文化祭
色々と問題はあったが無事に文化祭が始まった。
俺は早速由依のクラスに出かけた。
由依のクラスは劇なので、教室は待機室になっているようだ。
「あの〜由依いる?」
すると俺の前に妖精がやって来た。
というか由依だった。
「…兄さん。あのね、この後すぐに劇があるの。それまで待っててくれる?」
由依が上目遣いで俺を見てくる。
断る道理がない。あったとしても俺がそんなものぶっ壊してやる。
「もちろん。それじゃ由依の劇を見てるから。終わったら二人で文化祭を回ろう」
「うん。それじゃ兄さん。また後で」
俺は手を振って教室を後にする。
そして俺は重大なミスをしたことに気づいた。
「ビデオカメラ持ってきてねぇ…」
今日人生で3番目に大きな後悔をした。
………
…
由依の劇が始まった。
この劇は妖精が出てくる割には結構シビアな内容だった。
妖精界に階級制度があって、この劇の主人公は奴隷の妖精らしい。
由依は裕福な妖精を演じていた。この妖精は元は主人公と同じ奴隷だったが、金持ちの妖精と結婚して成り上がったという設定だった。
そう言えば、親父が由依のお見合いの相手は金持ちだって言ってたな…。
そう思うと、由依の演じている妖精と由依の境遇が重なって不安になった。
やっぱり、俺が間違っているのだろうか?こんな金持ちとのお見合いのチャンスなんて二度と巡ってこないだろう。由依の幸せを考えるなら、別に反対しなくていいんではないか?
由依にいて欲しい、親父の頼みなんか聞きたくない。これは俺のワガママだ。
俺にはそんなワガママを言う資格なんてないのに…
俺の心は急に冷めていった。