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1 異世界人としての勤め

『ようやく見えてきたか』


歩き始めてどのくらいか、水もろくに飲めないからかなり疲れた

だが着いた、あそこが目的の黒龍の死骸だ


それはまるで丘のように見える、だがよく見ると今なお新鮮さを保っているように見える肉と骨を持つ一匹の龍が居るのが分かる

まるで無造作に剥ぎ取ったかのようなボロボロの鱗、一部切り取られた肉、全て抜かれた牙、切り取られた角、未だ血を流し続ける二対の眼窩、だがなお龍はその身体を保ち、よこたわっている


『龍はその身失ったとしても決して死ぬことはない、か』


老人の言葉はやっぱり基本的に信じた方がいいようだ

あの時はそんなわけないと思ったが、こうなるとも思わなかった


その地の名は<呪いの砂漠>もとは<生けるものの楽園>とまで言われた土地のなれの果てである


こうなったのは俺のせいだが、なんともまぁひどいものだ。

だからかこそ俺の手で終わらせよう


近づくにつれてまるで拒むかのように黒く濁った霧が行く手を阻んでいく


俺を拒む、当然の事だが、そういうわけにもいかないんでな


『本当の意味で死にたくないのは龍であろうと同じか、だけどもうおまえは死んでいる。どれだけ拒もうともはや瘴気を産み出し続けるだけだ』

『おまえがそれを望んでいようといまいと俺は、今から、正しく、おまえの魂を輪廻の輪に返そう』

『そうすることでこの砂漠は少しづつ元の形に帰って行く、そうすることでここは誰しもが生き残るための大地になる。そうしておまえが守り、俺が壊して血に染めた、この大地を未来に繋げたいんだ』

『だから頼む、貴方を殺させてくれ』


骸は言葉を話さない、死んだその肉体は生きるために全てを恨んだ

だからこの地はこうなった

だが、たとえどれだけ瞳を曇らせようと、死にはて思うこともできなかろうと、積み重ねた思い出は、願いは、ここに答えた


瘴気の霧が晴れていく……どうやら俺に殺されてくれるらしい


『心より感謝と謝罪をしよう、偉大なる黒龍』

『《今ここに願いを託そう、偉大なる黒龍が願った生けるものの楽園を。今ここに呪いを解こう、我欲に満ちた勇者ならざるものの悪意を。世界に神は居ない、故に私は今叶えよう、届かなったその夢を、汚したこの身を持って悪夢とすることで。貴方の来世に幸あれ、貴方に希望あれ、貴方の行く先に祝いこそがあれ。》』


一言目で一振の骨剣を手にした

二言目で首に膝をついた

三言目で骨剣を首に向けた

そして静かに首を貫いた


まるで夢かのように龍の肉は光の粒子となり、消えていった


『その剣の銘はカサブランカ、俺の知る花の名で意味は祝福、高貴、威厳、貴方に似合う言葉だろうか?』


この剣を墓とすることでこの地の瘴気も収まるだろう、そして何十年後には豊かな土地になってくれるだろう

それにあの剣はこの地の影響で凶暴化した魔物達の残った骨からできている、彼らすべての墓標であるかぎりこの地は大丈夫だろう


だけど、決して叶わないけど、できたなら


『貴方の名前を知りたかった』



後悔も、他の全ても心にしまって、まだ残る勇者の残した呪いを解くための旅にまた出る

まずはここを生きて脱出すること、いくら瘴気の元が消えたと言ってもそう簡単に瘴気は無くならない

そしておかした罪もまた消えない


『次の罪は何だろうな?知りたくもない』


だけど知らないわけにはいかないんだ

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