第8話
こんな生徒会があったら面白いだろうな。
冬丸が教室の中を見ると冬子が無表情で背筋を伸ばし、前を向いて座っていた。冬丸が中に入り彼女の前に来ると机に紙とペンが置かれていた。
冬丸「会長なにしてんの?」
冬子「受付です」
冬丸「受付? 彼氏でも募集中してんのか?」
冬子「ギロっ」
冬丸「冗談だよハハハ……ギャーっ!!」
バイオレンス化した冬子はしょうもない一言を放った冬丸にドーンと強烈な一撃を与えた。その衝撃で冬丸は床に寝転がった状態でピクピクしていた。
冬子「昨日、生徒会の役員を募集をするって決めたでしょ。もう忘れたんですか?」
冬丸「いっ今……思い出した……」
冬子「次バカなこと言ったらぶっ殺しますのでよろしくお願いしまーす」
冬子の発言後、元通りになった冬丸は二度と言うまいと心に誓った。しばらくして。それは冬丸が誓ったことを忘れた頃だった。誰も来ないのか受付をしていた冬子がウトウトし始めた。そんな彼女の目を覚ましてやろうと冬丸は目の前に来ては隠れるようにしゃがんだ。そして、冬丸は冬子を覗き込むように目を合わして声をかけた。
冬丸「寝顔カワイイね」
冬子「うわぁびっくりした~!」
冬丸「起きた起きた」
冬子「そこで何しているんですか!」
冬丸「寝顔がカワイイなぁって」
冬子「あっありがとうございます」
冬丸「それにしても暇だねぇ」
冬子「何もすることないなら受付変わってください」
冬丸「いいよ」
冬子「今日は随分と素直ですね」
冬丸「だってやることないだもん。生徒会って暇だねぇ」
冬子「それはウチだけかと」
冬丸「マジ?」
という訳で冬丸と受付を交代した冬子は一息つこうと水筒を手に取った。ふと冬丸をみると姿勢がいい。フニャっとだらけているかと思っていた冬子は彼のその姿勢に見とれていた。
冬子「姿勢いいですね」
冬丸「そう? 両親がこういうことに厳しくてさ」
冬子「先輩の性格から想像ができない」
冬丸「そうかなハハハ」
それからしばらくの時が流れた。誰も生徒会に入会しようとする者は現れない。
冬丸「誰も来ないね」
冬子「来ないですね」
冬丸「そうだ!」
冬子「どうしたんですか?」
冬丸「とある放課後のこと」
冬子「えっなになに?」
冬丸が「放課後に鳴り響くピアノ」を語り始めた。これは最近起きた七不思議としてミレニアム高校では有名だ。
冬子「それって放課後のピアノですよね」
冬丸「えっ知ってんの?」
冬子「誰でも知ってますよ」
冬丸「な~んだ」
冬子「でも不思議ですよね。誰もいないはずの音楽室からピアノが聞こえるなんて」
冬丸「だよな。会ってみたいなぁオバケに」
冬子「なんでオバケ?」
冬丸「弾いてるのピアノ好きのオバケだろ」
冬子「あたしはイケメンがいいです」
冬丸「イケメン? 俺みたいな?」
と冬丸がキリっとイケメン顔をした。だが冬子には届かず。彼女は無表情になった。
冬丸「なに? どうしたの?」
冬子「別に気にしないでください」
冬丸「そっかそっか。会長はオバケがコワい。カワイイとこあんじゃん」
冬子「べっ別にコワくなんかありません」
冬丸「うらめしや~」
冬丸が冬子に向けてオバケをマネた。それには冬子もノリノリで「きゃー」と声を出した。と次の瞬間、御茶野が何かあったのではないかと大慌てで生徒会室に入ってきた。
御茶野「どうした! ……ってお前ら何やってんだ?」
ふざける彼らを見て御茶野が眉間にシワを寄せていた。冬丸と冬子は苦笑いをした後、静かに元の位置に戻った。
御茶野「全然だな」
冬丸「人気ないですね」
冬子「そういうこと言わない」
御茶野「そうだぞ春夏秋。お前は生徒会長なんだからな」
冬丸「抽選で選ばれましたけどね」
御茶野「それを言うんじゃない」
彼らはどうすれば会員が集まるのか話し合った。その結果、ビラ配りをすれば効果があるのではないかということになる。それはみんなが登校中に行うという。
御茶野「という訳でよろしく!」
冬丸「先生もよろしくお願いします」
御茶野「俺は参加しない」
冬丸「どうして?」
御茶野「2人でやってくれ」
冬子「先輩がんばりましょう!」
冬丸「え~」
冬子「がんばりましょうね」
冬子のイラついた表情に冬丸は「はい」と引き気味に答えた。今日の生徒会が終わりを迎えたその時。ドドドドドっと誰かが迫り来るような音が聞こえてきた。冬丸たちは何事かと扉に注目する。
楽子「失礼します!」
息を切らして扉を開けたのは音楽教員の音楽子だ。御茶野は何をそんなに急いでいるのか尋ねた。
楽子「音楽室からピアノが聞こえるんです!」
御茶野「なんだって!?」
冬子「!!」
楽子「誰か音楽室の戸締りをお願い!」
楽子の願いに御茶野は何の迷いもなく冬丸を指名した。
冬丸「先生コワいんだ。顔に似合わず」
御茶野「先生はこれからやることがある!」
冬丸「そんなこと言ってぇ~」
と冬丸が口にした直後のこと。御茶野が教卓から瞬間移動でもしたかのように冬丸の目の前に来た。そして御茶野はコワい顔を冬丸に近づけて言った。
御茶野「や・る・こ・と・が・あ・る」
冬丸「がっ頑張ってください……てか顔近い!」
御茶野が冬丸から離れようとした時、何かを察知した冬子が「私はこれで」とお辞儀をしてスーッと教室を出た。という訳で冬丸が1人で音楽室の戸締りをしに行くことになった。音楽室が近づくにつれて楽子の言う通りピアノが聞こえてくる。しかも上手い。冬丸はその場で立ち止まり演奏を聞いていた。
冬丸「ピアノを奏でている人は誰でSHOW!」
冬丸は曲に合わせて口ずさむと足音を立てずにそっと教室の前にきた。このまま中を覗こうとした時、くしゃみが出てしまった。その影響で演奏がピタリと止んだ。冬丸は逃がすものかとバッと扉を開けた。だがそこには誰もいなかった。
冬丸「誰もいない」
中はシーンとしていたのだが冬丸は必ず誰か来ることを信じて出入口でジッと待っていた。しかし、誰も現われる気配はない。冬丸は時計を見た。時間を知るなり早く用事を済ませて帰ろうと教室内の見回りを始めた。少しして冬丸はふとピアノを見た。
冬丸「楽譜そのまんまじゃん」
ピアノに近づいた冬丸は楽譜を手に取った。名前を確認すると秋美と記されていた。冬丸は秋美という人物がどこかにいないか教室を見て回る。
冬丸「いるはずないよな。仕方ない。明日、持ってってやるか」
冬丸はそう言うと楽譜を手に持ちながら戸締りを確認する。と彼が出入口に背を向けた瞬間だ。誰かが猛ダッシュで教室を飛び出した。冬丸は追いかけようと思ったが疲れるからとやめた。後ろ姿から女子と分かりピンときた。
冬丸「放課後のピアノを奏でる犯人は」
施錠を終えた冬丸は鍵を返却する為、職員室を訪れた。楽子が様子を冬丸に聞いた。彼は秋美らしき女子を見たにも関わらず異常はありませんでしたと報告する。そして彼は鍵を渡して帰路についた。それと同じ頃、秋美が音楽室を訪れた。鍵がかけられていることを知るなり落ち込んだ様子で帰って行った。
第9話へづづく




