登校中
※BL路線でいくわけではありません
家を出ると温かい風が俺の髪を撫でた。天気キャスターも「今週は比較的暖かく過ごしやすい日が続くでしょう」とか言ってたから今週はずっとこんな感じだろう。
俺は来たる夏に期待を寄せて通い慣れた道を行く。
「おーい!春人〜!」
急に名前を呼ばれて後ろを振り向くと、見覚えのある二人の男子生徒が歩いているのが見えた。
お願いだから、人通りの多い往来で大声を出して俺の名前を呼ばないでくれ……。恥ずかしい。
俺は目立たないように小さく手をあげて応える。
背の高いスポーツ刈りの方が工藤秀介。秀介はサッカー部のエースストライカーだ。しかも学校の成績も良い、文武両道である。そして、ノリもいい。
一方、線が細く、一見女子に間違いそうなのが内城奏。奏は病弱で、すぐ体調を崩してしまう。
ちなみに守ってあげたい男の子No.1だ。
俺はこの対照的な二人と一緒に行動することが多い。
要するに友達である。
「おはよう、秀介、奏」
俺は二人が近づいてきたのを確認して口を開いた。
「おいっす」
「おはよう、春人。」
やっと二人が追いついてきて俺の両端に並ぶ。
「奏。体はもう大丈夫なのか?」
昨日奏が学校を休んでいたことを思い出し、尋ねる。
「うん。もともとたいしたことはなかったから。」
俺は「そうか、良かった」とだけ呟いて、さっきから辺りをキョロキョロ見渡している秀介に顔を向ける。
「ところでお前はさっきから何を探しているんだ?」
明らかに挙動不審な秀介に若干の戸惑いを感じながら、ため息混じりに尋ねる。文武両道とか大層な事を言ったがこいつは基本的にバカだ。
「由依ちゃんはどうした? 今日は一緒じゃないのかよ」
随分とまともな事を聞いてきたな。バカと思った事を謝ろうか。
「由依なら図書委員の仕事があるとかで早めに家を出たよ」
「マジか……今日はむさ苦しく男三人で登校かよ。おいっ! 奏‼ お前女装しろ」
前言撤回。
やっぱりこいつはバカだ。
「やだよ。なんで僕が女装なんかしないといけないんだよ。」
いきなりワケの分からない話を振られた奏は極めて冷静に対処した。だが、バカの暴走は止まらない。
「じゃあ俺に女装しろってのか?俺が女装したらガチで引くぜ?」
俺もバカの暴走を止めるべく、物事を客観的に捉えて的確な意見を述べる。
「なんで女装すること前提になってるんだよ。まぁ、確かに奏は女装似合うだろうけど……」
「春人も何を言ってるの⁉」
……どうやら火に油を注いでしまったようだ。
「よかったな春人。これで両手に花だぞ」
「なんだこの混沌は……」
奏は諦めたようにうな垂れた。
これが俺たち三人の関係…?