第53話
ララ美「冬丸様―っ!」
冬丸「おはよう」
ある日、冬丸がのんびり最寄り駅からの通学路を歩いているとララ美に捕まった。彼女はこの間、言っていたことは本当かどうか真相を確かめた。冬丸の答えは予想通りイエスだった。お昼休みを満喫したいという理由にララ美はあ然とした。
ララ美「寂しいな」
冬丸「ぶりっ子風に言っても嫌なものはヤだ」
ララ美「どうしても?」
冬丸「どうしても」
ララ美「フフフ」
冬丸「なんだよ急に」
突然、ララ美が薄気味悪い笑みを見せた。冬丸が彼女から少しだけ離れた瞬間だ。ララ美が冬丸に向かってアノ気を送った。ララ美は久しぶりにアレを送るとだけあって半端ない大きさだ。
ララ美「冬丸様」
冬丸「にゃハ」
ララ美「久しぶりだね」
冬丸「あはっ……はは」
冬丸は久しぶりにララ美による巨大なハートに言葉を失った。徐々にララ美の顔が怖くなっていく。冬丸は顔を引きつりながら思い切って逃げた。そんな彼を逃がしはしない。ララ美が放ったハートはあっという間に冬丸を潰した。
冬丸「はは……は……」
ララ美「サイコー!」
冬丸「なっなんだか……」
ララ美「イエーイ!」
冬丸「なんだか嬉……しい……バタン」
冬丸は久しぶりのハートに喜んだのも束の間。白目を向いて気絶した。そんな彼の側でララ美は喜びの舞を踊っていた。
ムメモ「春夏秋く~ん」
お昼休み。冬丸が久しぶりにゆっくりとお弁当を食べようとした。そのときだ。ムメモたち女子4人に席を包囲された。彼女たちは今すぐ売店を開けるよう彼に要求。冬丸はお弁当を食べながら店員を辞めたことを告白した。
ムメモ「やめた!?」
冬丸「おう」
女子1「うそでしょ!?」
冬丸「ホント」
女子2「売店どうなっちゃうの」
冬丸「知らん」
女子3「やばーい!」
冬丸「ヤバいよね~」
ムメモ「マジでどうなるの?」
冬丸「あとのことはララ美さんに聞いて」
ムメモ「ララ美って春夏秋君といつもイチャイチャしているアノ子?」
冬丸「いつもじゃないけど」
女子1「いつから付き合ってんの?」
女子2「どっちが告白したの?」
女子3「やばーい!」
冬丸は付き合ってはいないとハッキリ言った。そんなことはさておいて、ムメモたちは何か目的があるのか早くしてほしいとしつこい。すると冬丸は「昼休み中だ」と言って動こうとしない。
ムメモ「早く!」
冬丸「ヤダ」
女子1「早くしてよ!」
冬丸「ムリ」
女子2「春夏秋君!」
冬丸「なに?」
女子3「ヤバくない?」
冬丸「全然」
ムメモ「早くしろ!」
冬丸「うるせーなー! 俺を誰だと思ってんだ!
女子1、2、3「なによ!」
冬丸「生徒会会長! 春夏秋冬丸様だあ!! なんか文句あっか!!」
冬丸の激が効いて静かになったのも一瞬だけ。ムメモたちが「知ってらあ!!」と倍返し。冬丸は何も言い返すことができず白旗を上げた。そこへララ美が可愛く現れ、強引に冬丸を連れて教室を出た。ムメモたちがララ美のあとをつける。ララ美が冬丸を引きづって向かった先は職員室だった。
ララ美「お願いしまーす」
冬丸「ちっ」
ララ美「あっ」
冬丸「わかったやりますよ」
冬丸は職員室に入って御茶野から鍵を受け取った。そのとき御茶野は冬丸が売店ボランティアを考え直してくれたことに嬉しかったのかハグをしようとした。恐怖に感じた冬丸は逃げるように職員室をあとにした。
ララ美「あたし、何もわからないんでよろしくお願いします!」
冬丸「拙者は今、お弁当を食べているでござる。これは鍵だ。さらば!」
と冬丸が忍者のようにスーっと教室へ戻ろうとするもムメモたちに囲まれているため逃げることができない。ムメモたちは中々、観念しない彼に殺気立っている。そのとき、彼らの目の前を「ミレニアム・ペアレント・アソシエーション」通称ミペアというミレニアム高校の保護者団体が重々しい雰囲気でやってきた。
冬丸「なんだなんだ?」
ムメモ「何々? って! こんなことしてる場合か!」
冬丸「え~」
女子1「早く早く!」
冬丸「……」
女子2「レッツらゴー!」
冬丸「いざ教室へ!」
女子3「行くぞーっ!」
冬丸「行ってらっしゃーい」
馬鹿みたいな顔をして手を振る冬丸にララ美がコワい顔で「行くぞ」と言った。結局、冬丸はララ美たちと仕方なく売店に行くことにした。売店に着くと冬子たち女子生徒による行列ができていた。今か今かと売店が開くのを待っていたのだ。ララ美が売店を開錠しているとき冬丸が冬子に目的を尋ねた。
冬丸「アイドルのトレーディングカード付きチョコレート菓子?」
冬子「今日発売なんです」
冬丸「なんじゃそりゃ」
ララ美「冬丸様! 大変です!」
冬丸「なに?」
ララ美「どこにもありません!」
冬丸「なにが?」
冬子たちが買おうとしている商品がどこにもない。冬丸は探そうとせず。レジを立ち上げた後に「残念だったな」と言って売店を後にしようとした。すると彼女たちの視線が冬丸に集中する。
冬丸「弁当食わしてくれよ~」
ララ美「一緒に探してください」
冬丸「腹減った!」
と言いながらも探し始めた冬丸が売店の出入口にある丁度いい大きさの段ボール箱に躓いた。冬丸はなんだろうと中身を確認する。その中には例のお菓子が約20個入っていた。冬丸はそれをララ美に手渡した。しかし、彼女はレジ操作をしたことがなかった。
冬丸「一瞬で売り切れちゃった~」
冬子「先輩」
冬丸「なに?」
冬子「これあげます」
冬丸「おぉサンキュー」
彼女たちの目的はトレーディングカードであり同封されているウエハースチョコは興味がない。冬子はお腹が空いているという冬丸にお菓子をあげた。彼はトレーディングカードで騒ぐ女子生徒たちを横目にお菓子をポリポリ食べていた。
冬丸「やっとお弁当が食べれる」
結局、冬丸は今日も売店の仕事をしてしまった。売店の施錠をして鍵を返却後、教室に戻った冬丸はお弁当を食べようとした。その瞬間、チャイムが鳴った。冬丸はガクっと肩を落とした。
冬丸「今日もできなかった……お昼休みカムバーック!!」




