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追放された蘇生師と聖女は幸せですか?

作者: 小原みん
掲載日:2026/05/17

日記形式で物語は進みます。

そして、聖女は結構な頻度で死んでいます。

たぶん、静かで、えげつない“ざまぁ”です。


「役立たずのお前たちを国は管理せん。今すぐに出ていけ」


国王の宣言とともに、蘇生師ノクトと、聖女ソレアは追放された。


*****


【ノクトの日記】


7の月

聖女ソレア経過報告を行った。


本日、ソレアに三回目の蘇生を実施。

身体的、精神的変化に目立った変化なし。


国のために、前線に送り出されることに疑問を感じる。


【ソレアの日記】


7の月


身体が痛いよ。

心が痛いよ。苦しいよ。

兵士や国民を守るためだもんね。頑張らなきゃ。私にしか出来ないことだもん。


三回目の蘇生から目覚めると、蘇生師のノクト様が苦しそうに笑ってたな。

なぜ?

彼に心から笑って欲しいと思っちゃった。


彼のこと、目で追っちゃう。

だって、かっこいいんですもの。



*****



【ノクトの日記】


九の月


五回目の蘇生を実施。


なぜ、彼女を捨て駒のように使う。

彼女は、それでも「大丈夫」と笑う。


身体的には変化がないように見えるが、力が弱くなっている。

そのせいで、蘇生をする頻度や期間が短くなっている。


国は聖女を使い潰す気か。

聖女がいないと国が滅びるというのに……。


自分の蘇生能力さえ、なければ。

自分の存在と能力が憎い。

それでも、彼女を抱きしめたい。

傍にいたい。


ただ自分のために、蘇生をしてしまう。

こんな俺を許してくれ。


【ソレアの日記】


九の月。

今日もノクト様とお散歩をしました。


穏やかに笑う彼が好き。

彼のいる、この国を守りたい。


でも、結界も治癒の力も、祈りも弱くなってる気がする。


力の回復も遅くて、間に合わない。

こんなにすぐに死んじゃうなんて。


ノクト様がすぐに蘇生してくれるからって、ちゃんと自分も守れなきゃだめね。


でも、目覚めた時に彼のきれいな顔を見れるのが、ちょっと幸せだったりして……。



*****


【ノクトの日記】


十の月


戦なし。

彼女が倒れることもなく平穏だ。


町への訪問も彼女は笑顔でこなしている。

蘇生師は騎士ではないから、ずっと傍にはいられない。


蘇生後は、傍にいられるのに。

護衛騎士が羨ましい。

そして、彼女をすぐに死なせる護衛騎士が憎い。


俺がいるからと、役目を果たさずに彼女を放置する。


彼女を守りたい。

こんなにも愛しているのに。

傍に居られるのは、死んだ時だなんて、あんまりだ。


俺はただ、花を摘んで笑う彼女が居ればいい。

蘇生なんて特殊能力。

要らない。


【ソレアの日記】


十の月


ノクト様に最近全然会ってない。


でも、ノクト様、つまづいて転びそうになってた!

慌てて周りをきょろきょろして、誰にも見られてないか、確認してたの。

ノクト様って可愛い!


ノクト様に会いに行こうとしても、騎士たちが止めるの。

ほんと、嫌になっちゃう。

何かあれば、一目散に逃げるのにさ。


ノクト様なら、置いていかずに傍にいてくれる気がする。



*****


【ノクトの日記】


十一の月。


ふざけるな。

今月は二回も蘇生をしている。


もう七回目だぞ。

彼女の力は弱くなった。


それでも、目覚めると俺の頬に手を伸ばして微笑んでくれる。


このまま、閉じ込めてしまえば、彼女は死ぬことはないのか。


震える彼女に、毛布を追加する。


もう、前線に立たせるのはやめてくれ。

次は、蘇生をやめて国を出ようか。


ーーー


ノクトは、日記を書き終えると、大きくため息をついた。


数ヶ月前に、彼女から貰った白い花を眺める。


枯れないよう、蘇生術を繰り返しかけていた。

生きているはずの花は、最初の瑞々しさも可憐さも、失っているように見えた。


【ソレアの日記】


十一の月。


目覚めるとノクト様の顔がある。


苦しそうで、安心したような、複雑な顔をしている。


あぁ、私、この人が好きだわ。

彼の傍にいたい。

死にたくない。

彼に、こんな表情をさせたくない。


だけど、力が弱くなっている。

祈りも辛い。


ノクト様、ちょっと震えただけなのに何枚も毛布をかけてくる。


それよりも、抱きしめて欲しいな。

こんなこと、思ったら駄目かしら?


ーーー


ソレアは、ベッドに横たわりながら扉を見つめた。

今日もノクトが様子を見に来てくれることを期待して。



*****


【ノクトの日記】


十二の月。


八回目の蘇生実施。

もう、何も感じない。


もう蘇生は出来ない。


【ソレアの日記】


十二の月。


花を摘むのも辛い。

花は摘んだら生きられない。


ノクト様、傍にいて。

もう、私の力は残っていない。



*****


「追放だ」


国王の宣言に、ノクトは膝をついて首を垂れた。


その様子に国王は、満足げに頷く。


「蘇生師が、蘇生をせんというのなら国には必要ない」


ノクトは、頭を下げたまま緩やかに笑う。


「聖女ソレアよ。これまで国を守ってくれたが、最近の働きは良くない。怠け者の聖女は要らん」


ソレアは、頭を下げずに冷めた目を国王に向ける。


「聖女を維持するために、蘇生を繰り返されていましたが、今後はどうするおつもりでしょうか」


真っ直ぐに見据える聖女は、可憐さも瑞々しさもない。

それでも意思の強さがあった。


「聖女なんぞ、いなくても、この国は強い!戦争も勝利に終わった。この国の栄光は続くのだ。聖女を必要とする時代は終わったのだ」


うぉー!!

わぁー!!


国王の高らかな宣言に、周りの騎士、貴族たちは盛り上がる。


『聖女がいなければ、国は滅びる』


先人たちの教訓を国は忘れてしまった。


ソレアは、ノクトの手を引くと、そのまま城から出ていく。


「ノクト様、私と一緒に過ごしてくれますか?」


「ソレア……愛している。ずっとずっと愛していた」


ノクトは、ソレアを抱きしめた。


「ノクト様……。私もお慕いしていました。やっと二人になれましたね」


二人は、隣国の森の中で生活を始めた。


ずっと二人きり。

何年たっても二人きりで過ごした。



【ノクトの日記】


五の月


ソレアは俺だけを、見ていてくれればいい。

この愛はずっと続くのだから



【ソレアの日記】


五の月


ノクト様さえ、いればいい。

この愛はずっと続くのだから



【新聞】


隣国は聖女を失い、出生率がゼロとなった。

子どもの誘拐が多発している。


国境を封鎖せよ。



ーーーー


「ソレア、月がきれいだよ」


「ノクト様、本当にきれいですね」


「ソレア、幸せかい?」


「ノクト様がいれば、幸せです」


二人は子どもがいなくなった夜空を見つめて、静かに微笑んだ。


ちょっとダークなハッピーエンドに挑戦してみました。


ソレアは、ノクトに傍に居てもらうために、死を受け入れていた節があります。

死んで蘇生されるたび、二人は何かが壊れていきました。

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― 新着の感想 ―
あれかな、聖女を大事にしない国はもう続かなくて良いだろっていう思し召しかな。
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