表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イブキの鍼灸院  作者: ヨモギ・シン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/1

プロローグ

 杉尾(すぎお)バス停の裏手には、色褪せた鳥居がある。


 鳥居の先には小高い山があり、その山頂には小さな社が建っている。

 いつからそこにあるのか分からない。地元の人たちも、そこにあるぐらいにしか認識していない。


 そんな鳥居だが、私は毎日のように通っている。


 朝、一時間に一本の路線バスに乗る。都市部から離れるこの路線は、この時間帯になると乗客はほとんどいない。そのため、車内は静かで眠たくなる。

 眠気に抗い、時には負けたりしながら三十分ほど揺られ、杉尾(すぎお)バス停で降りる。通学途中の学生に「おはよう」と挨拶するのがいつもの習慣だ。


 バス停の裏へ回り、鳥居の前で立ち止まる。

 普通にくぐれば、ただ山を登るだけだ。けれど、白い狐が描かれた御守りを持って手を合わせてからくぐると、景色は一変する。

 周囲に霧が立ち込め、空気がひんやりと変わる。そして鳥居の先に、木々が囲まれた参道が、ゆっくりと現れていく。

 参道を進んでいくと、古い家屋が見えてくる。



――伊吹(いぶき)はりきゅう院。



 ここが私の職場である。


 中に入り、仕事着のスクラブに着替える。胸元に『杉山(すぎやま)五華(いつか)』と彫られた名札をつけると、自然と背筋が伸び、気持ちが切り替わる。

 院長の伊吹(いぶき)東弥(とうや)先生と朝礼をし、診療の準備を整える。少しだけ特別な患者たちの来院を待つ。


 高天原に住む神々は、人間の幸福を糧として、この世界を保っているという。幸福が削がれている人がいると、神々は白い狐を使いに出す。そしてその人を高天原へ導き、さまざまな方法で幸福を高める。伊吹(いぶき)はりきゅう院では、身体の不調によって削がれた幸福を、鍼灸(しんきゅう)というかたちで高めている。


 そう院長から聞いているが、難しいことは分からない。私はただ、目の前の患者さんと向き合うことに専念している。


 今日は、どんな人が白い狐に導かれて、来院してくるのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ