追放された蘇生師と聖女は幸せですか?
日記形式で物語は進みます。
そして、聖女は結構な頻度で死んでいます。
たぶん、静かで、えげつない“ざまぁ”です。
「役立たずのお前たちを国は管理せん。今すぐに出ていけ」
国王の宣言とともに、蘇生師ノクトと、聖女ソレアは追放された。
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【ノクトの日記】
7の月
聖女ソレア経過報告を行った。
本日、ソレアに三回目の蘇生を実施。
身体的、精神的変化に目立った変化なし。
国のために、前線に送り出されることに疑問を感じる。
【ソレアの日記】
7の月
身体が痛いよ。
心が痛いよ。苦しいよ。
兵士や国民を守るためだもんね。頑張らなきゃ。私にしか出来ないことだもん。
三回目の蘇生から目覚めると、蘇生師のノクト様が苦しそうに笑ってたな。
なぜ?
彼に心から笑って欲しいと思っちゃった。
彼のこと、目で追っちゃう。
だって、かっこいいんですもの。
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【ノクトの日記】
九の月
五回目の蘇生を実施。
なぜ、彼女を捨て駒のように使う。
彼女は、それでも「大丈夫」と笑う。
身体的には変化がないように見えるが、力が弱くなっている。
そのせいで、蘇生をする頻度や期間が短くなっている。
国は聖女を使い潰す気か。
聖女がいないと国が滅びるというのに……。
自分の蘇生能力さえ、なければ。
自分の存在と能力が憎い。
それでも、彼女を抱きしめたい。
傍にいたい。
ただ自分のために、蘇生をしてしまう。
こんな俺を許してくれ。
【ソレアの日記】
九の月。
今日もノクト様とお散歩をしました。
穏やかに笑う彼が好き。
彼のいる、この国を守りたい。
でも、結界も治癒の力も、祈りも弱くなってる気がする。
力の回復も遅くて、間に合わない。
こんなにすぐに死んじゃうなんて。
ノクト様がすぐに蘇生してくれるからって、ちゃんと自分も守れなきゃだめね。
でも、目覚めた時に彼のきれいな顔を見れるのが、ちょっと幸せだったりして……。
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【ノクトの日記】
十の月
戦なし。
彼女が倒れることもなく平穏だ。
町への訪問も彼女は笑顔でこなしている。
蘇生師は騎士ではないから、ずっと傍にはいられない。
蘇生後は、傍にいられるのに。
護衛騎士が羨ましい。
そして、彼女をすぐに死なせる護衛騎士が憎い。
俺がいるからと、役目を果たさずに彼女を放置する。
彼女を守りたい。
こんなにも愛しているのに。
傍に居られるのは、死んだ時だなんて、あんまりだ。
俺はただ、花を摘んで笑う彼女が居ればいい。
蘇生なんて特殊能力。
要らない。
【ソレアの日記】
十の月
ノクト様に最近全然会ってない。
でも、ノクト様、つまづいて転びそうになってた!
慌てて周りをきょろきょろして、誰にも見られてないか、確認してたの。
ノクト様って可愛い!
ノクト様に会いに行こうとしても、騎士たちが止めるの。
ほんと、嫌になっちゃう。
何かあれば、一目散に逃げるのにさ。
ノクト様なら、置いていかずに傍にいてくれる気がする。
*****
【ノクトの日記】
十一の月。
ふざけるな。
今月は二回も蘇生をしている。
もう七回目だぞ。
彼女の力は弱くなった。
それでも、目覚めると俺の頬に手を伸ばして微笑んでくれる。
このまま、閉じ込めてしまえば、彼女は死ぬことはないのか。
震える彼女に、毛布を追加する。
もう、前線に立たせるのはやめてくれ。
次は、蘇生をやめて国を出ようか。
ーーー
ノクトは、日記を書き終えると、大きくため息をついた。
数ヶ月前に、彼女から貰った白い花を眺める。
枯れないよう、蘇生術を繰り返しかけていた。
生きているはずの花は、最初の瑞々しさも可憐さも、失っているように見えた。
【ソレアの日記】
十一の月。
目覚めるとノクト様の顔がある。
苦しそうで、安心したような、複雑な顔をしている。
あぁ、私、この人が好きだわ。
彼の傍にいたい。
死にたくない。
彼に、こんな表情をさせたくない。
だけど、力が弱くなっている。
祈りも辛い。
ノクト様、ちょっと震えただけなのに何枚も毛布をかけてくる。
それよりも、抱きしめて欲しいな。
こんなこと、思ったら駄目かしら?
ーーー
ソレアは、ベッドに横たわりながら扉を見つめた。
今日もノクトが様子を見に来てくれることを期待して。
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【ノクトの日記】
十二の月。
八回目の蘇生実施。
もう、何も感じない。
もう蘇生は出来ない。
【ソレアの日記】
十二の月。
花を摘むのも辛い。
花は摘んだら生きられない。
ノクト様、傍にいて。
もう、私の力は残っていない。
*****
「追放だ」
国王の宣言に、ノクトは膝をついて首を垂れた。
その様子に国王は、満足げに頷く。
「蘇生師が、蘇生をせんというのなら国には必要ない」
ノクトは、頭を下げたまま緩やかに笑う。
「聖女ソレアよ。これまで国を守ってくれたが、最近の働きは良くない。怠け者の聖女は要らん」
ソレアは、頭を下げずに冷めた目を国王に向ける。
「聖女を維持するために、蘇生を繰り返されていましたが、今後はどうするおつもりでしょうか」
真っ直ぐに見据える聖女は、可憐さも瑞々しさもない。
それでも意思の強さがあった。
「聖女なんぞ、いなくても、この国は強い!戦争も勝利に終わった。この国の栄光は続くのだ。聖女を必要とする時代は終わったのだ」
うぉー!!
わぁー!!
国王の高らかな宣言に、周りの騎士、貴族たちは盛り上がる。
『聖女がいなければ、国は滅びる』
先人たちの教訓を国は忘れてしまった。
ソレアは、ノクトの手を引くと、そのまま城から出ていく。
「ノクト様、私と一緒に過ごしてくれますか?」
「ソレア……愛している。ずっとずっと愛していた」
ノクトは、ソレアを抱きしめた。
「ノクト様……。私もお慕いしていました。やっと二人になれましたね」
二人は、隣国の森の中で生活を始めた。
ずっと二人きり。
何年たっても二人きりで過ごした。
【ノクトの日記】
五の月
ソレアは俺だけを、見ていてくれればいい。
この愛はずっと続くのだから
【ソレアの日記】
五の月
ノクト様さえ、いればいい。
この愛はずっと続くのだから
【新聞】
隣国は聖女を失い、出生率がゼロとなった。
子どもの誘拐が多発している。
国境を封鎖せよ。
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「ソレア、月がきれいだよ」
「ノクト様、本当にきれいですね」
「ソレア、幸せかい?」
「ノクト様がいれば、幸せです」
二人は子どもがいなくなった夜空を見つめて、静かに微笑んだ。
ちょっとダークなハッピーエンドに挑戦してみました。
ソレアは、ノクトに傍に居てもらうために、死を受け入れていた節があります。
死んで蘇生されるたび、二人は何かが壊れていきました。




