第7話
第2章が始まりました。
やっぱりララ美は冬丸のことが好きだった。
こんなことをする女子が実際にいたらどうしましょう。
ある日、生徒たちが下校する時間帯に女子生徒・Aが周囲の目を気にすることなく冬丸に愛の告白をした。彼は分かっていたのか緊張する様子を見せず。女子Aの意思を受け入れた。そして冬丸は彼女を抱きしめようと腕を広げた。女子Aは冬丸の胸に飛び込もうとゆっくり駆け出す。冬丸は和らいだ様子でその時を待っていた。とその時だった。直前で彼女は走るのをやめた。一体、どうしたのか。
女子B「はい、カット! オッケー!」
女子A「どうだった?」
女子B「あんたホント演技の天才!」
女子A「ありがとう」
女子Aたちは演劇部の部員だ。今、校庭で自主製作の短編作品を撮影していたのだ。当然のことながら冬丸は演劇部からの要請で出演している。
女子C「あの~」
女子A、女子B「どうしたの?」
女子C「生徒会長が演技を続けていまして……」
女子A「ホントだ。まだ待ってる」
女子B「どうする?」
冬丸は演技終了の合図が聞こえていないのか。目をつむり女子Aが飛び込んでくるのを手を広げてなんのためらいもなく待っていた。彼女たちは誰が声をかけようか相談していた。本当にムギュっとされるのではないかいう不安が彼女たちの中であった。
女子A「あたしが行くの!?」
女子B「当然でしょ」
女子A「待ってよ! ガチでハグされたらどうすんのよ!」
女子C「その時はその時ということで……」
周りの部員も女子Aが声をかけに行くことに賛成している。彼女は嫌な顔をしてしぶしぶ了承した。女子Aがふと冬丸を見た。すると彼に群がるF女3の姿があった。ララ美に至っては超接近している。
女子A「誰?」
女子B「彼女?」
ララ美は冬丸のその姿を不思議そうに眺めていた。両サイドにはリリ子とルル香がいて何をしているんだと彼の頬をツンツンしていた。そんな彼女たちに女子Aが話しかけた。
女子A「あっあの」
ララ美「なに?」
女子A「生徒会長のお知り合いですか?」
ララ美「そうだよ」
女子A「やった! 実は……」
女子Aがララ美たちにことの詳細を伝え、冬丸に話しかけてほしいとお願いした。
ララ美「いいよ」
女子A「ホントですか!」
ララ美「うん」
女子A「お願いします!」
ララ美「は~い!」
ララ美はめったにないこの瞬間に胸がどきどきしていた。彼女は気分を落ち着かせ目を閉じ深呼吸をする。そして冬丸の目の前に立った。リリ子とルル香はこの時のララ美が物凄くうれしそうな感じに見えていた。
リリ子「普通気づくよね」
ルル香「ホントホント。気づかないとかバカじゃねぇの」
リリ子とルル香が冬丸を嘲るとララ美の顔が恐ろしくなった。これを刺激するとヤバいので2人はララ美をおだてた。
リリ子「じょっ冗談だって」
ルル香「そっそうだよ。ほらっ早くやんないと気づかれるよ」
ララ美は改めて気持ちを整えた。さっきと表情を180度変えたララ美は冬丸の肩をトントンと軽くたたいた。それは恋愛ドラマの1シーンのようだ。
女子A「危なかった~」
女子Aは冬丸がララ美を抱きしめた瞬間を目の当たりにした。演劇部員も茫然とそのシーンに見とれていた。ララ美は憧れの冬丸に抱きしめられていると天にも昇る最高の気分だった。そうとは知らず。演技を続けていた冬丸が目を開けた。
冬丸「あれ? なんで?」
ララ美「冬丸様……最高です!!」
冬丸「えっどういうこと?」
ララ美「ずっとこのままでいましょ。ねっ」
冬丸「!?」
どうしてララ美が相手役を演じているのか。冬丸は何か起きるのではないかとララ美に回していた手をゆっくり離した。だが彼女は冬丸の腰に手を当てたまま離さず。困惑した彼は女子Aがどこに行ったのかキョロキョロした。一方のララ美はニタっと冬丸に見とれていた。
女子A「あの2人って付き合ってんのかな?」
女子B「絶対そうだよ~」
演劇部員は一向に終わらない2人のハグを見ながら話していた。彼らの近くにいたリリ子とルル香はいつまで続くのかボーっとその時を待っていた。
冬丸「離してくんない?」
ララ美「まだいいじゃないですか」
冬丸「恥ずかしいでしょ?」
ララ美「全然」
冬丸「俺が恥ずかしいの!」
ララ美「あと1時間いや2時間3時間!」
冬丸「めっ目が……コワい」
ララ美の目がコワくなること約1分。冬子が冬丸のもとへやってきた。
冬丸「会長! 助けて!」
冬子「先輩、終わったらちゃんと来て下さいね」
冬子は演技の練習をしているのだと思ったのか直ぐにその場からいなくなった。冬丸は絶体絶命だとオドオドしている。するとその時、冬丸がララ美から解放された。
ララ美「今何時?」
冬丸「えっ今? くじら!」
ララ美「えっくじら!?」
リリ子「今の時間はねぇ」
今の時間を知ったララ美は忍者のようにリリ子とルル香とともに学校をあとにした。冬丸は何が起きたのかキョトンとしている。
ララ美「めっちゃ癒されたー!!」
ルル香「元気出た?」
ララ美「も~めちゃくちゃ元気になった」
リリ子「そりゃあよかった」
ルル香「生徒会長は大迷惑だけどねぇ」
ララ美「今なんつった?」
ルル香「ううん何も」
冬丸は今日もララ美に何かをされたと愉快に学校を去るF女3を見て微笑んだ。その後、冬丸は片づけをする演劇部の部員に言った。
冬丸「次の撮影はいつかな?」
女子A「終わりました」
冬丸「えっ終わったの?」
女子A「おかげさまでいいの撮れました。ありがとうございました」
冬丸「またいつでもオファー待ってるから。よろしく!」
冬丸がキランと格好良くキメた。だが演劇部員たちには届かず。次のオファーはないとキッパリ言われてしまい冬丸にヒューっと風が吹いた。そんな彼にある人物からプレゼント?が送られた。ある人物。それは帰路についたはずのララ美だった。
ララ美「冬丸様―っ!」
冬丸「なに?」
ララ美「また明日!」
冬丸「おう! じゃあな!」
冬丸が笑顔で手を振った次の瞬間、ララ美が可愛くウィンクをした。と同時に真っピンクなハートが1つ放たれた。それは前回同様、巨大化した。冬丸はまただと余裕の表情を見せては被害が来ぬよう両手でガードした。
冬丸「小さくなった。よかった~」
深呼吸をした冬丸が手を下ろした次の瞬間だ。小さくなったはずのハートが冬丸の手元にゆっくり舞い降りた。
冬丸「ふぇ?」
程よい大きさのハートは冬丸の手の平でドクドクと動いている。彼は奇妙に動くハートに茫然としている。
冬丸「ドクドクが止まった……」
ハートの微動だにしなくなるや否やプシューっと白い煙を出した。それは冬丸の顔を覆った。そしてポンっと破裂した。
冬丸「!!」
冬丸はハートの威力で妙な気分になりながらフラフラっと生徒会室にたどり着いた。教室が近づくにつれて冬丸は何かを思い出そうとした。
冬丸「これから何かあったような……」
結局、冬丸は何も思い出せぬまま生徒会室の扉が開いていたので中を覗き込んだ。
第8話へ続きます
珈琲之助でした。