第54話
冬丸「お弁当ターイム!」
ホームルームが終わって担任が教室を出たのを見計らい冬丸がお弁当を広げた。そして彼は「いただきます」をする。数分後、担任が教室に戻ってくるなり冬丸に施錠をすると言った。
冬丸「(もぐもぐ)」
担任「今すぐ出てって」
冬丸「(もぐもぐ)20分だけ待ってください! (もぐもぐ)」
担任「20分もでしょう」
冬丸「(もぐもぐ)」
担任「今から生徒会でしょう。生徒会室で食べればいいじゃない」
冬丸「(もぐぐぐ)」
担任「春夏秋君」
冬丸「(もぐもぐもぐぐぐぐ)」
担任「春夏秋君!」
冬丸「(もぐぅ……ぐ!?)」
担任「急いで食べるからでしょう」
冬丸「死ぬかと思った」
結局、冬丸は食べ終わることができず。早く残りを済ませたいと教室を出て生徒会室にダッシュした。いつもなら誰もいない生徒会室だが今日に限って灯りが付いていた。中ではミペアの役員数名が校長、副校長、教頭などと会議用テーブルを何台か使用した状態で向い合わせになり会議をしていた。
冬丸「生徒会室到着~!」
誰もいないと思った冬丸はいつも通りのテンションで扉を開けた。その影響で会議が一時中断。皆の熱い視線が冬丸に集中する。まさかの光景に冬丸はポカーンと口を開けてフリーズしてしまった。すぐに気が付いた冬丸は「失礼しました」とお辞儀をして教室を出ようとした。
園子「生徒会長くん」
園子は良いタイミングで現れた冬丸を呼び寄せた。断る訳もいかず。冬丸は颯爽と彼らに近づいた。重々しい雰囲気に流石の冬丸も緊張している。そこへいつもな感じで冬子が現れた。
冬子「おはようございまーす!」
園子「副会長さんもカモーン」
冬子「!?」
校長たちに驚く冬子。そんな彼女も校長に呼ばれて冬丸の隣に緊張した様子で並ぶ。冬子が冬丸にこの状況を尋ねたかった。しかし、小声でも出せる雰囲気ではない。緊張感漂う冬丸と冬子に牙浦というミペアの代表がある質問をした。
牙浦「生徒会役員のお2人にお尋ねします」
その質問は推しショックが始まって1ヶ月と少し。休んでいる生徒が学校に来る為にはどうすればよいかだ。冬子は緊張感から何も思い浮かばず。わかりません。そうハッキリ言ってしまった。一方、冬丸は早くこの場から離れたい一心で頭をフル稼働させて考えている。
冬子「先輩」
冬丸「……」
冬子「みんな待ってますよー」
冬丸「……」
冬子「聞いてんのかコラ」
それから生徒会室が静寂に包まれること約10分。冬丸がピカン!と何かを思いついた。わかりやすい彼の仕草に校長たちはどのような言葉が出るのか注目している。冬子はしょうもないことを言うのではないかと心配していた。
冬丸「放課後も授業をするのでしょうか?」
牙浦「ん? 放課後も授業? はい?」
冬丸「えっと……推しショックで休んでいる生徒が学校に来た場合です」
園子「その予定だけど」
冬丸「その授業にお金かけたらいいと思います」
冬丸の発言に牙浦たちミペアは質問の答えになっていないと指摘した。誰も彼の考えを理解できず。呆れている様子だった。そんな中、園子だけは冬丸考えをもう少し詳しく教えてほしいと言った。
冬丸「えっと……授業日数が足りないと留年……しますよね?」
冬丸の問いに皆が「うん」と頷いた。彼は発言を続けた。その内容は放課後に実施予定の授業いわゆる補講にお金をかけるというものだ。但し、決められた日までに登校した生徒は無料にするという。
冬丸「だって留年するかもしれない! 冬ちゃんならどうする?」
冬子「えっそっそりゃあ……ヤバい! ってなって学校行きます……はい」
冬丸「いついつまでに来たら放課後の授業を無料にする! 冬ちゃんが親だったらどうする?」
冬子「学校に行きなさい! ってなります」
冬丸「でしょー! ぶん殴ってでも学校に行かすでしょ!」
冬子「ぶん殴ってってそんな乱暴な……」
冬丸「俺だったらやるぜ」
冬子「こわっ」
冬丸「そうかなハハハ」
冬子「そうですよハハハ」
冬丸「あ!」
冬子「えっあっヤダ」
場を忘れてついいつも通りな雰囲気で会話をした2人が現実に戻った。そのとき彼らを除く全員が冬丸の提案がうまくいくかどうか話し合っていた。冬丸と冬子は静かに立つこと数十分。結果は実施することで決着がついた。それで上手くいかなければ冬丸と冬子を加えた会議を開くということになった。
冬丸「俺たちも!?」
冬子「えっうそ」
牙浦「なんですか?」
冬子「いや別に……」
冬丸「ははは」
園子「参加してくれてありがとう。もう帰っていいわ」
会議に参加してくれたということで今日の生徒会は終わった。最寄り駅までの通学路を冬丸と冬子が一緒に歩いているときだ。冬丸が会議には絶対に参加したくないと言った。冬子も同感だ。
冬子「提案したことが通るなんて凄いですね」
冬丸「でしょー」
冬子「なんか尊敬しちゃう」
冬丸「えっマジ? やったー!」
冬子「これで成績が良かったらあたし……」
冬丸「いつでもいいぜ」
冬子「成績がよかったらのはなし!」
冬丸「もしエラくなったら冬ちゃんとあんなことやこんなこと……」
冬子「あ~もう~! 変な想像しないで下さい!」
冬丸「ニタ~」
冬子「ばか」
冬丸「あ!」
馬鹿みたいな顔をする冬丸を置いて冬子が先に行こうとしたときだ。冬丸があとで食べようとお弁当を残していたことを思い出した。会議なんかなければ完食できたのにと冬丸はその場で意気消沈した。
冬子「まだ食べてなかったんですか?」
冬丸「最近、なんかお弁当食べる時間がないんだよねぇ」
冬子「かわいそう」
冬丸「よし! 冬ちゃん! 明日から売店のボランティアよろしく!」
冬子「辞めたんじゃないんですか?」
冬丸「それがさぁララ美さんができなさ過ぎて続けることになったの」
冬子「そうなんですね」
冬丸「よろしくね冬ちゃん」
冬子「イヤです」
結局、冬子にフラれた冬丸はお弁当を済ませるのが先だと近くのベンチに座った。冬子は先に帰り1人になった冬丸はゆっくりお弁当を食していく。色々あって疲れているのかぼんやりと食べていた冬丸の前をララ美が通り過ぎようとした。
ララ美「冬丸様じゃん」
冬丸「ん? よう」
ララ美が冬丸の隣に腰掛けた。彼女はまた演劇部に協力していたという。いつものように彼らは楽しく会話をしていた。そのとき冬丸のスマートフォンに母親からメッセージが届いた。
冬丸「帰るのヤダな」
ララ美「どうしたの?」
冬丸「父親が推しショックで学校に行かない妹と喧嘩してる。早く帰ってきてって」
ララ美「ん?」
ララ美のスマートフォンにもメッセージが届いた。その内容は彼女の父親が推しショックで学校に行けていない弟と激しい喧嘩をしている。早く帰ってきて一緒に止めに入ってほしいだった。
ララ美「うちもお母さんから」
冬丸「はぁ」
ララ美「いつまで続くのかな」
冬丸「ほんと」
ララ美「それはそうとどうして今、お弁当を?」
ララ美が冬丸にそう聞いたときだ。伊藤学園の理事長を乗せた高級車が彼らの前で停車した。冬丸とララ美はその車に気づいていない。冬丸がララ美に売店の仕事をして影響でお昼休みが今日もゆっくりできなかったと言った。
理事長「ミレニアム高校の売店担当の職員が未だ復帰せず」
彼女がそう口にすると高級車はミレニアム高校へ向けて発車した。お弁当を食べ終えた冬丸は立って背伸びをした。それから冬丸とララ美は恋人のように帰路についた。




