再会
「なっ、なんでお前がここにいる!何しにきた!」
「実の親に向かってお前はないだろ?親が子供の様子を見にきたらおかしいのか?」
「だまれ!10年間も俺達を放ったらかしにして、何が親だ!お前に用なんてない!帰れ!」
「俺もお前には用はない。用があるのは由依、お前にだ」
父は俺など眼中にないかのように由依に視線を送る。
どうせ、俺はあんたにとって邪魔者だよ…
「わたし…?」
「由依、こんな奴の話なんか聞かなくていい。早く家に入ろう」
俺は由依の手を引いて家に入ろうとする。だが由依は動こうとしない。
「春人、俺は由依と話しているんだ」
「兄さん、話だけでも聞いてあげようよ。一応はお父さんなんだから」
俺達はこいつに捨てられたのに、由依はそれでもこいつのことを父親だと言うのか…
「くっ…わかったよ。由依がそういうなら…。おい、親父。さっさと用件を言え」
「やれやら、春人にはめっきり嫌われてしまったようだ。それに比べて、由依は優しいな。これなら大丈夫そうだ」
「何が言いたい」
またあの目だ。10年前、俺に向けた汚いモノを見るような目…。
俺はそんな父をありったけの憎しみを込めて睨みつける。
「由依に良い話を持ってきたんだ」
父は下品に笑っている。昔は、気骨があっていつも自信にあふれている人だったのに、今や見る影もない。
絶対にロクなことじゃないな…。
「良い話って何?」
それまで何も言えないでいた由依が興味を持ったのか、一歩前に出る。
父は一瞬いやらしそうな顔をすると、できるだけ優しそうな声で言った。
「お見合いをしないか?」