第51話
冬丸「放課後?」
ララ美「うん」
冬丸「ここじゃ言えないこと?」
ララ美「うん」
冬丸「わかった」
ララ美「放課後、待ってるから」
冬丸「うん」
放課後、冬丸はララ美に指定された場所に姿を現した。今、ここには誰もいないのか静かすぎる。冬丸は彼女がどこにいるのかと周りを見渡した。そこへ緊張した面持ちでララ美が現れた。冬丸がララ美に気づき笑みを見せた。
冬丸「ララ美さん」
ララ美「……」
冬丸「ララ美さん?」
ララ美「……」
ララ美は心臓をバクバクさせながら何かを企んでいた。冬丸は何か悩みでもあるのかと優しい声をかけた。するとララ美は隠し持っていた刃物を出した。彼女のその姿に冬丸は驚きを隠せなかった。冬丸はかなり動揺しているのかその場に腰を抜かした。
冬丸「待って!」
ララ美「ごめん」
冬丸「ララ美さん!」
ララ美「!!」
冬丸「あっ」
ララ美が冬丸の腹部にグサっと刃物を突き刺した。その瞬間、ララ美は奇妙な笑みを見せ「これで冬丸様はあたしのもの」と言った。ララ美は倒れる冬丸を見て嬉しそうにしていた。そして、その場に膝から崩れ落ち笑った。そのときだ。
冬子「先輩!!」
ララ美「!?」
予想外にも冬子が冬丸の元に駆けてきた。刃物が突き刺さる彼を見た彼女は動揺を隠しきれない。何度も何回も冬子は彼を揺さぶる。そしてララ美に「なんてことしたんですか!」と激怒した。
ララ美「……」
冬子「救急車……救急車!!」
ララ美「……」
先ほどまで笑っていたララ美がキョトンとしている。なにか様子がおかしい。ララ美はどこか遠くを見つめている。冬子がスマートフォンを手に取った。その瞬間、ララ美が通報できないよう邪魔をする。
冬子「ちょっと何するですか!」
ララ美「やめて!」
冬子「離して!」
ララ美「お願いだからやめて!」
冬子「離して!!」
女子A「カーット!! そこまでー!!」
冬子「えっ??」
冬丸「冬ちゃんハロー」
冬子「ぎゃーっ!!!」
刃物が突き刺さった状態の冬丸が元気よく起き上がったことに冬子が悲鳴を上げた。直後、気を失ってしまう。冬丸やララ美、撮影をしていた演劇部の女子3人が大慌てで彼女を囲む。大慌てで冬丸が冬子を担ぎ駆け足で保健室へと向かう。
健子「よし! 今日の仕事終わり!」
保健室にて健子が帰る準備を終えた瞬間、冬丸がやってきた。健子は気を失う冬子を見て何があったのか尋ねた。冬丸は事情を伝えようとしたとき園子が健子とお茶をしようと保健室にやってきた。刃物が突刺さった状態の冬丸を見て驚いている。冬丸は勘違いさせてはいけないと偽物だと説明した。
園子「なんだ。どうりで血が出てないわけだ」
健子「それどうなってるの?」
冬丸「こうなってるんです」
園子「あらま」
健子「上手いことできてるのねぇ」
冬丸「それより冬ちゃんが!」
冬丸が言った瞬間、病床に仰向け寝している冬子が目を覚ました。起き上がった彼女は冬丸を見て怯えている。刺されたのにどうして元気なのかと思っているのだ。バカは何も感じないのか。何が起きているのかと今、冬子の頭は混乱していた。
ララ美「大丈夫!?」
ララ美が演劇部員と一緒にやってきた。彼女を見た冬子は「この人!」と先ほど発生した出来事を話した。健子と園子は笑いをこらえている。ララ美は事情を冬子に説明した。すると冬子は「騙された」と白目を向いた。
女子A「取り直す?」
女子B「いいの撮れたしいいんじゃない」
女子C「春夏秋さん」
冬子「ん? なに?」
女子C「春夏秋さんの役は会長さんの元カノということで」
冬子「も……元カノ……」
冬子は元カノは嫌だと思った。彼女が大事に至らなかったことで解散しようとしたとき冬丸たちが園子に気づいた。目の前の校長に冬丸以外、驚いてしまった。生徒会室にて。
冬子「もう! 本気にしたじゃないですか!」
冬丸「そう怒るなって」
冬子「それは?」
冬丸「ああコレ」
冬子が指摘したもの。それは冬丸の胸に突き刺さっていた刃物だ。もちろん偽物で刃の部分を触ると凹む仕組みになっている。冬子はよくできていると感心したのも束の間。冬丸の元カノ役はごめんだと言った。
冬丸「ほんの少し出ただけじゃん」
冬子「それでもイヤです」
そのあとすぐ御茶野が「話がある」とやってきた。冬子が前を向いた。その瞬間、冬丸が偽物の刃物を冬子の背に突き刺した。それは制服にひっつくような仕組みになっている。冬子は付いていることなど知る由もない。
御茶野「ん?」
冬子「なっなんですか?」
御茶野「大丈夫か!」
冬子「はい?」
御茶野が冬子の背についている物を見て驚きの声を上げた。彼女は何事かと手を背中に回した。あれが付いていることに気づいた冬子は冬丸を睨みつけた。偽物とわかった御茶野はホッとしていた。
楽子「はい。ミレニアム高校です」
ある日、職員室にいた音楽子が1本の電話を受けた。それは推しショックで休んでいる生徒の保護者からだった。生徒が少ない状況での授業の進行を今すぐ止めろという内容だった。校長に報告すると気にするなとのことだった。
珈琲谷「どうするおつもりですか」
園子「ほっとけばいいのよ」
珈琲谷「しかし!」
園子「迷惑しているのはあたしたち」
珈琲谷「ですが」
園子「今回、生徒が大量に欠席してる理由はなに?」
珈琲谷「それは」
園子「推しが熱愛したから休みます? 授業を進めるな? 無視無視」
珈琲谷「校長!」
園子「私はちゃんと登校している生徒のため授業を中止することは致しません!」
そのあと園子は教員に向けて「授業を止めろ」という保護者からのクレームは一切、受けなくていい。また、しつこいようなら校長に引き継ぐよう指示を出した。翌日、どういう訳か同様のクレームが殺到する騒ぎが起きた。




