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3.妖 —焔—

今回は、悠斗目線です


前回の投稿からかなり時間が経ってしまっているので、前回の投稿から読むのがおすすめです!

 


 ほんの出来心だった。


 聖菜と帰ってる途中、聖菜が変な道があると言った。驚きと恐怖の表情で。

 普段は冷静沈着で、そういった表情を浮かべている聖菜を見るのは初めてだった。


 いわゆる、一目惚れだったのだろう。

 初めて聖菜を見たとき、あぁ、俺はこの人と…、と思った。


 だからというべきか、いろんな聖菜の表情を見てみたい、そう思ったら思わず、肝試しと称してせっかくなら行ってみよう、と言ってしまった。


 文句を言いながらも、ついてくる聖菜の態度が変わったのは、鳥居のようなものを過ぎたあたりだった。


 まるで、何かに引き寄せられているようで、俺がもう帰ろうと言っても、聞こえて無いようで、歩みを止めなかった。


 聖菜に呼び掛けていると、不思議なものを一瞬だけ見た。

 ひとりの着物を着た女性が、桜の散っている神社——それもまだ新しい——に近づいている。


 それを見たとたん、なんだか、懐かしい気持ちになり、聖菜を止めてはいけないと思った。


 聖菜が石に触れたとたん、聖菜の動きが止まった。

 まるで、石に何かを吹き込んでいるような感じだった。


 しばらくすると、石に何もかも吸い取られたように聖菜の体が力なく、倒れ始めた。

 慌てて駆け寄り、何とか、頭を打つ前に受け止めることができた。

 しかし、俺のせいでこんな目にあったから、嫌われてしまう。今更ながら、そう思った。


 そんなことを思ったのも、目の前のものから意識をそらしたいのだと思った。


「おい、見えているのに、何故無視をする。」


 目の前のなにかから、声が出た。

 それでも関わってはいけないような気がし、無視をする。

 これは夢なのか、そう思っても、聖菜をこのまま放ってはおけない。

 とにかく聖菜を日陰に移動させようと、聖菜をそっと持ち上げると、


「その女子(おなご)は、ここにおいておけ。“命の灯”に当たっていた方が、妖力が満ちるのが早い。」


 と、意味不明なことを言われる。

 どうしたものかと悩んでいると、腕の中の聖菜が身じろぎするのを感じた。

 目の前のものが言っているのが本当かどうかは定かではないが、思わず、そいつを見てしまう。


「やっぱり見えてるじゃないか。なぜ無視をする。」


「無視をしたのは、謝る。…ごめん。

 でも、お前はなんだ。聖菜に何をした。聖菜はなぜ……」


 ——倒れた。そう聞こうとすると、目の前のものが、


「騒ぐんじゃない。今は、静かにしてろ。

 ほら、その女子の表情を見ろ。きっと、いい夢でも見ているのだろう…。」


 と、さっきまでとは打って変わり、優しい言い方で、俺の言葉を止めた。

 確かに、聖菜の表情は穏やかで、思わず、見とれてしまった。


「その女子に惚れているのか?」


 俺の様子に気づいたのだろう、あれが話しかけてきた。

 どう返事をするか迷っていると、聖菜の表情が先程までとは打って変わり、苦し気で、そして、悲しげな表情になった。


「聖菜っ!大丈夫か!?聖菜っ!」


 なぜかその顔を見ている俺も苦しく、そして、悲しくなり、こんな表情をしている聖菜の顔は見たくなく、呼びかけた。


「——トマ…。」


 うめき声をあげながら、聖菜が目を開けたと思ったら、弱々しい声で何かをつぶやいた。

 何を言いたかったのかはわからないが、意識が戻ったことに安心した。


「俺だ、悠斗だよ。大丈夫か?」


「ユウト…。」


 まるで、初めてこの名を聞いたかのようにつぶやいたと思ったら、あたりを見渡し、例のあれに目を止めた。


「なんで、(ほむら)がここにいるの?」


 聖菜がそうつぶやいたとたん、あいつが驚いた表情になる。


「聖菜!大丈夫か?自分の名前分かるか?」


 色々と心配になり、もう一度、聖菜に話しかける。


 しばらく、夢現な表情をしていたが、しばらく経つと、何もかも思い出した顔になり、


「悠斗!私、どうしちゃったの?

 私、あの石に触って、そしたら、変な、夢見て……」


 最後は、力なく声を発し、例のあれを見た。


「その夢の中に、あなたが、いた……。」


「お前がどんな夢を見ていたのかは、知らない。でも、名はあっている。

 私の名は、焔だ。」


 例のもの——焔が、不思議そうな顔で名を告げた。



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