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ハルカアキ  作者: 珈琲之助
お昼休みを奪われてしまった生徒会長
48/55

第48話

今日は朝から奇妙なことが起き続けている。それは女子生徒が次々と体調不良を訴えているのだ。早退者が大勢も出ていることから学校側は感染症を疑った。しかし、原因は病ではなく以外なものだった。


冬丸「またかよ」


お昼休み、冬丸が教室で1人お弁当を食べていた。すると突然、午前中は元気だった一部の女子生徒が「キャー」と一斉に悲鳴を上げた。中には失神する輩もいる。水分補給中だった冬丸は驚いた衝動で中身を机にこぼしてしまった。


冬丸「もー! なんなんだよ!!」


冬丸は奇妙だと思いながらポケットティッシュで机を拭いていると近くで女子生徒が魂が抜けたように何人もその場に座り込んだ。朝から同じような光景が連発している為、不安と心配が入り混じった冬丸は座り込む女子生徒に声をかけた。


冬丸「大丈夫か?」


彼女は大泣きしていた。冬丸が声をかけた女子に何か悲しいことでもあったのかと尋ねた。しかし、女子生徒は何も言わずに泣き続ける。冬丸は一部始終を目撃したムメモと顔を見合わせた。


夏男「おいおい!」

春子「みんなどうしたの?」


その頃、屋上では夏男と春子が仲良く昼食をともにしていた。そんな彼らの目の前で幾人もの女子生徒が座り込み泣き始めた。気色の悪い光景に2人はそそくさと場を離れた。だが、彼らの行く先々で同じような光景が見受けられた。


園子「午前中を超えた!?」


お昼休み中に早退する生徒が午前中を超えた。その原因について数人の教員が体調不良を訴える幾人もの生徒に聞き取りをしていた。生徒たちは中高生に絶大な人気と影響力を持つ芸能人の熱愛報道などが発端だと語っていたという。


園子「なんだって!?」


その報告を受けた園子は驚いた。結局、教員が対応に追われているのか午後の授業の開始に遅れが生じた。最終的に2年10組に残った生徒は冬丸と夏男、ムメモほか女子生徒3名だ。30名以上の生徒が早退した10組の教室ではあることが話題になっていた。


夏男「これ見ろよ」

冬丸「にゃにゃ?」


夏男がスマートフォンであるネットニュースを冬丸に見せた。ムメモや女子たちも自分のスマートフォンでそのニュースを見ている。その内容とはどういったものなのか。


冬丸「中高生を中心に絶大な人気を誇る芸能人の熱愛が次々と発覚……スゲェー」

夏男「朝はコイツらで昼はこいつらだな」

冬丸「それでみんなショックでバタンキューしちゃったんだ」

ムメモ「たぶんね」

冬丸「こんなヤツ見たことねぇよ」

夏男たち「はぁ!?」


冬丸は偶然、スマートフォンの画面に出たアイドルを知らなかった。それには皆が一斉に驚いた。その芸能人について冬丸は彼が出演しているドラマのタイトルと役名を言い当てた。しかし、彼が絶大な人気があるとは知らなかったという。冬丸はドラマをよく見ており、出演者を役名で認識している。


女子1「本名知らないの?」

冬丸「知らなーい」

女子2「えーっ!!」

冬丸「今、初めて知った」

女子3「うそでしょう!?」

冬丸「それにしても先生遅いね」

夏男「みんな対応に追われてるんだって」

ムメモ「このまま終わればいいのにね」

冬丸「マミちゃんナイス!」


と冬丸が言った次の瞬間、担任がやってきた。そして彼女は6人に残っている生徒は全校生徒の1割にも満たない事実を伝えた。冬丸はこの瞬間、いつもより早く帰宅できるのではないかと喜んだ。


担任「では今から」

冬丸「帰りましょう!」

担任「春夏秋君」

冬丸「はい!」

担任「残念でした。今からこの問題用紙を解いてもらいます」


と担任は言うなり1人ずつ問題用紙数枚を配って回った。冬丸は帰れると思っていただけにやる気を無くして白目を向いた。放課後、生徒会はいつも通り行われた。冬子が来るまで冬丸は1人、生徒会室でぼーっとしていた。ほとんど生徒が残っていないのか気味が悪いくらい静かだ。今にも寝落ちしそうな冬丸の目を覚ましたのは冬子だった。


冬子「おはようございまーす!!」


冬丸は大げさに驚いてしまい椅子から落ちた。彼は冬子を見て早退しなかったのかと尋ねた。彼女はそんなことはしないとキッパリ言った。


冬子「早退? そんなことしませんよ」

冬丸「中高生に絶大な人気を誇ってんだぜ」

冬子「知ってますよ」

冬丸「ショックじゃないの?」

冬子「そりゃショックですよ。でもね」

冬丸「にゃ?」

冬子「それとこれとは別なので」

冬丸「ちゃんとしてるねぇ」

冬子「当たり前でしょう」

冬丸「冬ちゃんカッコイイ」

冬子「先輩はなにか影響ありました?」

冬丸「俺は興味ねぇ」

冬子「そう言うと思ってました」

冬丸「そうかハハハ」

冬子「はい!」

冬丸「ニャニャ!? なんだよいきなり!」


驚きを見せる冬丸をよそに冬子は今からやらなければならない大切なことを発表した。それはグラウンドの隅の草むしりだ。生徒会がなぜこのようなことをしなければならないのか。冬丸は疑問に思った。


冬子「はい! そこ! つべこべ言わない!」

冬丸「めんどくせ~にゃ~」

冬子「着替えますよ」

冬丸「えっ? あらヤダ。冬ちゃんの生着替え?」

冬子「しばいてもいいですか?」

冬丸「草むしりをするのに体操着に着替える! わかってますよそんなことハハハ」

冬子「だったらさっさと着替える!」


そう言った冬子が制服に手をかけた。そのとき冬丸が冬子の目の前でニターっとしていた。その瞬間、生徒会室は修羅場を化した。結局、冬丸は冬子に「ぎゃー」っと一発くらってしまった。そして冬子が冬丸をポイっと廊下に放り投げた。


冬丸「冬ちゃん最恐」


冬丸はコントのようにぐったりとした。それから2人は生徒が1人もいないグラウンドの端などに生えている草をむしった。なぜ、生徒会がこのようなことをしなければならないのかと冬丸はブツブツ文句を言いながらも結局はキレイに仕上げた。翌日、昨日の影響で欠席者が続出するのではないかと予測された。教員たちは園子の指示で早めに出勤した。


御茶野「これで何人目だ?」


早朝から教員たちは欠席する生徒の対応に当たっていた。ある生徒の欠席対応を終えた御茶野は一息つこうと椅子の背にもたれた。するとまた電話がかかってきた。彼はいつまで続くのかと疲れきった様子で受話器を取った。


珈琲谷「すでに全校生徒の9割の欠席が確定いたしました。原因は中高生に絶大……」

園子「知ってる。こんなにヤバいことになるなんて凄いわね」

珈琲谷「感心している場合ではございません!」

園子「わかってるよ~」


ミレニアム高校のみならず全国のあらゆる学校で同じようなことが起きているという。そんな状況にも関わらず園子は休校にはせず。通常通り、授業を行うことに決めた。一部の教員から反対はあったものの園子は芸能人の熱愛報道が原因なだけに普通に登校している生徒を尊重した。


園子「しょうもないことで休むなっつーの。そうでしょう?」

珈琲谷「今の時代、そういう言い方はどうでしょうか」

園子「ダメ?」

珈琲谷「ええ」

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