さよなら常識空間
お久しぶりです。間宮冬弥です。
前回は主役である雪見凪紗ちゃんにこの前書きをお任せしましたが
今回から僕に戻りますのでよろしくお願いします。と、言ってもまた『誰か』に頼むかしれませんが…
ちなみにタイトルが『さよなら常識空間』とありますが別に最終回じゃないのでまだ続きます。
では、第三話『さよなら常識空間』をお楽しみください。
「ううっ、そこはウソでも『見てないよ』って言ってくださいよぉ」
「ごめん、ごめん。だってこのままパ、パンツの事を言わないとこれからずっと見えたままだよ? いいの?」
「ううっ、それはよくないですぅ」
正直なひとだなぁ、でももう少し別の言い回しがあったんじゃないの? ううっ、顔から火が出そうなくらい熱持ってるよ。まだ赤くなってるのかな?
「ま、まぁとりあえず、これからバトルだからその、スカートの下になんか履いた方がいいね。短パンとかキュロット? とかさ。あとはスパッツ? レギンス? とにかく下着の上に穿くようなものを」
「そ、そうですね」
そうだよね。これからバトルなんだからきっとすごく動くよね。今はこのひとだからいいけど、対戦相手のふたりに見られたらもっと恥ずかしいと思う。あれ待てよ……見られる?
「あ、あの訊きたいんですけど!」
「えっ、なに?」
私は今、大変な事に気づいてしまった!
「あの『じゃっちめんとびっと』でしたっけ? あれって犯罪監視って事は森羅のひとが見てるんですよね? じゃあ、その、今の私のその、パ、パンツを見られちゃったってことですかね!?」
もし、見られたらこのひと以外の他人に私のパンツが見られたことになっちゃうよ! それはいやだぁ!
「いやそれは無いよ。ジャッチメントビットはドライブレコーダーと同じで犯罪を認識・感知した十二秒前から録画を開始するし、バトルジャッチはバトルが開始してからの録画だから今の状況なら大丈夫。だと思う」
『だと思う』がとても不安ですけど信じますよ。私の大好きな人! パンツはその、あ、あなたにだけなら見られてもいいですからね!
「じゃあ、そこのパルモからなにか穿くものを穿いておいでよ」
「えっ、でもそれっていいんですか? 勝手に穿いて持ってきても?」
「うん、大丈夫だよ」
「窃盗になるんじゃないんですか?」
「鏡の中の世界のモノは鏡の外には持ってはいけないんだ。鏡を通った瞬間に消滅する。だからここでの盗みは不可能だよ」
「それってホントですか?」
このひとを信用してないわけじゃないけど、イマイチ信じられないな。
「ホントだって。今ここでは証拠を見せられないけど鏡から出たときにわかるよ」
「う〜、じゃあそう言うことなら。なんか穿いてきます」
私は半信半疑のまま渋々とパルモ内へと歩く。決して彼を信用してないわけじゃないんだけど……う〜ん。
「うん。ここで待ってるから。あ、時間が惜しいんで五分で戻ってきて」
「ご、五分ですか?!」
五分で戻ってこいなんて、無理難題すぎますよ!
「む、無理ですよ。五分でなんて! パルモって結構広いですよ!」
「詳しい説明は後でするけど大丈夫。超早く走れるから。あ、五階にムネマサスポーツがあるね。ここでどう」
「あ、そうですね。って、そうじゃなくてですね!」
彼はパルモ二階入り口に付近の壁に張り付けてある館内案内ボードを見ながら私にそう提案する。
「いいからいいから。行っておいでよ」
「で、でもぉ〜」
「大丈夫だって」
「ううっ……わかりました。でも五分は無理ですからね」
「全力で走れば無理じゃないよ」
「うえっ、全力ですか?」
笑顔で言う彼。その顔はとてもカワイくてって、そうじゃない! ええっ全力で走るの!?
「そうだよ」
当たり前のように言う彼。優しそうな顔に似合わず意外と厳しいひとなのかな?
「ううっ、わかりました行ってきます!」
腹を決め私はアンブレイドを壁に立てかけパルモへと歩く。
「あ、待って。アンブレイドは持っていって」
「えっ?」
彼は私が置いたアンブレイドを手に取り私に渡す。
「走るのにジャマだと思うんですけど……」
そう言う私に彼は『これを持ってないと五分で戻ってこれないよ』と答えた。なんでだろ?
「はぁ……さっきのジャンプの時もそうですけど、なんでアンブレイドを持ってないといけないんですか?」
「さっきも言ったと思うけど後で説明するよ。とにかく今はこれを持って行っておいで」
「はぁ」
私はまたも腑に落ちない表情で彼に見送られ店内に歩きだした。
「あ、店内の柱とか商品、それにマネキンに当たらないように注意してね」
「大丈夫ですよ」
彼の忠告を片耳に小さくジャンプして軽くダッシュ!
「ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
ものすごい早さでパルモを駆け抜け店内に設置してあるマネキンに激突してしまった! 全然大丈夫じゃなかったぁ!
「な、なに、なんなのこの速さ!」
驚いた! 驚くほどの速さ! 軽く走ったのにすごい早く走れる! なにこれ! なにこの疾走感、この疾走感ハンパないよ!
「こ、これなら」
この速度ならあのひとの言うように五分でいけそうだ!
(直線!?)
今度は加速し思いっ切り走り出す。
通路の狭い所や曲がり角はスピードを落とし駆け抜ける。あっという間に過ぎ去る風景。あっという間に辿り着く景色。すごい! すごいなんなの! この速さ!
「エスカレーター? これくらいなら!」
私はさっきのジャンプ力を思い出し、思いっ切りじゃないけどそれなりの跳躍力でジャンプ!
「思った通り!」
ジャンプでエスカレーターを一気に登りきりダッシュ!
「すごい! なんかとにかくすごい!」
駆け抜ける風景を尻目にどんどんと階を上へと駆け上る。
A館からB館へと抜ける連絡通路にさしかかりさらに加速。
「あッ!」
私は加速した瞬間に緊急停止して連絡通路壁に設置されたフロアガイドを見た。
「ムネマサスポーツってA館だっけ?」
フロアガイドを確認。鏡文字なので文字が反転してさらに右から読むので解読に時間がかかる。
「えっと、私が入ってきたのが二階のJP連絡口だからB館でムネマサスポーツがB館の五階だから……あっ、この連絡通路通る必要ないじゃん!」
急いで来た道を戻る。危うく五階の『銀印良品』に行くところだったよ。
さらに加速して最後のエスカレーターをジャンプでいっきに登り切り目的地である『ムネマサスポーツ』に辿り着く。
「よし着いた、どれがいいかな?」
体感時間で約二分弱で目的地に着く。そのまま軽く駆け回りなにかいいスポーツレギンスとか短パンがないかを物色。
「これでいいかな!」
見つけたのは黒を基調として横に白のラインが入ったフィットタイプで太ももぐらいの長さのスポーツレギンス。その商品を手に取り袋に手をかける。
「う〜ん、なにか罪悪感が……」
そのまま袋を開けることができず手が止まってしまった。お金を払わないで店内の商品をあける行為はなんかとてつもなく悪いことをしてるみたいだ。
「……ご、ごめんなさい!」
誰に謝っているかわからないけど意を決して袋を破く!そしてそのまま店内に設置してある更衣室で手に取っているスポーツレギンスを脚に通して穿いた。穿いちゃった!
「よしサイズぴったりジャストフィット!」
鏡を見て確認する。う〜ん不思議だ。鏡の中にいるのに鏡を見ている感覚がとても不思議。それといつも鏡は左右反転してるけど反転してない。制服の校章ワッペンが左にある。まぁすでに反転してるから当たり前なんだけどね。うん不思議だ。
「ん? あれ!? 私のマフラーがない!」
鏡を見ていて気づいた。パルモに入るまで巻いていた赤いマフラーがない。お気に入りなのになくなっている。
「あれ、どこかで落としたのかな……」
そんな事を考えて更衣室の前に立てかけていたアンブレイドを手に取り、あっという間に『ムネマサスポーツ』を後にする。そして来た道を戻る。その途中にマフラーが落ちていないか確認したがどこにもない。
通路を駆け抜けエスカレーターはジャンプで下る。その繰り返しで私はあっという間にパルモ二階入り口まで戻って来た。ううっ、結局マフラー無かったな……
「今戻りました!」
待っていた彼に声をかけ戻ったことを知らせる。
「おっ、意外と早かったね」
彼はあのピザ屋さんから受け取っていた四枚の黒色のプレートを手に取ってみていたらしい。
「はいこれ」
「あ、そのマフラー」
「さっきそこで落としたから拾っておいたよ。はいどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
受け取ったマフラーを首に巻き落ちないようにしっかりと形を整える。
「どう穿いてきた?」
「はい! 見ます?」
「い、い、いいい、いいよ」
スカートを手にした私に彼は慌てて手を振り否定する。
「と、とにかく穿いてきたんだね?」
「はい!」
「うん、息も切れていないし、まだまだ余力がありそうだね。よしそれじゃあ、今体験したと思うけど尋常じゃないジャンプとダッシュについて説明するけどいい?」
「あ、はい、なんなんですかこれって!? すごかったですけど! ジャンプといいダッシュといいすごかったですけど!」
思い出しただけでも興奮する。とにかくすごかった! なんかとにかくあの浮遊感。疾走感が気持ちよかった! ハンパない! とにかく!
あれ? 言われて気づいたけど、そういえば私あんなに激しく走ったり飛んだりしたのに息上がってないな? 疲労感もない。
「さっきマナの説明をしたよね? 君が体験したのはこのマナの影響。このマナが身体能力を飛躍的に向上させているんだ」
「身体能力が向上ですか……」
「そう、身体能力は脚力や跳躍力、それに腕力や体力、平行感覚や五感といった視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚、それと運動神経、知覚神経、感覚、俊敏性とか抗病力、治癒力、筋力、握力、新陳代謝。その他諸々のこれらの能力はマナを介して異常的で飛躍的に向上させているんだ。だからさっきのように人間離れした跳躍や加速が可能」
「このマナが……」
見えないけど手のひらを空に向けて空から振っているマナを乗せる。
「でも、アンブレイドを持っていないとこの恩恵を受けられない。持っててあげるから試しにアンブレイドを離してさっきと同じようにジャンプしてごらん」
「はい」
私はアンブレイドを彼に預けて空を見上げ障害物が無いことを確認して垂直にジャンプ
「あ、あれっ!?」
まったく飛べない。なんか体が重い? さっきまであんなに軽い感じがしたのに今はすごく重く感じる。二、三回ジャンプしたけどさっきのような跳躍はできなかった。でも鏡の外にいる時よりは高くジャンプできるけど……
「じゃあ、今度はアンブレイドを持ってもう一回ジャンプしてみて」
「はい」
アンブレイドを受け取りさっきと同じようにジャンプ
「おおっ!」
今度はすごく高くジャンプできた。あのひとが小さく見えるくらいはるかに高いジャンプ。体も軽い軽い。そしてだんだんと近づき大きくなるあのひとの元に着地を決める。
「おかえり。そういう訳で体感してわかったと思うけどアンブレイドを持っていないと身体能力の向上は得られない。これは対戦相手にも同じ事が言えるからね。戦闘時にアンブレイドを手放すと一気に負ける可能性が高まるから必要な時以外は離したらだめだよ」
「なるほど……そうですね、わかりました」
これは気をつけないと。アンブレイドを手放したら大変にな事なっちゃうな。
「でも、なんでアンブレイドを持っていないといけないんですか?」
さっきから気になっていた疑問を彼に聞いてみる。
「それは、アンブレイドを介してマナを身体に送っているからだよ」
「そうなんですか?」
「うん、このアンブレイドがマナを吸収して身体に伝達、身体はそれに反応して身体能力が向上する」
「へぇ〜」
「だからアンブレイドを離すとマナの供給がなくなって身体能力の向上が得られない。まぁ実はね、身体も微量だけどマナを吸収しているんだ。けどアンブレイドを持っている時ほどの身体能力の向上は期待できない」
「そうなんだ……マナとアンブレイドか。なんか不思議ですね」
「そうだね」
左手に握られたアンブレイドを見る。このアンブレイドは今でもマナを吸収してるのかな? でも身体能力の向上かぁ。もしかしたら。もしかするかも。
「あ、あの身体能力の向上って身長とかは伸びないんですか?」
私は背が低い。さっきのふたり組にも言われたし、中学生に間違われる事はざらにあるししまいには『小学生?』って言われる事もある。むしろ多い。若干コンプレックスを持っているといってもいい。
「伸びないよ」
「ううっ」
あっさりと一蹴されてしまった……
「飽くまで身体能力だけ、身体そのものが変化したらそれは『向上』じゃなくて『成長』になるからね。第一鏡の中と外で身長や年齢が上がったり髪が長くなったらそれはそれでヤバいでしょ? 精神と時の部屋になっちゃうよ」
「はぁ、そうですね」
そうだよね、それはそうだよね。いきなり身長が伸びたら伸びたでみんなびっくりしちゃうよね……でも身長伸びないかなぁ〜アイリーンくらいの身長になればこのひととも、つり合えるかもしれないんだけどな。
「じゃあ次ね。手を出して」
「手を? えっとこうですか?」
彼はひとつ頷いて私は左手を『なんか頂戴』っていうような形で手のひらを彼に差し出す。
「今から実際に身体能力向上の『デメリット』を経験してもらうね。いい? 気をしっかりと持ってね。痛かったら叫んでもいいから。少し強めに叩くからね。じゃあいくよ」
「はぁ」
手を叩くのになんでそんなに警告みたいな事を言うんだろ?
パチン!
彼と私の手が触れ合い叩かれた強打音が誰もいない空間に響く。
「いっ………………!ッ」
痛い! 声が途切れるほど……痛い。すごく痛い! 手を叩かれただけなのに、なんでこんなにすごく痛いの?
苦痛で顔がゆがむ。両膝が地面にへばりつく。手のひらを駆け回る激痛。じんじんと熱を持つ手のひら。痛みで震える腕。
「どう? 大丈夫?」
「あ、大丈夫じゃないかも、すごく……いッ、痛いです……」
痛い。痛くて彼の顔がまともに見れないッ
「悲鳴をあげなかったのは偉いね。いいよ。正常だ」
正常? こんなに痛いのに正常ってなんなの? なにが偉いの? こんなに痛いのに? まだ痛みが引かない。ううん違う、この痛みは……しばらくは続く痛み方だ。うっ、痛い、痛いよ……
「痛いところ悪いけど時間が惜しいから説明を続けるよ。痛みながら聞いてね」
じんじんする左手のひらを押さえながら、痛みに耐えながら、うなだれながら頷く。
「鏡の中のデメリット。さっきは身体能力の向上っていうメリットを話したけど、メリットのほかに当然だけどデメリットもある。今君が感じている、感覚して残留している痛み。つまり痛覚。それももちろんマナを介して異常的で飛躍的に向上している。皮膚の痛覚や深部痛覚、内蔵痛覚もこの痛覚に含まれる。痛点も同様」
痛覚の向上……それってとても『痛がり』になったって事なの?
「少し強く叩いただけでかなり痛いでしょ? バトルになったらもっと強烈な痛みを受けると思う。もっと激烈な痛みが襲うと思う。今だからもう一度聞くよ。このアンブレイドバトルをやる覚悟はあるかい?」
「……」
姿見の間で問われた問いかけ。この痛みで答えられない。ううん、違うか……私、迷ってるんだ。
「君は言ったよね? 『覚悟の上です』や『痛みのないバトルなんてない』って、その思いは今でも変わらないかな?」
「……いですか?」
左手を押さえながら私は立ち上がる。痛いけど……とても痛いけど……立ち上がらないと始まらない。
「えっ?」
「他にデメリットはないですか? って聞いてます」
「なんでそんなことを聞くの?」
「時間が惜しいんですよね? バトルが始まったら聞く暇なんてないんですよ」
「へぇ、それは『覚悟』も『思い』も変わっていないって捕らえていいのかな?」
「くどいですね。こんな小さい私ですけど、これでも一応騎士道部ですからね、一度自分で決めた事は貫きます」
痛みをこらえて彼の顔に眼差しを向ける。そうだ。迷ってるヒマなんてない。それと同時に時間もないんだ。
「いい眼だね。さっきの死んだ魚が腐った眼とは大違いだ」
「ええ、衛宮センパイに心身ともに鍛えられていますから」
今ほど騎士道部に入部してよかったと思ったことはない。思い出すなぁ、火燐センパイに初めて会った時の事。あの一撃に比べれば……こんな痛み!
「いいセンパイに出会ったね」
「お陰さまで」
ホントにいいセンパイです。でも、来年には卒業しちゃんだよなぁ。あ、新しい騎士長って誰になるんだろう? まだ決めてなかったよね? 確か。
「わかった話の続きに戻るよ。デメリットはもうひとつあるけど……これは鏡の外に戻ったときに体感したほうがいいから今は省くね」
おっと、方向違いの考え事はこのバトルが終わってからにしないと。しっかりとこのひとの説明を聞かないといけないな。ん、でも省くの?
「鏡の外じゃないと説明できないくらいの重要なデメリットなんですか?」
まだ痛む手のひらをさすりながら彼の言葉に質問で返す。
「いや、そういう訳じゃないけど、説明するより体感したほうが早いかなって思ってさ。今聞きたい?」
「う〜ん……いや後でいいです」
「わかった」
痛覚より後のデメリットってなんかとてもイヤな予感がするんだよね。痛覚以上のデメリットだったらバトルに集中できなさそうだし。
「そろそろ痛みが引いてると思うけどまだ痛む?」
「えっ? あれ、そういえば痛まない?」
痛む手のひらをさすってるけどそんなに痛みは感じないな? あんなに痛かったのに?
「痛覚も向上してるけど治癒力も向上してるって言ったでしょ? 痛みの緩和はその治癒力のおかげだよ。だからといって痛みまでは消えないし緩和しないよ。痛みの持続時間が短縮されるだけだからね。まぁ、そのうち痛みも無くなる」
「なるほど」
そうか、そう考えると痛みのデメリットより治癒力向上のメリットの方が気持ち的も大きいな。
「じゃあ次ね。あ、矢継早に説明しちゃってるけど大丈夫? なんか質問はある?」
「いえ、質問があればそのつど訊ねていきますので、そのまま続けてください」
「そう言ってくれると俺もありがたいよ。じゃあ、次はアンブレイド自体の説明かな」
彼は自分のアンブレイドを指さしてアンブレイドを持ち出す。
「操作説明って感じで聞いてね。まずはこの赤いボタンが開閉ボタン。押してみて」
「はい」
傘留めフックに手をかけると『傘留めフックはそのままでいいよ。ボタンを押せば自動ではずれて傘が開くから』と口を挟む。
「えっ、そうなんですか?」
「うん、あ、一応これ戦闘用アンブレイドだけの仕様だから。一般用のアンブレイドは傘留めフックをはずしてね」
彼のアンブレイド知識を耳に入れながら赤いボタンを押す。
「おおっ!」
赤いボタンを押すとホントに傘留めフックがはずれ傘が開いた。傘留めを手動ではずさないで開くのは便利だなぁ。
「閉じるときは傘が開いた状態でもう一度赤いボタンを押せばいいからね。これも自動閉じるから」
「はい」
もう一度赤いボタンを押す。するとシュルシュルっとなにかを巻き取るような音がしてストンと傘が閉じた。
「これがアンブレイドの開閉操作ね。次は傘のまとめ方ね傘留めフックも自動で閉じるから。この赤いボタンの後ろにあるトリガーボタンみたいなのがあるよね?」
「とりがー? あ、このひょっこっと出てる引き金みたいなものですか?」
「うん、そうだよ」
赤いボタンの後ろには確かに三角の形のしたボタンがあった。
「それを押してごらん。傘留めが自動で働いて開いた傘をまとめてくれるから」
「わかりました」
トリガーボタンを押す。
「おおっ!!」
アンブレイドの先端にある輪っかみたいなものがクルクルと回転して傘布をまとめながら上にあがってきた。
「お、おおっ!」
そして傘留めフックがパチンと留まりアンブレイドが綺麗にまとまる。
「おおっ! すごく綺麗にまとまる! 新品みたい」
ホント、今買ってきたみたいに綺麗にまとまってる。すごい。これすごい!
「これは便利ですね!」
ホント便利。これは便利だぞ!
「これも戦闘用アンブレイドだけの仕様ね。雨の日なんかは傘を掴まずにまとめられるからかなり便利なんだよ」
うん確かに。これなら手が濡れずに傘をまとめられる。これはすごく便利だ。これ絶対に便利!
「あ、あとね戦闘時には傘を開いた状態は広範囲の攻撃を防げるシールドになるからね。覚えておいて。逆の閉じて傘留めフックでまとまっている状態は攻撃形態だからね。これも覚えておいて」
「えっと、それは要するに閉じた状態が攻撃で開いた状態は防御って覚えておけばいいんですか?」
「うん、要約するとそうだね。そう覚えておいて問題ないよ」
「傘が破けたりしないんですか?」
「それは無いよ。このアンブレイドはミスリルファイバーっていう、ものすごい強度と驚くくらい軽い傘布を使ってるからね。絶対に破けないと言っていい」
『ミスリルファイバー』か、そう言えばお姉ちゃんも同じ事言ってたな。アンブレイドはオリハルコンブルースフィアとミスリルファイバーが使われていてすごく堅いし羽のようにすごく軽いって。
「わかりました」
私がそう答えると彼は微笑んで『うん。じゃあ以上がアンブレイドの開閉とかの基本的な使用方法かな? 質問とかある?』との問いかけに私も微笑み返して『いえ、大丈夫です』と答えた。
「うん、特に難しい事はないしね。じゃあ次はクリスタルパネルかな」
「くりすたるぱねる?」
首を横に傾け反唱する。
「さっき月のこと訊く時に見たでしょ? これだよ」
そう言って彼は左手を胸の前で左から右に薙ぐ。
「あっ!」
それを見た私は思い出した。衝撃的なふたつの月を見た時に彼が見ていたものだ。空中に浮かび上がる半透明なパネル……クリスタルパネルって言うのか。すごく幻想的だな。
「これはね『クリスタルパネル』って言ってこの鏡の中の世界でのみ開くことができる端末なんだよ。ほらこっちにきて見てごらん」
「端末? ですか。見た感じスマホの大画面版みたいですね」
「そうだね。基本的な操作はスマホと同じかな」
私は彼の隣で一緒に『クリスタルパネル』を見る。ううっ、隣に立つだけでドキドキするよ〜〜 緊張してまともに『クリスタルパネル』が見られない。
「た、たくさんアイコンがありますね」
「うん。この中で戦闘中に使うのはマップと通信とステータスくらいかな? 設定は……まぁ使わないか」
彼はアイコンをひとつづつ指をさし説明してくれる。
「まず地図のイラストが入ったマップのアイコンだけどこれは自分の現在地とパートナーの現在地を調べる事ができる。アンブレイドバトルは広範囲で行われるから現在地の把握は大事だよ。今回のようなタッグバトルは特にね」
「広範囲でバトるんですか?」
「あ、そうか。知らないよね。そうだよアンブレイドバトルは広範囲で行われるんだ。この妻沼駅近辺はすべて戦闘範囲だと思っていいよ。新妻沼駅まで戦闘範囲にはいるかな? もっとか」
彼はアゴに手を当て戦闘範囲がどこまでか考えているようだ。とても真剣に考えているんだな。マジメなひとだな。
「う〜ん、ごめんね。とにかく広範囲ってことしか俺からは言えない。どこまでが戦闘範囲ってのはわからないんだ」
「あ、いえ大丈夫です。広範囲って事がわかっただけでも気持ちの持ちようは違いますから」
「ごめんね」
「気にしないでください」
彼はもう一度『ごめん』と言い次のアイコンの説明に入った。
「この電話の受話器みたいなアイコンが通信のアイコン。通信ってのはその名と通りパートナーとの通信ができるアイコンね。ちなみに君がパルモに行ってる間に通話登録は設定してあるから通信できるよ。あっこれもこの鏡の世界の中だけの機能ね」
「通信?」
「要は電話みたいなものだよ。実際にやってみようか」
彼はクリスタルパネルの通話アイコンをタッチした。
「おおっ!」
すると私のアンブレイドがブルブルと微振動を始める。
「開閉ボタンの下に四角い形イラストが入った丸いボタンがあるでしょ? それを二回押して」
彼の言われるまま赤い開閉ボタンの下にある四角のイラストが入ったボタンを二回押す。
するとクリスタルパネルが空中に映し出されて画面には大きく『Sound Only』と映し出されていた。
「もしもし聞こえる?」
彼の声が隣からとクリスタルパネルから聞こえてくる。
「あ、はい聞こえます。隣とこのパネルから」
「うん、ちゃんと通話できるね」
その言葉と同時に私のアンブレイドから浮かんでいたクリスタルパネルが霧状になって消える。彼がたぶん終話したからだと思う。
「これが通話の仕方ね。さて最後はステータスのアイコンだね。この傘のイラストが入ったのがステータスのアイコン。押してみるとこんな感じで現在のアンブレイドに装着されているマテリアルプレートとそのプレートに内包されているスキル。それにスキルキャパの現在値と最大スキルキャパ数が表示される」
「は、はぁ」
彼のクリスタルパネルにはたぶんCGで描かれたアンブレイドが表示されていて、その下には『A Slot:no Equip』と『B Slot:no Equip』と『No Link』と英語で書かれていてさらにその下には大きく100/100の数字。そして一本の黄色のゲージが五分割されて表示されていた。
パネル上半分がアンブレイドのCGとマテリアルプレート装着数と内包スキルか。英語はあまり読めないけどたぶん『No』って書いてあるからマテリアルプレートは装着されてないんだろうな。でも『ノーリンク』ってなんだろ?
(ん? あれ? 文字が……今気づいたけど普通に読めるな。なんで文字が鏡写しで反転してないんだろう?)
とりあえず私の疑問は後回しでステータスに気持ちを戻す。で、パネル下半分がよくわからない数字の構成か……意外とすっきりしてる画面構成なんだな。で、この数字があのひとが言ってた『スキルキャパ』っていうものなのかな? でもスキルキャパってなに?
「あ、あのさっきチラっと言ってた『スキルキャパ』ってなんですか?」
「ん、スキルキャパって言うのは……あ、そうだね。クリスタルパネルの操作方法を教えながら一緒に教えるよ。だから少し待ってね」
「あ、はい」
彼は言葉を続け『じゃあ、実際にクリスタルパネルを使ってみようか』と提案して私は『はい』と返答。彼の提案を呑んだ。隣に居る彼に緊張して未だに私の胸のドキドキは止まっていない。っていうかむしろさらに鼓動が早くなってない? 私ッ!?
「まず、さっき通話で使った四角いイラストが入った丸いボタンを一回押してそのまま押し続けて」
彼の言うとおり赤い開閉ボタンの下にある丸いボタンを
押す。
「お、押しました」
「うん、そのまま押した状態で空いている右手を胸のあたりから外から内に薙いでごらん」
彼の指示通りに右手を胸のあたりで外から内に薙ぐ。
「お、お、おおっ〜!」
薙いだ右手を追従するかのような感じで空中に半透明なパネルが現れた。そして私は今日で何度目かわからない驚きの声を上げる。
「そう、そんな感じ。今押してるボタンを押している限りクリスタルパネルは表示し続けるからね。じゃあ次はマップのアイコンは……それはいいか、見ればわかるし。じゃあ通信のアイコンを押してみようか」
「通信、通信っと」
私は通信のアイコンを探して目をキョロキョロさせる。クリスタルパネルのアイコンはなんかいっぱいあってゴチャゴチャしてるから探しづらいなぁ。
「懐かしいなぁ、このゴチャゴチャしたアイコンの配置。俺も初めてこのパネルを開いたとき通話のアイコンを探したもんだよ。あ、もう少しパネルを下にスクロールさせれば通信アイコンあるよ」
「あ、ありがとうご、ご、ございます」
彼が私のパネルにのぞき込む。ううっ近い、か、顔が、顔が近いですよぉ〜どうしょうぅ〜顔が赤くなって胸の鼓動が高鳴りすぎて、あのひとにまで聞こえちゃうよ。
「あ、ありました」
「うん、じゃあ押してみよう」
「はい」
受話器アイコンを押すとクリスタルパネルが切り替わりパネルには『現在通話可能なブレイダー』と表示されリストみたいなものが出てきた。リストには意味不明な英語と数字の羅列がひとつだけ表示されていた。
「えっと……ブレイダー?」
「この『Umblade Serial No:Sb1589057834-001』っていう数字をタッチしてみて。俺のアンブレイドに繋がるから」
「は、はい!」
彼は律儀にも長いシリアルナンバーを最後まで言ってくれた。でも、そのお陰で……ち、近い! さっきより顔が私の近くまで来てますって! う、うれしいけど緊張がマックスですよ! 胸が弾けそう! 顔から火が出そう!
「うん、通信できてるね。もしもし? 聞こえる」
「は、はい。隣とこのパネルから聞こえます」
「よし、通信はオッケイだね。通信終了をタッチして通話を終了させて」
言われるままにクリスタルパネルの通信終了をタッチする。すると彼のクリスタルパネルがさっきの私と同じように霧状になって霧散した。
「本来なら通話可能リストにはシリアルナンバーじゃなくて名前とか分かりやすいものに変更するんだけど今回はふたりだけだから省くね」
「名前……」
名前、名前かぁ、そう言えばまだ自己紹介とかしてなかったなぁ。このひとの名前はなんて言うんだろう? うんよ、よし! ここはひとつ!
「あ、あの、今さら感満載ですいませんけど私、雪見凪紗って言うんです。よかったら、な、名前を教えてくれませんか? まだお互い名前を名乗ってないですよね?」
思い切って名前を聞いてみた。この流れなら自然のはず、自然に訊けるはず 自然に聞けたはず!
「あっ、そういえばまだ名前言ってなかったね。俺の名前は神夜刹那っていうんだ」
「かぐやせつな……さん」
神夜刹那さんかぁ、なんというか……
「女みたいな名前でお伽話みたいな名前でしょ?」
私が思っていたことを神夜さんは言ってきた。
「そ、そんな事ないですよ」
「イヤイヤ俺の名前を初めて聞いた人はだいたい『女の子みたいな名前』って言うからさ。いいよ気を使わなくて」
「あ、すいません……その実は女の子みたいな名前だなって思ってしまいました」
「はは、うん、いいよもう慣れてるから。雪見さんは正直者だね」
神夜さんは笑い飛ばしてくれたけど……なんか悪いこと言っちゃったな……
「すいません……でも、女の子みたいな名前でも私は気にしませんから」
「ありがとう。その言葉だけでも嬉しいよ。じゃあ次はステータスの説明をするね。傘のアイコンを押してみて」
神夜さんは特に名前の事を気にする様子もなく次のステータスの説明に入る……ホントに慣れちゃってるんだな……ごめんなさい。神夜さん。
「押しました」
「うん、じゃあまず、ん?」
神夜さんは、あ、いや私の心の中だけでは刹那さんって呼ぼう。だってその、い、いつか下の名前で呼びあう仲になったときはの為に! いいですよね? 刹那さん! で、私のパネルに何かあったのかな? じっと見てるけど……
「なんだろ? Aスロットにプレートが入ってるな……」
刹那さんはじっとパネルを見つめたまま手をアゴに当て考え出した。
「ん、後で確認だな。まずはステータスの授業だ。ここをみて」
ひとりで納得すると気持ちを切り替えたのかパネルに指をさし『ステータス』の授業を再開させた。
「このAスロットとBスロットってのが今装着されているマテリアルプレートとスキル。今はAスロットにA Slot:『滑走』って表示されててBスロットがB Slot:no Equipってなっているでしょ? これはつまりAスロットに滑走のマテリアルプレートが装着されていてBスロットにはなにも装着していない事を意味しているんだ。それとこの『No Link』は後で説明するね」
「はい、えっとじゃあ、このステータスを信じると今現在私のアンブレイドには『滑走』のマテリアルプレートが装着されているって事ですか?」
私は『滑走』と表示されている場所を指さす。
「そう言うことになるね。確認だけどアンブレイドバトルは今日が初めてなんだよね?」
「はい」
「このアンブレイドを買ったときにプレートとか買ったの?」
「あ、いえこのアンブレイドはお姉ちゃんからのプレゼントでして……」
「プレゼント……雪見さんのお姉さんからの?」
「はい」
「ん〜だとすると雪見さんのお姉さんが意図的にプレートを装着して、そのまま雪見さんに渡したことになるのかな?」
「う〜んどうだろう? もらってから一度も使ってないし今日が初めて持ち歩いたんですよね」
「一度も使ってないの? じゃあなんで今日は手にとって持ってきたの?」
「それはその、私の使っている傘がお姉ちゃんが使っててそれで……」
「なるほど……今日の予報では雨で家にはアンブレイドしかなかった。でしかも戦闘用ってことか」
「はい……それと、お姉ちゃん考えてるようで実は考えていない節があるからなぁ〜何気なくプレートを入れたのかも」
「つまりなにを考えているか読めないってこと?」
「ん〜まぁ、そういうことになりますね……」
「中村くんみたいなお姉さんだね」
「……」
「……」
「「う〜ん」」
一瞬の沈黙の後、私たちはふたりして考え込んでしまった。でも、なんでマテリアルプレートを入れておいたんだろ? お姉ちゃんは。
「まぁ、考えてもしょうがない。このプレートはありがたく使わせてももらおうよ」
「そうですね」
そうだ。分からない事を考えてもしょうがない。なら、刹那さんの言うとおりこのプレートをありがたく使わせてもらおう。
「それじゃあ、このプレートの効果は後でまとめて説明するね。次は『スキルキャパ』システムの説明かな」
刹那さんはパネル下部の100/100の数字を指す。
「これが『スキルキャパ』『スキルキャパ』はねマナを数字化したもので、この数字はマテリアルプレートのスキルを使うごとに減っていく」
「マナそのものも減ってこの数字も減るんですね?」
「うん、最低消費マナは20からでこの棒状のゲージがスキルキャパ数をゲージ状にしたものね」
今度は数字の下のゲージ状を刹那さんは指さす。
「このゲージが五分割されているでしょ? これはね、見えてないけど数字にすると『10・25・50・75・100』って五段階に分かれる。ここまで大丈夫?」
「あ、はい」
う〜ん……なんか難しい話になってきそうだなぁ……
「もし、わからない事があったら言ってね。それじゃあ続けるね」
刹那さんは私にそう釘を打ってくれた。やっぱりやさしいひとだなぁ、私の大好きなひとは。
「さっきプレートのスキルを使用したらマナを消費するって話したけど、表示されているスキルキャパが0になったら基本的にはスキルは使用できない」
「基本的に、ですか……」
「うん、でも二度と使用できないわけじゃない。そこで出てくるのがさっき言った『10・25・50・75・100』って数字。これは最小回復マナ数を表していて、100から0になったら10回復、次に0になったら25回復。その次に0になったら50回復って感じで段階を踏んで100まで回復する」
「一度に100回復する訳じゃないんですね」
「うん、これも不思議でね段階を踏まないといけないんだ」
「へぇ〜」
ホントに不思議だな……なんでなんだろ? しかしホントに今日は驚くことばかりで感心することばかりだなぁ……私。
「う〜んでも、確かアンブレイドはマナを吸収してるんですよね? なんで段階を踏んで100まで回復するんですか? 一度に100まで回復すればいいと思うんですけど……」
私は刹那さんから習った『アンブレイドはマナを吸収している』って事を思い出しこの疑問を彼に訊ねてみた。吸収してるならそんな回りくどい事をしないで一気に回復すればいいんじゃないって思う。
「さっき『マナは身体に影響を与えて異常的で飛躍的に身体能力を向上している』って話をしたと思うけど、それに関係してるんだ」
刹那さんは右手に持っているアンブレイドを見やり視線を私へと戻す。ううっ、見つめられると恥ずかしいなぁ。
「スキルで使用するマナは身体に吸収しきれない余剰分のマナをスキルに回している。アンブレイドは無尽蔵に吸収して無造作に身体へ伝達しているからね。もっと言うと身体能力の向上もマナを使ってる。使ってるって事はさっき雪見さんが異常的で飛躍的な『ジャンプ』や『ダッシュ』を体験したと思うけどそれもマナを使用してる。もちろんマナを消費してるからアンブレイドは身体にマナを送る。だからその分スキルに回すマナが減る。身体に送るマナが優先らしいからね。って言うのが一説」
「い、一説ですか!?」
長い説明をしてこれが一説なの!?
「うんまぁ、これが広く知れ渡ってる通説って事になるのかな? この『一度に100回復しない』って言うのはいろいろな説があってね。アンブレイドに極小なCPUが埋め込まれて制御しているとか、森羅カンパニー独自のOSが仕込まれて制御してるとか。あとアンブレイドに魔術的施術を施してマナの制御しているとかいろいろね。オカルト方面の一説から科学方面の一説までそれはもういろいろ、で、今俺が話した一説で落ち着いているって感じかな。まぁ、実はこの『スキルキャパ』の事はまったくわかっていないって事」
「はぁ、よくわかっていないなら森羅カンパニーに直接聞いてみたらいいんじゃないですか?」
「そう思うでしょ? ところがどっこいね。森羅カンパニーは『ノーコメント』や『調査中』とか『確認中』や『企業秘密』って事で明確な答えは返ってきてないんだよね」
「そうなんですか?」
う〜ん、ますます謎だな。マナといい森羅カンパニーといい。なによりこのアンブレイドって傘が謎だ。マナを吸収してるし、その吸収したマナを身体に送るし、マテリアルプレートのスキルを使うのもこのアンブレイドだし。
ん? そういえばマテリアルプレートの説明はまだ受けてないな。
「あ、あの」
「じゃあ、次はスキルキャパが10とか5の時にどうするかってことかな」
あ、声がかちあっちゃった。
「ん? なにか質問?」
「あ、いや大丈夫です」
とりあえず、マテリアルプレートの事は後で聞こう。きっと刹那さんはマテリアルプレートの説明はしてくれるだろうし。
「そう、じゃあ続けるね」
「はい」
「さっき、スキルのマナ最低消費数は20って事を話したと思うけどスキルキャパが5や10や15の時はスキルが使えないよね? 最低でも20ないと使えない」
「はい」
「なら5や10や15の時はどうするか? 答えはアンブレイド同士を激しくぶつかり合わせること。つまり接近戦を仕掛ける」
「接近戦ですか……えっと、接近戦をしてどうなるんですか?」
「アンブレイドは不思議なものでぶつけ合うとマナを消費するんだ。強ければ強いほど、強力は一撃であればあるほどにマナを大量に消費する」
「アンブレイド同士をぶつけてマナを消費させる……そうか、それでスキルキャパが10の時は0までスキルキャパを減らして25まで回復させれば……」
「そういうこと。これで最低一回はスキルを使える」
「う〜ん、なんだか、奥が深いですねアンブレイドバトルって」
でも、ホントなんでアンブレイドをぶつければマナが減るんだろ? 不思議だな。アンブレイドって。
「うん。ただアンブレイドを振ってスキルを使っただけでは勝てない。スキルキャパの回復やスキルキャパが10や5や15の時に接近戦に持ち込むかこまないか。逆にスキルキャパが100あっても自ら接近戦に持ち込んで相手に自分のスキルが使えない状態って事を思いこまるか。そんな心理戦とか頭脳戦とかも相手によっては必要になるかもね」
「ううっ、戦いで頭を使うのは難しそうです……」
ただでさえ頭を使うのが苦手なのに戦いの時まで頭は使いたくないよぉ。
「はは、雪見さんは今日が初めてだからそういうことは考えなくていいよ。逆に『やれ』って言ってもできないでしょ?」
「はい。無理です」
「はっきり言うね、やっぱり雪見さんは正直者だね。実は言うと俺も心理戦や頭脳戦苦手なんだよね」
刹那さんはそう笑いかける。ううっ、私って思ったことをすぐ言っちゃうのかな? でもやっぱり刹那さんはいいひとだなぁ。つくづくそう思うよ。
「じゃあ、クリスタルパネルとスキルキャパの説明は以上ね。なにか質問とかある?」
「う〜ん、特には……あっ!」
私はいま閃いた疑問を刹那さんにぶつける事にした。
「えっと、マナが0の時にアンブレイドとアンブレイドをぶつけ合うとスキルキャパがマイナスになったりするんですか?」
「いや、それなないよ。0は0のままだよ。0の状態で接近戦やアンブレイドをぶつけ合っても0は変わらない」
「なるほど……じゃあもうひとつ」
「どうぞ」
「スキルキャパの0の持続時間ってあるんですか?」
「どういうこと?」
「えっと、例えば0から10に回復するとしますねよね? なら0の持続時間ってあるのかなって?」
「それはスキルキャパに0の時間があるかないかって事?」
「はい」
私の拙い質問に刹那さんは要点だけどまとめて理解してくた。私のもう少し説明力があればよかったな。う〜んこれは反省しないと。
「スキルキャパが0から10までのタイムラグは約10秒くらい。これは0から25までの回復も、0から50までの回復も一律共通。つまり約10秒間は0が持続してスキルが一切使えない。まぁ今回の例えの場合だと回復しても10だから引き続きスキルは使えないけどね」
一律共通して10秒間スキルが使えない。か、これは結構大事な事柄だぞ。覚えておかないと……うん。
「ほかにはない?」
「ほかにはですか……」
ここで私はステータスの文字が反転せず普通に読めた事に対して質問をしてみる。
「あの、気になったんですけどこのステータス画面の文字は文字が反転してないですよね? これっとどういうことなんですか?」
「簡単だよ。それはもともと最初から反転してるからだよ」
「最初から?」
「うん、そう。鏡の外の世界じゃステータスは開けないけど向こうでは文字が反転した状態のはず。で、鏡の中では正常な状態に見える」
「えっと、つまり鏡の外では鏡に移った状態の反転文字で鏡の中では反転して元通りの正常な文字になると?」
「まぁ、そうなるね。ちなみに戦闘用のマテリアルプレートの文字も鏡の外では文字が反転するからね」
なるほど、すでに鏡に反転した状態なのか。で、鏡の中にはいると反転して逆に元通りに読める文字になる……
なんか、頭がこんがらがりそうだ……さらにマテリアルプレートもか……う〜ん。ホントに頭がこんがらがりそう
「どう? いまの説明でわかった?」
「はい。だいたいは」
「よかった。ちょっと難しい説明だったけどわかってもらえて良かったよ」
私の言葉に刹那さんは嬉しそうにひとつ頷きクリスタルパネルに視線を落とす。ううっ、ごめんなさい。頭がこんがらがる前にもう一度聞きますので許してくださいね。刹那さん! でも、相変わらずパネルをのぞき込んでいるので顔が近いよ……嬉しいけど……
「次はクリスタルパネルの終了の仕方だけど起動したときと逆の動作をしてみて」
「逆の動作……」
確か、外側から内側に腕を振ったから。その逆って事は……
「内側から外側に、ですね」
確かめるようにひとり言をつぶやき腕を内側から外側へと腕を薙ぐ。
「お、おおっ!」
薙いだ腕に追従するように霧散してクリスタルパネルが消滅。そして私はその光景におなじみの驚きの声をあげる。ホントに何度目だろ?
「うん、消えたね。押してるボタンは離していいよ。ちなみにクリスタルパネルを起動してる状態でボタンを離す事でもパネルは終了できるけど、その際に画面に『クリスタルパネルを終了しますか?』って確認のダイアログがでるから『はい』を押せば終了できるよ」
「はい」
私はさっそくもう一度、ステータスを起動させその状態でボタンを離す。
「出ました。『終了しますか?』って確認画面」
「じゃあ、『はい』を押してみて」
言われるまま確認ダイアログの『はい』を押す。
「おおっ!」
押すと同時にクリスタルパネルが霧散して消滅した。
「うん、そうそう。あ、それとさっき二回ボタンを押して通話できるって話をしたよね? そのボタンを一回だけ押して離せばショートカット起動でダイレクトに『ステータス』が起動するから頭の隅にでも覚えておいて」
「はい」
さっそくボタンを一度だけ押して離して起動してみる。
「おおっ!」
中空に浮かぶ半透明のクリスタルパネル。さっき私が見ていたのと同じ画面が私の視線に下に展開されている。
「うん、そうそう。ショートカットで開いたそのステータスの終了の仕方はクリスタルパネルと同じやりかたね」
「はい」
さっそくさっきと同じように腕を内側から外側へと薙いでみる。刹那さんが言ったとおりステータスを表示したパネルは霧散して消滅した。
「それじゃあ、次は『マテリアルプレート』と『リンク』、それと軽くだけど『マテリアル・クリエイション・スロット』の話をするね」
「まてりあるくりえいしょんすろっと?」
なんか難しいそうな単語がでてきたよ?
「軽くだからそんなに深く覚えなくていいよ。じゃあまずは『マテリアルプレート』からね。えっと……」
刹那さんは一歩引き下がりポケットから黒い板を取り出し『じゃあこれ』と言い私にひとつプレートを手渡してくれた。
「マテリアルプレートは戦闘用と一般用があるけどもちろん使うのは『戦闘用のマテリアルプレート』ね」
「はい。でもこのマテリアルプレートって薄っぺらいですね。なんか……パソコンで使うSDカードを縦に三枚並べたみたい」
裏表、上から下、右から左、斜めと色々な角度から『マテリアルプレート』を見てみた。表現があってるかわからないけど、なんとなくSDカードを長くした感じだな。
「うん、まぁどちらかと言うとソミーのスティックカードメモリかな」
「すてぃっくかーどめもり?」
「あ、そうか、最近は使われてないし、今はSDカードが主流だもんね。今の忘れて」
「あ、はい」
刹那さんは『ごめん。USBメモリのほうがわかりやすかったね』と言葉を繋ぐ。そんなに気にしないで大丈夫ですよ。刹那さん!
「今この状態だと真っ黒いただの板だけど側面に小さいけどでっぱってるところがあるでしょ?」
マテリアルプレートをまじまじと見る。あっ、確かに小さいけどなんかでっぱりがあるぞ。
「あ、ありました」
「うん、それがスイッチね。じゃあ入れてみて」
私は言われ通りに家にあるみたいな蛍光灯のスイッチを入れてみる。スイッチを入れるとプレートの表面? に青く光る文字で『加速』と表示されて下部には同じく青く光る三本の縦線が現れる。それが裏表両面に表示されている。
「おおっ〜」
「雪見さんは今日驚いてばかりだね」
ううっ、ツッコまれた……そうですよ、今日はいっぱいあなたに驚かされています。
「見てわかるとおりこの側面のスイッチがマテリアルプレートのスキル確認動作兼起動動作ね。このスイッチを入れないと真っ黒いプレートでなんのスキルかわからないからね」
「なるほど、じゃあこのスイッチを入れないとスキルは使えないんですね」
「いや、そういう訳じゃないよ。スイッチを入れてない状態でもアンブレイドに装着すれば自動でスイッチが入るからそこは大丈夫だよ」
「あ、そうなんですか? へぇ〜アンブレイドはホントすごいですね」
まじまじとアンブレイドを見渡す。ホント刹那さんの説明を聞いてるとアンブレイドって謎と不思議でいっぱいだなぁ?
「このプレートの装着場所だけどこの柄の先端? 末端って言うのかな? とにかくこの位置に装着するんだ」
刹那さんはアンブレイドの取っ手の部分を指をさす。でも柄?
「えっと、この取っ手の部分ですか? なんか剣の柄の部分みたいな呼び方ですね?」
「うん。でもよく『柄』って事だけで剣って単語が出てきたね?」
「あ、さっきもチラっと言いましたけど、私こう見えても騎士道部なんですよね」
えっへん、意外でしょ。意外ですか?
「あ、そう言えば言ってたね。騎士道部か……なら騎士の戦い方は捨てた方がいいね」
「えっ……」
捨てる? 騎士の戦い方を?
「捨てるんですか……えっと、なんでですか?」
「あ、いやそんな悲しそうな声と顔をしないでよ。雪見さん」
だって、騎士道だけが今の私がここにいられる理由。初めてのアンブレイドバトルで私がここにいられる理由なのに……騎士道をやってなかったら私はあの時にきっと逃げ出していた。もし騎士道をしていない私は戦えないのだから……刹那さんに逢えてもきっと……
「えっとね、このアンブレイドで最強のブレイダーってのか騎士の戦い方なんだよね。で、そのブレイダーを倒すため各ブレイダーが騎士道の対策・研究をしているんだ」
「最強のブレイダーですか……その、ブレイダーって言うのはなんですか?」
悲しい瞳を刹那さんに向けつつ私はまたも疑問をぶつける。刹那さんはそんな私の対応に困っているらしいく、しどろもどろになっている。……ごめんなさい。刹那さん。
「ぶ、ブレイダーってのはねアンブレイドバトルをするひとの事をブレイダーって言うんだ」
「そうなんですか……」
「そうなんです。あ〜、なんかごめんね」
「あ、いえ大丈夫です……」
「えっと、ホントごめんね。雪見さんがアンブレイドが初めてなんだよね。配慮が足りなかったごめん。だから捨てろなんて事は忘れて。雪見さんのスタイルで戦っていいよ。俺も出来る限りフォローはするよ」
優しい言葉。私を慰めてくれているんだな……
「私の方こそごめんなさい……神夜さんを困らせる事言っちゃいましたね……」
ホントごめんなさい。何度でも思う刹那さんはとても優しいひと。だから私も大好きなこのひとを困らせたくないもんね。うん、気持ち切り替えよう!
「ううん。俺が悪いから雪見さんは謝らないでいいって。あ、あとそれとね。俺の事『神夜』って呼ぶのやめてもらっていい? なんかお伽話のお姫様の名前みたいで自分の名字は嫌いなんだよね。だから刹那って呼んでよ。そっちの方がマシだから」
えっ、そ、それっといきなり下の名前で呼び合う仲になっちゃうことですかぁ! イヤイヤそれは考えすぎでしょ? でも、刹那さんが下の名前で呼んでいいって言うならいいんじゃないの? アイリーンの言葉を借りるなら『乗るしかない! このビッグウェーブに!』で行こう!
沈んでいた気持ちが突然上がってきたよ!
「えっと、じゃあ、せ、刹那さんでいいんですか?」
いざ、言葉にすると、とてつもなく緊張するぅ〜〜
「さん付けは堅苦しいからイヤだな、呼び捨てでいいよ?」
「イヤでも刹那さん年上ですし……ですよね?」
「そうだね高校はもう卒業してるしね。でも気にしないよ俺は」
イヤイヤ、私が気にするんですよね……どうしょうかな? 『神夜』って名前は刹那さんが嫌いだから呼称対象から外れるな……まぁ当たり前だけど、じゃあどうするか? だなぁ……う〜ん
「じゃあ、間をとって『刹那くん』でどうですか?」
何と何の『間をとった』のかわからないけどとりあえずくん付けで提案。くん付けで呼ぶとなんかだかぐっと距離が縮まった感じがする。
「刹那くん?」
「はい。さすがに呼び捨ては気が引けるので……どうですか?」
「うん。雪見さんがいいならそれでいいよ」
「あ、はい。わかりました。じゃあ……『刹那くん』で」
「オッケイ」
おおっ、これで気がね無く堂々と下の名前で呼べるのか。なんだかホントに彼氏彼女の関係になったみたいだ。でも……実際は違うんだけど……ちゃんとした彼氏彼女の関係になりたいな……
「あ、あの、私だけ下の名前で呼ぶのも失礼ですし、私の事もな、『凪紗』って呼んでもらってい、いいですよ。しぇ、しぇつにゃくん!」
呼び慣れてないのと緊張してるから噛んじゃったよ……
「いいの? 雪見さんも自分の名字が嫌いなの? 俺はかわいい名字だと思うけどな『雪見』って」
か、かわいいって……ううっ、ううう嬉しい! あ、でも名字か……私のことじゃないよね。ううっ、残念。
「えっと……」
ううっ、言葉に詰まる。別に私は名字が嫌いじゃないし……雪見って名前は珍しいけど、特に不満は……あっ!
「小学生の頃にですね、『大福ちゃん』って呼ばれてまして」
思い出した。思い出したよ! 確か小学生の頃私『大福ちゃん』って呼ばれてた。あの頃は別に『大福ちゃん』って呼ばれててもイヤな感じはしなかったけど……今思えばけっこうキツいあだ名だったな。
「大福ちゃん……ああ、あのアイスの『ユキミン大福』の?」
「はい、そうです。あのおいしいアイスの『大福』って事です。『雪見』と『ユキミン』をかけられまして」
「なるほどね。それじゃあまり雪見って名字にいい思い出がないね。じゃあ俺も雪見さんの事を『凪紗ちゃん』って呼ぶよ」
「ふぇっ! な、凪紗ちゃん!」
「あれ? ちゃん付けはイヤだった?」
「い、いえ、それでおねたいしましゅ!」
い、い、いきなり『凪紗ちゃん』って呼ばれてドキってしちゃった……ううっ、焦ってまた噛んじゃったよ。しかも顔が赤くなってるかも……呼ばれ慣れてないからかなぁ。ううっ、彼氏彼女の関係……こ、恋人同士みたい! あっ。でも実際は違うんだよね。ううっ……
「じゃあ、な、凪紗ちゃん。話がだいぶ脱線しちゃったけど話を戻すよ。ごめんまだ呼びなれてないからたどたどしいけど許してね」
「あ、はい!」
刹那くんも呼びなれていないのか少し噛んだ。大丈夫ですよ! 私もさっきから思いっきり噛んでますから!
そして刹那くんはアンブレイドの柄の部分を指さす
「えっと、たぶんマテリアルプレートの装着場所まで説明したと思うけど合ってるよね?」
「あ、はい確か装着場所までです」
「じゃあ装着方法を教えるね。このクリスタルパネル起動ボタンの下にクイックダイヤルみたいなものがあるでしょ?」
「あ、はい」
私はアンブレイドのクリスタルパネル起動ボタンのすぐ下のダイヤルに目をやる。
「うん、そのダイヤルはいまニュートラルになってるね。じゃあそのまま強く下にさげてみて」
刹那くんの指示通り強めに引き下げる。
「おおっ!」
「うん、開いたね」
ダイヤルを下にさげたら柄の部分が扇状に開いた! すごい! なんか、かっこいい!
「あ、スロットに『滑走』がはいってたね。ちょうどいいや。凪紗ちゃんこんな感じでスロットにマテリアルプレートを入れてね。あと装着するときの注意点だけどプレートの下に青く光るこの三本の縦線。この線を下にして装着してね。裏表はないから三本の縦線を下にして入れるって事を覚えおいて。あとプレートのスイッチが入ってないときは角がない方向が下になるからね」
「はい」
刹那くんは扇状に開いた『滑走』のプレートの入ったスロットを指さす。なるほど扇状に開いた真ん中の所にプレートを入れるのか。
「こんな感じですか」
私は刹那くんから受け取った『加速』のマテリアルプレートを『滑走』がはいってるスロットと同じように装着してみる。
「うん。そうそう。じゃあこの開いたスロットは手で押し戻すと元に戻るからね。あ、ダイヤルも一緒に戻るから」
刹那くんの指示通り手で押し戻す。ここは自動じゃないんだ。
「欠点はAとBのスロットが両方開いちゃうけどね」
「そうですね」
私と刹那くんはお互い目を合わせ微笑み合う。なんかいい感じだな。
「じゃあ装着したマテリアルプレートのスキル使用方法だけど、マテリアルプレートはアンブレイドに装着しただけではスキルの使用はできない」
「はい」
それはそうだろう。装着して即使用ではスキルキャパをどんどんと消費しちゃうもんね。なんとなく装着しただけでは使用できないって事はわかってたんだよね。
「じゃあ、どうやって使用するかというとね、さっきスロットを開いたダイヤルを見て」
刹那くんはダイヤルに指をさした。
「薬指あたりにつまみがあるでしょ? このつまみは左右に動かす事ができる。左がAスロット、右がBスロットに対応してる。例えば凪紗ちゃんが今装着されている『滑走』を使いたいなら左につまみを動かすと連動してダイヤルも動く。それでスキル『滑走』が使用可能。スキルを使用したくないならつまみをニュートラルに戻してね」
「はい」
さっそく、ダイヤルを動かしてみる。
「……これで使用可能なんですか?」
ダイヤルを左に回したけど……特に『滑走』を使えるような感じがしないなぁ?
「そうはそうでしょ? だって凪紗ちゃん止まってるもん。基本スキルは戦闘中にしか使用できなくて動いてなきゃだめ」
「なるほど……」
「戦闘中になれば使用スキルが反応して身体に伝達。あとは自然と体が動くよ」
自然にか……ピンとこないなぁ。
「じゃあ、実戦でしか体感できないってことですね?」
「うん……そうなるね。ごめん。本来なら二〜三日で教えないといけないのに一時間って時間しかなくて……あの時最低でも三時間って言えばよかったね」
「あ、いえ……きっと無駄だったと思います。特にあの関西弁の男のひとは許してないんじゃないかなと」
「そうだね……ありがとう。凪紗ちゃんホントごめん」
「気にしないでください」
うん、そうだ。あの時たとえ『三時間後』って提案しても、あの関西弁の男のひとはきっと許さないだろう。『三時間? 長いわボケ!』って感じで……だから刹那くん。『一時間』って判断は間違ってないよ。私のために勝ち取ってくれた一時間。感謝してます。
「刹那くん、次はどうします?」
「あ、ごめんそうだね。じゃあ『リンク』の説明するね。ステータスを開いてみて」
「はい」
すこし落ち込み気味な刹那くん。ホント気にしないでいいのに……
続く。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
拙くてつまらない作品だと思いますが最後まで読んでいただき本当にありがとうございます。
第四話ですが、まだ少ししか執筆しておりません。第四話の完成が遅くなると思いますが、完成して投稿したら活動報告にて報告させていただきます。
それでは、失礼します。