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「兄さん、そろそろ文化祭だね。兄さんのクラスは何やるの?」
学校からの帰り道、久しぶりにバイトが休みの俺は妹の由依と一緒に下校していた。
「そういやあと一週間後か。俺たちのクラスはお化け屋敷だ。由依のクラスは?」
「私のクラスは劇をやるの。私は妖精の役なんだよ」
「可愛い妖精さんだな」
「も、もう。兄さんってば…」
一週間に開催される文化祭。
俺たちのクラスも少しずつ準備を進めており、生徒達もどこか浮足立っているようだ。
「文化祭一緒に回るか?」
「に、兄さんがいいなら」
「それなら決まりだな!楽しみだな文化祭。」
「うん」
どうやら俺も浮かれているようだ。由依と手を繋いでスキップしたい気分だ。
でもそんな楽しい気持ちが一気に冷めることになる…
「久しぶりだな。春人、由依。元気にしてたか?」
聞き慣れたどこか懐かしい声。
「なっ…お前は⁉」
俺たちの家の前で、一人の男が俺達の帰りを待っていたようだった。
その男の姿を見たとき、俺は目を疑った。
男は痩せこけ、髪もだいぶ白くなっていたが、確かに、10年前俺たちを置いて出ていった父親の姿だった。