異世界転生した元居酒屋の俺、スキル「重量操作」で伝説の料理聖になる
−−異世界転生して3日。
料理に対する熱い想いが伝わり……
俺は酒場の厨房で働らかせてもらってる。
そこで目にしたのは異世界のポプュラーな食材。
……魔獣の鶏肉。
「そいつは煮ても焼いても硬くて臭ぇ」
「兄ちゃん、新メニュー考えてみるか?」
店主のおっさんに言われる。
俺は現代日本の、居酒屋の定番……
『唐揚げ』……の味を思い出していた。
「もっと劇的に美味しく!柔らかくしてみせる!!」
先輩のペリンチョが口を出す。
「いいんスか〜?あんな新人に作らせて」
「自分で新メニュー作るのが、夢なんだとよ」
「期待してるぞっ!」
「知らないっスよ〜!?」
「あっし、味見しないっスよ〜!」
−−1週間後
この唐揚げのせいで……
国王が店に来ることになる、とは知らず。
……前の厨房で自分は、その他大勢だった。
やってやる、俺は意気込む。
まずは……魔獣の鶏肉を一口大に切る。
そして醤油ベースのタレに漬け込む。
俺が異世界転生して手に入れたスキル……
『重量操作』
俺が手をかざすと、タレと肉に均一な重量がかかる。
一瞬で、肉の繊維がほぐれタレが染みこんでいく。
普通なら一晩はかかるところだ。
次に衣をまぶし、熱した油に入れる。
『重量操作』−−二段階比重揚げ!!
まずは低温で一度揚げ。
肉の周りの重量を操作して、圧力をかける。
これによって160℃の低温でありながら、肉の中心まで一気に熱を通す。
旨味を肉の中に完全に閉じ込めるんだっ!
そして仕上げは190℃の高温。
今度は逆に、衣の表面の重量を極限までゼロに近づける!
衣の中の水分だけが重量から開放され、外へ弾け飛んだ。
これにより、究極のサクサク感が生まれる。
「ジュワァァァァッッッ!」
「パチパチパチパチ……!」
異世界の住民が聞いたことない、揚げ音が響き渡る。
同時に香ばしい醤油とニンニクの香りが店全体に広がった。
「お、おい……なんだこの暴力的に美味そうな匂いは……」
店主がゴクリと喉を鳴らす。
黄金色に輝く、揚げたての唐揚げを出す。
「熱いうちに食ってみてよ」
店主が口に入れる。
−−サクゥッッッ!!!
「―――!?な、なんだこの食感は!!」
圧倒的なサクサク感。
次の瞬間。
−−ジュワァッッッ!!!
中から溢れ出した、濃厚な肉汁。
「う、美味すぎるぅぅぅー!!」
「コレがあの硬い魔獣の鶏肉か!?」
「信じられないくらいジューシーで柔らかい!」
店主は唐揚げを貪り食い、酒をあおった。
「美味いぃぃっ、最高だ〜っ!!」
思わずペリンチョも前に出る。
「あっしも、食いたいっス!」
カリッッッ、フワァッ、ジュワ――――ッッ!
「やばぁぁぁ――――っ!!う、旨味の暴力っっ、ス」
「あっしを、あっしを弟子にして下さいっっ、ス」
◇◇◇◇◇◇◇◇
正体不明の激ウマ肉料理が売り出された……
と言う噂は、またたく間に街中に広がった。
連日の大行列、店は朝から晩まで超満員。
そしてある日−−
店の前に豪華な馬車が止まった。
「こ、国王陛下だ!」
店内が壮絶とする。
護衛騎士達が道をあけ、その中央を国王が歩いてきた。
「噂の料理を食べに来た」
俺は揚げたての唐揚げを差し出した。
国王が一口食べる。
サクゥ、ジュワァ
……動きがピタリと止まる。
「こ、この食感は……!?」
「そして、なんとゆう旨味……!!」
そして食べ終えた国王が、真剣な表情で言う。
「余は今まで、世界中の宮廷料理を食べてきた……」
「だが、これほどの至高の料理に出会ったことがない!」
立ち上がり、こっちを見る。
「私の専属の料理長になってくれぬか!!」
店主が目を見開く、ペリンチョ、周囲の客も息を呑む。
……だが俺は首を横に振った。
「ここで皆んなが美味いって、笑ってくれるのが好きなんです」
国王は少し驚き、そして大きく笑った。
「なるほど、ならば無理には誘うまい」
その後この唐揚げは−−
『国賓をもてなす最高峰の国家料理』に指定され、俺は一介の料理人でありながら国を揺るがす、「伝説の料理聖」として歴史に名を刻む事になるのだった−−
−−俺の異世界料理『唐揚げ』
そして夢はまだ始まったばかり−−




