い捨て』、それでいて『消耗品』だからね。それに一般用のプレートは戦闘向きじゃない。だからこその一般用で低価格」

 『使いきり』で『使い捨て』でいて『消耗品』かぁ。でも『マナをプレートに篭める』ってすごいなぁ、ん、まって? 刹那くんの説明ではマナは『鏡の中にしかない』とか『鏡の中のモノは鏡の外に持っていけない』とかって言ってなかったけ?


「あのでも、マナは鏡の中にしかないんですよね? 刹那くんはさっき『鏡の中のモノは鏡の外に持ち出せないって』言ってませんでしたっけ?」

 ひとつの質問の回答からひとつの疑問が生まれる。う〜んこうして人類は発展していったのかな? なんて壮大なテーマを一瞬だけど考えてしまった。


「凪紗ちゃんは相変わらずいいところに目がつくね。そうだよ。確かにマナは基本的に鏡の中にしかないし鏡の世界のモノは鏡の外には持っていけない。けど俺は鏡に入る前に言わなかったけ?『微量だけど千葉県と港区でマナが観測された』って?」

「あっ……」

 そう言えば刹那くんは鏡の世界に入る前に言ってた。微量だけど千葉県と港区にマナがあるって……


「その微量のマナを森羅カンパニーは一般用のマテリアルプレートに篭めて販売してるんだ。微量すぎてマナの充填ができないから『使いきり』になるわけ」

「そういう事なんですね……」

 なるほど。千葉県の微量だけど存在しているマナをプレートに篭めているんだ……納得。でも謎は多いけど。そのひとつが完全封鎖区域の港区にもマナがある事なんだよねぇ、歴史の授業で習った2003年の大崩落事故も関係あるのかな?


「ほかに質問あるかな?」

「あ、いえ大丈夫です」

「わかった。もし何かあったら言ってね」

「はい」

「じゃあ、次は軽く『マテリアル・クリエイション・スロット』の説明に行くね」

「はい」

 おっ、出てきたよ。『まてりあるくりえいしょんすろっと』相変わらず難しそうな英語で難解そうな単語だなぁ。


「今、凪紗ちゃんがアンブレイドに装着している『マテリアルプレート』があるよね。そのプレートは森羅が販売してるけど森羅が製造してるわけじゃない」

「えっ? そうなんですか?」

 森羅が販売はしてるけど製造はしてない? じゃあ別の所で製造してるのかな?


「じゃあ別の企業? が製造してるんですか?」

 森羅カンパニーが製造してなかったらそうなるけど……刹那くんが言うからには、きっと別の企業じゃない気がするんだよなぁ。


「イヤどこの企業も製造してないよ。そもそもこの『マテリアルプレート』は人工的に造れるものじゃない」

 やっぱり……私のカンは当たったけどじゃあ、どうしてこの『マテリアルプレート』はここに『存在』してるんだろう?


「えっと、どの企業も造れないって事はどこでどうやって造ってプレートはここにあるんですか?」

 アンブレイドに視線を落とす。ううん、正確にはアンブレイドに装着されているマテリアルプレートを見た。


「それはね、このアンブレイドの『マテリアル・クリエイション・スロット』から『生成』されるんだ。今、凪紗ちゃんが装着してる『加速』も『滑走』も鏡の世界で、どこの誰かのアンブレイドから生成されて森羅が生成者から販売権を得て、自社で複製したものなんだよ」

「えっ!? じゃあ、マテリアルプレートはこのアンブレイドが造ってるってことですか?」

「う〜ん、造ってるって言うかアンブレイドが『生んでる』って感じか?」

 今日一番のびっくりかも。この『マテリアルプレート』ってこのアンブレイドが造ってるんだ。あ、いや生成しているんだ。でも『生んでる』ってなんか生々しいなぁ。


 でもマテリアルプレート自体も生んでるこのアンブレイドって……いったい何なんだろ? これ自体もホント森羅が造ってるのかなぁ。マナの吸収といい、スキルの使用。それに身体能力の異常的で飛躍的な向上もこのアンブレイドを持っていないと効果がないし……ちょっと謎が多くて怖いな……


「凪紗ちゃん?」

「……」

「凪紗ちゃん? どうしたの?」

「あっ、す、すいません。すこし考えごとを……」

 考えすぎて刹那くんの声が聞こえなかったよ。


「どうしたの? もしかして体調でも悪いの?」

「あ、いえそういう訳じゃないんですが……ちょっとこのアンブレイドって怖いなって思って……」

 左手に握られているアンブレイドをチラっと見る。


「怖い?」

「はい、なんか謎が多くて……」

「でも便利でしょ?」

「はい、傘の開閉とかの基本的な使用感はかなり便利ですね。傘の自動開閉とか傘留めフックを自動で留められるところか」

「じゃあ怖いのは身体能力の向上とかマテリアルプレートの生成とかスキルキャパってのが怖いって事かな?」

「ええ……刹那くん。このアンブレイド自体はホントに森羅が造ってるんですか?」

 すこし怖いけど踏み込んだ質問。この質問の回答がなんか怖い……


「そうだね。このアンブレイド自体は森羅が造っている。これはホントだよ。森羅カンパニーが『工場見学』って名目で製造工程もちゃんと見れるし公開もしてる。それは安心していい。でも凪紗ちゃんが言ったプレートの生成やスキルキャパ。身体能力の異常的で飛躍的な向上に関しては少なくとも俺はまったくわかっていない」

「そうですか……」

 すこし不安が取れた。そうなんだ。このアンブレイド事態は『森羅が造ってる』んだ。


「……凪紗ちゃん。凪紗ちゃんはハンバーガーとか牛丼は食べる?」

「えっ? はい、ハンバーガーはよく食べますけど……」

 なんだろ? 突然見当違いの質問をされてるようか感じがするけど……


「じゃあ、そのよく食べるハンバーガーは怖くないの?  すでに調理済みのハンバーガーが提供されて、その肉がどこで加工されたのか? どこで造られた肉なのか? バンズがどこで造られてどこで加工されたのか? 凪紗ちゃんは確認してから買って食べてるの? 肉にかかってるソースとかチーズ、レタスやピクルスも、どこで加工したのかどこで製造してるのか? どこの国で造られたのか? そんな工程を調べてから食べるの?」

「えっ、いやそんな事は調べてないですけど……」

「調べてないで食べてるって事だよね?」

「はぁ」

「なら、アンブレイドも同じじゃない? プレートの生成の仕組みもわからない。身体能力の向上の仕組みもわからない。スキルキャパの仕組みもわからない。でも便利だから使う。これがないと戦えないから使う。これはハンバーガーと通じるものがあるんじゃない?」

 そうだ。刹那くんの言うとおりだ……ハンバーガーはおいしい。おいしから食べる。ハンバーガーの具材の製造課程はお構いなしで『おいしい』ってことだけで食べてる……アンブレイドに通じるものがあるかも。ううん同じかも。


「もし、アンブレイドとハンバーガーどっちが怖いって聞かれたら俺は『ハンバーガー』って答える。製造課程がわからないものを口に入れている可能性があるんだからね」

 ううっそう言われると……なんだかハンバーガーが食べられなくなっちゃいそうだよ……


「でも、そんな事を考えたらコンビニやスーパーで売っているお弁当やパンやおにぎりとかお菓子。ファストフードの牛丼やドーナツといった調理済み食品。それと冷凍食品とかもかな。それらはすべて食べられなくなっちゃうよね……えっとこれは極論だね。つまりね……え〜」

 刹那くんは視線を落とし右手で後頭部を軽く掻きながら言葉に詰まる。ううん違うかな? 言葉を探しているのかな?


「なにが言いたいかというとね……『考えすぎはよくない』って事なんだけど……ごめん回りくどかったね。噛み砕いて分かりやすく伝えようと思ったんだけど、説教臭くなっちゃった……」

「あっ……」

 刹那くんにはホント迷惑ばかりかけてるな、私。


 私が泣いてるときもハンカチを貸して慰めてくれた。鏡の世界の入り方も教えてくれたしパンツが見えていることも教えてくれた。マナもアンブレイドの事もたった一時間しかないのに丁寧に教えてくれている。

 今だって、私がアンブレイドの事が怖いって言ったら気を利かせて励ましてくれた。


 私はホントに……このひとに、大好きな刹那くんに迷惑かけてばかりだ。


「この説明で凪紗ちゃんの不安が拭えるかわからないけど……う〜んそうだな、なんなら今度一緒にアンブレイドの製造工場に見学にでも行く? すこしは不安な気持ちが和らぐかもしれないよ?」

「えっ!」

 一緒にって……それって、その、ふ、ふたりっきりってことですか? そうなんですか!? 刹那くん!?


「あ〜でも、今どきの女子高生が工場なんて興味ないかな? それにお互い時間も取れなさそうだし。それと平日は」

「と、取ります! 時間とりますから工場行きましょう! 一緒に!」

 刹那くんの言葉が終わっていないけど私は食い入り気味に時間を取ることをアピール。これは初のデ、デートのチャンスかも!


「おおぅ……意外とグイグイ来たね……もしかして工場が好きなのかな? 凪紗ちゃんは?」

「はい! 好きです!」

 『でも私がホントに好きなのは刹那くんです』って言えたらなぁ……言えないよ、今はとてもじゃないけど言えないよ。でも、いつかきっと……


「えっとね、提案しておいてなんだけどアンブレイド製造工場は平日にしか見学できないんだよね……凪紗ちゃんは試験休みとか行事振り替え休日とかで時間がとれるかも知れないけど、俺の休みって仕事の関係で土日だから基本的には無理なんだよね。ごめんね」

「あ、そうなんですか……」

 残念……


「え〜じゃあ、また話がそれたけど『マテリアル・クリエイション・スロット』の話をするけどいいかな?」

「あ、はい」

 私はひとつ頷く。デ、デートのチャンスだったのになぁ……残念。でもふたりの初めてのデートが工場ってのはどうなんだろ? むしろよかったのかな?


「マテリアル・クリエイション・スロットの位置だけどこの赤い開閉ボタンの上にプレートが一枚くらい入りそうな溝があるよね?」

「開閉ボタンの上……あ、あります。確かにプレートが一枚くらい入りそうな溝です」

 うん、開閉ボタンの上に確かに溝があるぞ。ここが『マテリアル・クリエイション・スロット』か。


「ここからプレートが生成される。気を付けてほしいのはバトル中に突然生成されてこのスロットから飛び出してくるからうまくキャッチしてね。で、生まれたプレートは即時使用可能。プレートのスキルによっては形勢逆転、一発勝利ってのも可能だから」

「飛び出してきて、一発逆転かぁ」

 突然飛び出してきたらびっくりしてキャッチできなさそうだなぁ……驚きのあまりって感じで。


「あ、それとプレートの生成も毎度の事ながら鏡の中の世界でしか生成しないし、バトル中でしか生成は発生しないからね」

「あ、はい」

 そうだろうな。こういっちゃあ悪いけど非常識な事はこの鏡の中でしか起こらないんだ。鏡写しでそっくりな世界。だけどまったく違う世界なんだな鏡の中って。まぁ『月がふたつある』時点でまったく違うけどね。


「マテリアル・クリエイション・スロットの説明は以上かな。それじゃあ質問がなければ次は勝敗条件だけど」

「勝敗条件ですか?」

「うん。このアンブレイドバトルは特殊でね。勝敗条件が設定されているんだ。あ、質問とかある?」

「へぇ〜あ、質問はないです。大丈夫です」

 勝敗条件かぁ。どんな条件があるんだろう?


「まずひとつが『気絶』ね。気絶した時点で負け。でもこれは一対一の対戦の場合のみ。今回のようにニ対ニの場合はふたりとも気絶したときに負けが確定する」

「なるほど……」

「気絶しても眼が覚めればまた戦える。あ、これは二対二の場合ね。パートナーが気絶してないってのが条件だけどね」

「はい」

「うん。で、次はアンブレイドを三十分以上手放したら負け。アンブレイドを離したままの戦闘はとても危険だからね。それとアンブレイドを持っていない相手への三十分以上の攻撃は攻撃した側の反則負け」

「そうなんですか?」

「そうだよ。だってアンブレイドを離すと身体能力の向上が得られないでしょ?」

「あっ」

 そうだった。アンブレイドがないとマナが身体に流れてこないんだった。相手は身体能力が向上していて、アンブレイドを持っていない相手は身体能力が著しく低下している……確かにこれは危険だな。


「次はジャッチメントビットを攻撃または破壊した時。攻撃した時点で負け確定。これはビットに正常な判断をできなくする行為ってことで負けになる。それと破壊したら賠償金を払う」

「賠償金ですか……あの、いくらくらいなんですか?」

「一体約一千万円以上」

「いっせ……!」

 一千万円!? 無理無理払えない! 払えないってそんな大金!


「えっと、そのもし破壊して払えない場合はどうなるんですか?」

 恐る恐る刹那くんに訪ねる。なんか払わない救済策がありかもしれない。第一私も壊さないって言い切れないし。


「学生の場合は自動的に森羅カンパニーに就職かアルバイト決定。社会人の場合は土日と祝日に森羅カンパニーでアルバイト決定。しかも給料一切なし」

「ううっ……これは気を付けないといけないですね」

 救済策なんてなかった。タダ働きになっちゅうんだ……

イヤだな。


「うん、ジャッチメントビット自体はオリハルコンブルースフィアで出来ていて頑丈だけど壊れないって保証はないから。いい絶対に壊さないで!」

「はい!」

 心に刻むぞ! 絶対にジャッチメントビットは壊さない! 森羅カンパニーには就職しないぞ! タダ働きなんてしない!


 私は空でのんきにフワフワと浮かぶ白と黒の超高級額の精密機械であるジャッチメントビットを睨んで、心に壊さない事を誓ったのだった。

 

「ふぅ、とにかくジャッチメントビットには近づかない方がいいね。さて次だけどこれはあまり言いたくないんだけど……」

 刹那くんはためらいながらも口を開いて言葉を紡いでくれた。なんだろ? なんか悲しいそうな顔してる……


「対戦相手を『殺した』時のこと。これは勝ち負け以前に『殺人』だから殺した時点で勝敗関係なしで戦闘そのものが終わる」

「殺人ですか……刹那くん。その、この勝敗条件があるって事はアンブレイドでえっと、ひとが死んだんですか?」

「……うん、まぁね……」

「そうですか」

 やっぱり悲しいそうな顔。


「その、私はひとは殺しませんから、その、安心してください。だからその……悲しい顔しないで」

 私は刹那くんと出会った時の会話から言葉を借りて言う。


「ありがとう。でもそんな悲しそうな顔してた? 俺」

「はい。とても」

「そっか」

 まただ……また悲しい顔してるよ……刹那くん。


「あの、なにか……」

「ん?」

「あ、いや、なんでもないです」

 『なにかあったんですか?』って訊こうとしたけど……やめた。たぶんだけど……これは私の推測で憶測だけど……きっと刹那くんは『ひとが死んだアンブレイドバトル』の場にいたのかもしれない。だからあんな悲しい顔してるのかもしれない。わからない。刹那くんに確かめてないからわからないけど……そんな気がする。


「うん。勝敗条件は以上かな。凪紗ちゃんごめんね。これからバトルだから俺、気を引き締めるよ」

「あ、はい」

 刹那くんは私に気を使って笑ってるけど……まだ少し悲しい顔してるよ。

「そうですねお願いします」

 私も満面の笑顔で返す。私の笑顔で刹那くんの沈んだ気持ちが少しでも晴れるなら……私笑うよ。


「うんわかった。じゃあ、はいこれ」

 刹那くんはポケットを探り、マテリアルプレートを一枚私に差し出す。


「『停止』のマテリアルプレートですか?」

 刹那くんに習ったプレートのスイッチを入れてプレートのスキルを確認した。


「四枚あるからね。二枚づつ渡しておくよ」

「あ、ありがとうございます。あ、待ってください、私『滑走』のプレートを持ってるんでこれは刹那くんが使ってください」

 一度受け取った『停止』のプレートを刹那くんに差し戻す。

 今私のアンブレイドにはお姉ちゃんがあらかじめ装着しておいた『滑走』と刹那くんから借りた『加速』のプレートがある。これを受け取ると私は『三枚』プレートを持つことになっちゃうよ。


「これは凪紗ちゃんが持っててよ。中村くんが持ってきたプレートは四枚あるし二枚づつって事で」

「でも」

 そう言っても初心者の私がプレートが三枚で経験者の刹那くんが二枚ってのはなんだか気が引けるなぁ。


「私が三枚っていうのはなんだか……」

「いいって、『停止』のプレートは凪紗ちゃんが使ってよ。それに『滑走』のプレートは予定外だったからさ。二枚づつ仲良く。ね」

「はぁ」

 刹那くんがそう言うなら……


「わかりました」

 私はスロットを開き『滑走』を取り出し『停止』のプレートに差し替える。せめて刹那くんから借りたこの二枚のプレートで戦おう。『滑走』は戦況を見てからの使用判断だな。


「じゃあ、最後に凪紗ちゃんが今持っているスキルの効果の話をするね」

「はい」

 スキルの効果……『加速』と『停止』、それと『滑走』

かぁ。


「まずは『加速』だけどその名の通り『動作速度』を早める。まぁ簡単に言うと速く行動できるってこと。『走る』やアンブレイドを『振る』って具合に」

 ふ〜んなるほど。加速は『行動』に直結するのか。これはなんとなくわかるな。


「で、次は『停止』ね。『停止』はすべての『動作』を停止できる。簡単に言うとね行動をすべて途中で停める事ができる。走っていたら緊急停止で、アンブレイドを思いっきり降っていたら途中でいきなり停める事ができるっいう具合に」

 なるほど。『停止』は行動を停止できるのか。う〜ん、これは使いどころが難しいな。


「で、最後が『滑走』ね。これは地面を滑るように移動できる。イメージ的にはアイススケートみたいな感じかな。さっきも言ったけど『加速』とリンクさせるとさらに速く移動できるから活用してみて」

「はい」

 『滑走』か。これはわかりやすいな。問題は『停止』だなぁ。刹那くんには申し訳ないけど口頭だけの説明だけじゃあわかりづらいなぁ。


「これでだいたいアンブレイドバトルの基本的な事の話は終わりかな。戦い方に関しては凪紗ちゃんは騎士道部だから省くね」

「はい」

 これでアンブレイドの基本説明は終わりか。時間的に、いよいよか。


 私はスマホの時計を見る。液晶パネルの文字が反転していて読みにくいけど時刻は十九時三十分。十八時半ぐらいに鏡の中に入ったから時間的にはだいたい一時間ちょうどくらいか。


「そろそろだね」

 刹那くんもスマホの液晶時計を見てた。


「そうですね」

 言葉と共に気を引き締める。ギュっとアンブレイドを握っている左手に自然と力が入る。


 全てが鏡写しの世界。左右が反転した空にはふたつの月。そして見えないけどマナが降り注ぐこの鏡の中の世界。そんな初めてだらけの世界で私はアンブレイドを使った戦いが始まろうとしていた。


 ◆


「ううっ、キンチョ〜する」

「凪紗ちゃん。それもう三回目だよ?」

「そ、そうですけど、やっぱり初めての事はなんでもキンチョ〜するもんじゃないですか?」

「まぁ、それはそうだね。とりあえず深呼吸して落ち着きなよ」

「そ、そうですね」

 私は大きく息を吸い込み、そして大きく息を吐く。


「ふぅ」

「どう? 落ち着いた?」

「心なしか落ち着いたって感じですね。でもあれですね。息を吸って息を吐いてって行為で落ち着けるもんですかね?」

 実もフタもない事を聞いてしまう。


「実もフタもない事を聞くね凪紗ちゃんは。でもその疑問は俺も思ってた。そんな事で落ち着けるわけないってね。気持ちの問題かもね」

 確かに。深呼吸をした私は気持ち的には落ち着いたけどホントに落ち着いてるわけじゃない。胸がドキドキしてるしバトル始まるって事で緊張もいまだにしてる。


「ううっ、キンチョ〜するぅ」

「四回目。『帰っていいですか?』とか聞かないでよ?」

「言いませんって。『答えはダメ』って言われるのがオチですから」

「わかってるならそれでいいよ」

 ううっ、キンチョ〜するなぁ。あ、これで五回目だ……でも、対戦相手のふたりが来てもうすぐ戦いが始まるって感じだけど……


「なんでやねん! そのプレートは俺が使うんやろが!」

「うっさい! このプレートはウチが使うんやって!」

「なんでやねん! このプレート俺が買ったんやぞ!」

「関係あるかい! ウチものはウチのものあんたのものはウチのものやろが!」

「ジャイアンか! お前ジャイアンなんか!」

「あ、ジャイアンなめてんのか?! ジャイアンは映画ではすごくええやつなんやで!」

「知らんがな! どんだけジャイアン敬愛しとんねん!」


 う〜ん、あんな感じでかれこれ10分くらい言い合ってる……いつになったら始まるのかなぁ?

 10分かぁ、ホントに今日は10分ていう時間に縁がある。なんか感慨深いなぁ。


「じゃんけんや! じゃんけんで白黒つけたる!」

「ええで、おっしゃ! かかってこいやぁ!」


 ふたりとも気合いを入れてじゃんけんを始めた。


「……ねぇ、凪紗ちゃん。俺帰っていい?」

「……ダメですって言いたいですけど……もしホントに帰るなら私も便乗します」

「実はそんなワケにはいかないんだよねぇ」

「そうですよねぇ。実はわかってました」

 刹那くんがそんな冗談みたいな事を言い出す。そんな他愛もない会話が出てしまうくらいのそんな10分間。


「おっし! 俺の勝ちや!」

「くっそぉ〜! 負けたぁ〜!」

 おっ、どうやら男の人が勝ったみたい。


「やっぱり『切り札』は俺の元に戻ってくるんやな!」

「まぁ、ええわ。そのプレートはあんたに譲ったるわ!」

「なんやねん、えらっそうにしよって!」

「うっさい!」


 う〜ん……まだ続くのかなぁ。あの夫婦漫才? 時間がまだかかりそうだなぁ


「まだ、かかりそうだね……あのふたり」

「そうですねぇ、私、今日実は買い物があったんですけど……行くのは無理そうですね」

「時間的に難しそうだね……」

「ですよねぇ」

 あ〜買いに行きたかったなぁ新しい携帯音楽プレイヤー。色んな機種を見るの楽しみだったんだけどなぁ〜あ、でも負けると給料取られちゃうんだ……負けないようにしないと!


「ところで刹那くん。さっき勢いで『はい大丈夫です』って言っちゃったんですけど、刹那くんが言った『回帰』のマテリアルプレートってどんなスキルなんですか?」

 まだ時間がありそうだったから刹那くんのプレートの事を訊いてみようと思う。


「そうだねじゃあ、実際に見てみようか」

 刹那くんはおもむろに後ろを向き空を見上げる。私もそれに習って空を見上げる。上空には赤と青のふたつの月。綺麗に寄り添うように並んでいる。


「よし……うぉりゃぁぁぁぁ!」

「せ、刹那くぅぅぅぅぅぅぅん!」

 大きな気合いの声と共に投げた! アンブレイドを思いっきり投げた! 遙か空へと放り投げたぁ! なんで!?


「えっと、え〜」

 放り投げられたアンブレイドはどんどんと上昇していく。その様子を私はその言葉を最後にアホみたいにポカーンと口を大きく開いて見ていた。


「そろそろいいかな」

 刹那くんは右手を空に掲げる。

「戻ってこ〜い」

 刹那くんの緊張感のない声。


「お、おおっ〜」

 その声の直後、刹那くんの掲げた右手に放り投げたアンブレイドが手元に戻ってきた!


「これが『回帰』のスキル。物質を分子レベルまで分解して手元で再構成。これで手放したアンブレイドを手元に引き戻すっていう仕組み。使うにはプレートに音声を登録させて音声認識させないと使えないけどね。それとこのスキルは一般用アンブレイドには標準装備だからね」

「へぇ〜」

 なんか、便利そうなスキルだなぁ。あれ? でも……


「でもなんで使えるんですか? 確かスキルは戦闘時にしか使えないんじゃなかったんですか?」

「ああ、このプレートは変わってて戦闘用・一般用共用なんだよね。傘の忘れ物防止って観点で共用使用らしいよ」

「あ、なるほど。でも外では使用するマナが足りないと思うんですけどどうするんですか?」

「一度森羅にプレートを郵送してマナを充填してもらってから使用する形かな?」

「あ〜なんか面倒ですね」

「そうだね。なら戦闘用として割り切るか一般用を買った方が早いね」

「納得です」

 う〜ん。このプレートを生成したひとってきっと傘の忘れ物がひどかったのかな?


「ちなみにもうひとつのプレートは『神速』っていうプレートだけどこれは説明が難しいから省くね」

「あ、はい」

 う〜ん神速かぁ。なんか訊くだけで早そうだし扱うのは難しそうだな。


「お〜い、いいんか? 持っているスキルを見せて?」

 その時、刹那くんの『回帰』のスキルの使用を見ていた

男のひとが声をかけてきた。


「別に減るものじゃないでしょ?」

「ウチらに対策練られんで?」

「どうせ戦闘開始したら使うんだし今使っても構わないでしょ?」

「いいんかい? スキルキャパ20減ってんやろ?」

「さぁ? もしかしたら残り20しかなかったから、しばらくしたら100パーセントになるかもよ?」

「ホンマ?」

 男の人の問い。その問いに刹那くんは『言うと思う?』と返す。


「自分。策士やな」

 男のひとがニヤけた顔で刹那くんに言う。


「まさか。俺は策士でも奇策士でもないよ。作戦とか策とか練るの苦手なんだよね。直感派なんで」

「よく言うやん」

「ところでまだ話し合い? は終わらないの?」

「もうちょい待ちって」

「わかった」

 そう言って男のひとは、女の子の方を向き話し合いを続けた。


「だからこっちは俺に使わせろや!」

「なんでやねん! このプレートはウチとの相性はいいんやで」

「知らんがな! なんやねん相性って?! パソコンのメモリか!」


 う〜ん、まだ続きそうだなこの夫婦漫才? でもホント刹那くんのスキルキャパは確かステータス画面では100だったような……


「刹那くん、刹那くん」

 私は隣にいる刹那くんに極力小さい声で話しかける。


「ん? なに凪紗ちゃん」

 その空気を読んでくれて刹那くんも小さい声で話し返してくる。


「もしかして刹那くんのスキルキャパって今80じゃないんですか?」

「その通り」

「ううっ、やっぱり……すいません。私にスキルを見せてくれて、さらにスキルキャパを減らしちゃって」

「気にしないで。俺が勝手に見せたことだから。凪紗ちゃんが気に病む事はないよ」

「でも、やっぱりすいません」

 なにはともあれきっかけは私だ。私が『回帰』のスキルの事を聞かなければ刹那くんの貴重なスキルキャパを減らす事はなかったのに……


「でも、やっぱりごめんなさい」

「凪紗ちゃんはホントに素直でいい子だね」

 刹那くんは私の頭を軽くポンポンとたたく。


「ふぇ……」

「考えすぎは良くないって言ったでしょ? だからホントに気にしないで。どうせバトルが始まったらイヤって言うくらいスキルキャパは減りに減りまくるから」

 刹那くんは私に笑顔を向ける。そうだ。さっきもアンブレイドが怖いって言ったときにも『考えすぎは良くない』って言われた。ホントにこの人は……とてもいいひとでやさしいひとだ。もっと大好きになっちゃうよ。


「それにこれはひとつの心理戦? 駆け引きかな? まぁとにかく相手は俺の行動でスキルキャパがいくつかかわらないって心理を与えている。それに紐つけて俺のもうひとつのスキルが気になっているはず。だからスキルキャパを減らしたのは無駄じゃない」

 確かにそうかもしれないけど……でも……


「凪紗ちゃん。これからバトルだから心のモヤモヤはなくして」

 少し強めの口調……そうだこれからバトル。刹那くんも気にするなって言ってくれている。


「あの、刹那くんごめんなさい。もう気にしません」

「うん。そうしてよ」

 よし、もうこの事はこれで終わりだ。これ以上刹那くんに気を利かせるわけにはいかないからね!


「ところで凪紗ちゃんさ。こんな時にこんな事を聞くのなんだけど」

「はい?」

 刹那くんから私に訊きたいこと? なんだろ?


「凪紗ちゃんって、もしかして六時五十分頃に新京連線の前橋駅から電車に乗ってる?」

「ふぇ!?」

 えっ、えっ、それってその、わ、私の事に気づいていたのかな?! えっ、いつも隣に立つことも知られていたのかな!? ど、どうしょう?!


「えっと、そ、そうですにぇ。そ、その時間にの、乗っていまふ」

 ううっ、緊張してまた噛んだ……


「そっか。俺もその時間の電車なんだけど、妻沼で出会ったときにどこかで見たことあるって思ったんだよね。よく凪紗ちゃんと似たポニーテールの子が隣に来るからもしかしてって思ったけど。凪紗ちゃんだったんだね」

 ううっ、気づかれてたのかぁ〜そ、そうだよね。ほぼ毎日刹那くんの隣に立っていたら気づいちゃうよね。


「も、もしかして迷惑ですか?」

「まさか、俺も凪紗ちゃんみたいに小さくてカワイイ子が隣にいてくれると今日も仕事を頑張ろうって思うからね。どんどん隣に来てよ」

「か、カワイイ……」

 こ、これは嬉しいよぉ! ど、どうしょう! 顔がニヤけちゃうよぉ! 顔が赤くなっちゃうよぉ!


「お〜い! 待たせてすまんなぁ、そろそろ始めんでぇ〜」

 男の人の声。どうやら向こうは話がまとまったらしい。


「よし、始まるね。凪紗ちゃん気を引き締めていこう!」

「あ、は、はい!」

 うん、気持ちを切り替えよう。刹那くんの言葉は嬉しいけどこれとそれとは違う。戦いに気持ちを切り替えないと。


「いい、凪紗ちゃん。スキルとかスキルキャパとか気にしなくていいから。プレートは渡してあるけどスキルは思い出したときに使う程度でいいよ。とにかく今回は初戦だからなにも気にしないで自由に思いっきり戦って」

「はい!」

 大きな返事で刹那くんに返す。うん、そう言ってもらえると私も気持ち的には楽だな。


「じゃあ、戦闘開始合図はどないする?」

「なんでもいいよ。スタートのきっかけさえわかれば」

「わかった」

 刹那くんからそう返答された男の人はベンチにおもむろに置いてあった空き缶を拾い上げる。


「感心せえへんなぁ。ポイ捨ては」

 拾い上げた空き缶を見て男の人はそうつぶやく。


「じゃあ、この空き缶を今から上に放るから地面に落ちた瞬間から戦闘開始ってのはどうや?」

 男の人からの提案。刹那くんは『いいよそれで』と返答。


「凪紗ちゃんもそれでいい?」

「はい。それで構いません」

「わかった。こっちはふたりともそれでいいよ」

「了解や。じゃあ……いくで!」


 空に放り出される空き缶。かなり上昇した空き缶は重力に負けて地面に向かい落ちていく。


(地面に落ちたら始まる! 大丈夫、落ち着け凪紗!)


 私は胸中で自分自身に言い聞かせ落ち着かせる。


 カラーン……


 地面で軽い金属音が響いた! 始まった!


「行くで!」

 その瞬間! 男の人と女の子がジャンプして私たちふたりに襲いかかる。


「この感じ! 久しぶりや!」

「ホンマやな! やっぱ本場はすごいで!」

 上空からの攻撃に刹那くんと私は迎撃体勢で挑む。


「おらっ!」

 先制は男性。でも、私たちではなく私たちに間に割り込み地面に攻撃を当てる。アンブレイドが振り下ろされた地面は月のクレーターみたいにぽっかりとえぐられた。

 刹那くんはバックステップで回避して私も刹那くんと反対方向へとバックステップで回避。


「うそ……」

 クレーターを見て恐怖を覚える。恐怖がこみ上げてくる。もし当たったらと思うと……ゾッとする。

「よそ見すんなや!」

 後から着地した女の子が私に間を詰めてくる!


「くっ!」

 間を詰めた女の子の攻撃をアンブレイドで受け止める!


 怖がってる場合じゃない! この非常識の世界でクレーターができるのはあたりまえじゃないとバトれない!


「凪紗ちゃん!」

「おっと! あんたの相手は俺やで!」

「くそ、最初の攻撃は俺たちの分断が目的か!」

「ご名答! 最初はタイマンといこうや!」

 刹那くんは男のひととアンブレイドを打ち合いながらどんどんと離れていく。


「刹那くん!」

 大きな声をかけるが刹那くんには届かず声だけが空しく響く。

「行かせへんで! あんたの相手はウチや!」

 女の子は私にアンブレイドを振りそして下ろす。私はサイドステップで攻撃をかわし距離を取り体勢を立て直し構えをとり。女の子を見据えた。


「おっ、半身になってのその構え。へぇ〜自分、騎士道を心得る者かい?」

「ええ、騎士道部です。よくわかりましたね」

「最強のブレイダーの『カリン・エルヴァード』が騎士の戦いをしはるんでな。そいつを倒す為に騎士道は勉強済みやで」

「カリン・エルヴァード?」

 最強のブレイダーってカリン・エルヴァードって言うのか。でもカリンかぁ。衛宮センパイを思い出す名前だなぁ。あ、でも『エルヴァード』って言うくらいだから外人さんなのかな?


「なんや、考えごとかい? 余裕やな?」

「まさか。緊張と怖い気持ちが混じってもう吐きそうです」

「イヤイヤ余裕そうやで、そんな冗談が口から吐き出すくらいやからな」

 余裕? そんなモノはないよホントに。今だって怖いし緊張もしてる。冗談なんて口に出来ない。必死に口から言葉を絞り出してるだけ。


「ほんなら……行くで騎士道部!」

 女の子が駆け出し私との間を詰めてくる! 大振りの一辺倒。そんな攻撃は簡単にかわせる!


「いいわ騎士道部! あんたいいわ!」

 ステップで攻撃をかわし横薙の一撃で反撃。でも私の攻撃もあっさりとかわされる。


「ほらほらどうしたん!」

 繰り出される女の子の攻撃に私はアンブレイドで受け止め防御一辺倒になるくらいに押されている。後退させられていく。


 だけど……!


(今!)

 女の子の攻撃のスキを突き渾身の一撃を放つ!


「当たらんわ!」

 この攻撃もあっさりとかわされる。


「そんな……なんで!」

「ゆうたやん! あんたらの騎士道は勉強済みや!」

「くっ、そ!」

 こんなにまったく当たらないなんて……あの子はすごい騎士道を勉強している。研究をしている!


「調べてわかったんやけど騎士道は正直すぎるんやな! 攻撃が素直すぎや!」

 正直すぎる攻撃に素直すぎる攻撃。それって一体どういうこと?


「まったく騎士道ってのはつまらんわ! なんでそないなヤツが最強やねん!」

 女の子がそんな文句を垂れながら攻撃を加えてくる。私はステップを織り交ぜながらアンブレイドで受け流し、そして受け止めて攻撃をかわす。


「思った通りやな! あんた縦の攻撃は受け流すかかわす。横の攻撃は受け止めるかステップでかわすんやな! 騎士道の教科書通りの行動でいい子すぎる! マジメでつまらんわ!」

「くっ、マジメで悪かったですね!」

 女の子の攻撃のスキを突いての反撃の一撃も空しく空を斬る。


「あはは、やっぱりやで! すこし大振りの攻撃を見せるとすぐに反撃に転じるんやな騎士道は!」

「くっ、スキを作ったのはワザとですか!」


「おうワザとや。あの状況での反撃も騎士道の教科書に載ってたで、ホンマ騎士道はつまらんわ!」

「……っ!」

 言葉が出ない。心がモヤつく。なんかイライラする!


「あれ? どうしたん? もしかして攻撃が当たらんから戦意喪失かい? ギブアップでもするんか?」

「それ以上……」

「は?」

「それ以上私が学んでいる騎士道を汚すなぁ!」

 叫びスロットダイヤルをAスロットの『加速』に合わす。無意識。ホントそれしか言いようがない。無意識下で私は『加速』を起動させていた。


「なん」

 虚を突かれた女の子は防御動作に間に合わず加速した私があっと言う間に間を詰める。


「ぐっ……ぐあぁぁぁぁぁ!」

 加速したすれ違い様の腹部への一撃。その一撃は女の子の腹部を直撃して悶絶。女の子の片膝は地面と接触してとても痛そうに、すごく痛そうに腹部を押さえる。ダイヤルをニュートラルにして距離を取り半身になって、アンブレイドを片手に構える。油断できない。油断なんてしない!


「ええわぁ、ええ一撃やったで騎士道部……その異常な速度は『加速』のマテリアルプレートかい。まったくあのイケメンさんはやっぱり策士やで……」

 策士? 刹那くんが? そういえば刹那くんは!?


 反対方向へと視線を向ける。悲しいことに刹那くんは見えない……


(だいぶ刹那くんと離れたなぁ……刹那くんのフォローやアドバイスを受けるのは無理そう……)


「よそ見かい? やっぱり余裕そうやんな自分」

「えっ!?」

 耳元からの突然の女の子の声。驚きとっさに振り返ると女の子はアンブレイドをゴルフのスイングのように下から上へと薙払う寸前だった。


「舞い上がれ!」

「うがっ……」

 女の子の一撃はアンブレイドで受け止めた私ごと打ち上げる。遙か高く空に舞い上げられた私は眼下に見える妻沼駅のプラットホームまで舞い上げられ、そして落下。


「はうっ……」

 体勢も立て直せず肩から地面に落ち強打。ううっ、痛い! すごく痛いけど……まだ耐えられる痛みだ。直撃を免れたさっきの空を舞う強烈な一撃よりはマシだ。

 痛みに耐えて立ち上がり私が落ちてきた空を見る。女の子が私に向かって落ちてきているのが見えて、華麗に私の前で着地をキメる。


「あなたも『加速』をもっているんですね?」

「加速? ちゃうな。ウチが持っているのは『滑空』やで」

「『滑空』?」

 私が借りてる『滑走』と似た名前だけど……同じ性質なの?


「あんたの加速ほど速くないんやけどこれは『地面じゃない場所でも滑れる』スキルやで。このスキルで歩道橋の柵の上を滑ってあんたの真後ろにつけたんやで」

 そうだったんだ……おかしいと思ったんだ。距離を取ったはずなのに突然真後ろからの声。ホントに驚いた。


「……なんでそんなことを私に教えてくれるんですか?」

「アンブレイドデビュー記念や」

「この一戦で引退ですけどね」

「なにゆうてんねんまだ早いで。せっかくなんだしもっとやりぃな。楽しいで」

「イヤイヤ言ったじゃないですか。バトルはしたくないって?」

「なんなん。そんな理由かい」

「はい。そんな理由です」

「まぁええわ」

 女の子はアンブレイドを乱暴に構える。とっさに私も半身の構えを取る。剣術も刀術もなんの心得もない女の子の構え。攻撃の軌跡がまったくわからない怖い構え。これで同じ騎士の構えだったら少しは気が楽で戦い方を定めることができるんだけど……


 女の子の雰囲気が変わる。目が据えている……


(来る!)


 お互いに駆け出す。誰もいないプラットホーム。電車が来るはずのないプラットホームでアンブレイドの鈍く響かない打ち合う音だけが何度も空間に奏でる。


「そぉら!」

 女の子の横薙ぎを交わすためバックステップ!


「えっ! しまっ!」

 距離を誤った。私の後ろは地面はなく背中から線路へと落ちてしまった! くそっ後方不注意だぞこれぇ!


「スキだらけやで!」

 女の子が落下しながらアンブレイドを振りあげる。そして着地直前に振り下ろされるアンブレイドの一撃を後方でんぐり返しでかわしジャンプで距離を取り、さらに着地後『加速』で後方へとさらに大きく距離を取る。


(地面がデコボコでスピードに乗らないな……)

 う〜ん加速は地面に突起物がない方が早く行動できそうだしその方が良さそうだな……


 『加速』について思っていると『甘いで!』と叫んで後方にいる女の子は……えっ!?


「ええっ〜!」

 私は驚きで叫んだ。驚くことに女の子は『線路の上をスノーボードを乗っている』かのような半身の格好で線路の上を滑っているのだ! そしてあっと言う間に私との距離を詰める。これが『滑空』の効果なの!?


「ほらほら!」

「やっかいだ……な! これぇ!!」

 線路に上を滑る女の子。滑りながらの攻撃はとても流動的で対応が難しい! なんとかアンブレイドで防いでいるけど、そろそろか……?


「おっと……スキルを使いすぎたわ!」

 やっぱりスキルキャパがなくなった! よしこれであの子はスキルがしばらく使えない! でも10秒だけだけど……


「スキルの使いすぎですっねッ!」

 今度は私が攻撃する番! 反撃開始っ!


「ええで騎士道部! ウチとダンスを踊ろうや!」

 攻撃を受け止めながら女の子は目を輝かせる。ホントにバトルを楽しんでるの?


 攻撃と防御。そして回避と攻撃。それらを巧みに織り交ぜながらお互いのアンブレイドを重ねる。


 リズムを刻む打撃音。

 テンポよく舞うお互いのステップ。

 ビートを刻む体捌き。


(確かにダンスを踊っている感じだ……)

 言い得て妙。女の子の言った『ダンスを踊ろう』って言葉は確かにその通りかもしれない。こう言ってはなんだけどリズムが心地いい。


「はぁ!」

 横薙の一閃。でも渾身の一撃は女の子の華麗なジャンプで当たらずにプラットホームへと舞い上がる。


「来いや、チビッ子!」

 女の子は右手を私に向け人差し指をチョイチョイと動かし挑発をした。あッ! 今チビって言ったよね?! おっし、行ったる!

 私は女の子と同じくジャンプでプラットホームへ上がり上空からの袈裟斬りを決める。待ちわびていた女の子は袈裟斬りをアンブレイドで受け止めてバックジャンプで距離を取る。


「逃がさない!」

 ダイヤルをAスロットに合わせ『加速』で追随をかける。


「あ、あれ……」

 『加速』がかからない? あっ!


「もしかして!」

 私はとっさにクリスタルパネル起動ボタンを一回押して素早く離しショートカットでステータス画面を起動させる。


「スキルキャパが19!」

 さっきのアンブレイドの一撃でひとつスキルキャパが減ってたのか……もったいない!


「なんや、そっちもスキルキャパ不足かいな!」

「ち、違います。スキルキャパの温存です!」

「イヤイヤ自分今、結構な大声で『スキルキャパが19』っていうたやん!」

「あ、いや、それは……か、駆け引きです!」

 うん、戦闘開始前の刹那くんと同じで駆け引き。そうこれは駆け引きだぞ!


「それ言うたらあかんやろ! 自分それ言うたら『スキルキャパ不足』ですって言うてるのと同じやで!」

「あ……じゃあ、スキルキャパ不足です!」

「なんでや! あ、この子『不足』って言うてもうてるやん!」

 ああっもう! なに言ってるの私! なに正直に『スキル不足です』って告白してんのぉ! 私ぃ!


「ほんならスキルキャパ不足同士、仲良く引き続きダンスを踊ろうやないの!」

「それしかないッ!」

 私と女の子がダッシュをかけてお互いの間をゼロに近づける。ゼロの瞬間にお互いのアンブレイドがぶつかり合う!


 回復手段がスキルキャパを減らす事なら

 そのスキルキャパの減らす手段がアンブレイドをぶつけ合うしかないのなら!


 接近戦あるのみ!


「乗ってきたやないかい! どうや引退宣言取り消すか?」

「取り消しません! 今日は引退試合です!」

 とにかくここは打ち合ってスキルキャパを減らしてゼロにする! そしてスキルキャパを回復させる!

 ……だた、懸念事項としては回復しても10だったら意味のないことだけ!


「なんで……当たらない!」

「騎士道はあんたと同じで正直やな!」

 女の子のアンブレイドには当たっているけどそれは防御での事。女の子自身にはさっきの『加速』での不意打ち以来一度も直撃はない!


「あんた、騎士の戦い方を貫くんかい!」

 私の騎士道独特の半身の構えを見て女の子が口を開く。


「もちろんです!」

 力強く答える。この戦い方は捨てない!


「ほんなら自分はウチに勝てないで!」

「そんなことありません! なんとかします!」

「なんとかってなんやの!?」

「戦いながら考えてます!」

「今考えてるんかい!?」

 あの子ツッコミは華麗に無視! 騎士の戦いは捨てない! だって私にはこの騎士道しかないんだから! だから今はスキルキャパを回復させて『加速』を織り交ぜながら戦う! それと、スキを見て『滑走』を使用を試みる!


 私はそんな構想を立てながら女の子との接近戦は続いていた。


 続く。

お久しぶりです。間宮冬弥です。


第四話を読んでいただきありがとうございます。長文でなにぶん読むのに時間がかかり、つまらないこの作品を読んでくれた方には大変感謝しております。


今回のまえがきは斎藤千佳さんと中原麻子さんにお願いしました。

僕のお気に入りのキャラ達なので登場させられてよかったです。機会があれば本編でも登場させたいふたりでもあります。


さて今回の第四話からアンブレイドバトルが始まりましたが自分が作った設定とはいえこのスキルキャパの設定。スキルが自由に使えないこの設定で執筆中に意外と苦しめられています。


ですがなんとか書き上げて完結させたいと思いますのでよろしくお願いします。


それでは今回はこれで失礼します。

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