第47話
園子「教頭先生」
珈琲谷「はい」
園子「これいつのかわかる?」
ある日、校長室にて園子と珈琲谷が向かい合わせになり座りながら高級な羊羹とお茶を嗜んでいた。そんな中、園子が珈琲谷に学校案内パンフレットをテーブルに広げるなり言った。それには制服を着用した女子生徒が載っている。彼は開校当時から変更はしていないと即答した。園子は古すぎる故、変更が必要だと許可を貰うため理事長に電話をかけた。そしてあることが決まる。それはパンフレットを新しくすることだ。
珈琲谷「新しくするとなりますとモデルを雇わなければいけません」
園子「別に雇わなくてもいいじゃない」
珈琲谷「といいますと?」
園子「生徒がいるじゃない。珈琲谷先生さぁ誰かテキトーに選んできて」
珈琲谷「急に言われましても困ります」
園子「だよね。親御さんの許可など必要だよね~」
珈琲谷「おっしゃる通りです」
園子「でもでも」
園子は経費削減のためだと生徒を起用する考えをやめなかった。すると珈琲谷が生徒を選ぶ際の選考基準を園子に尋ねた。
珈琲谷「生徒を起用するとなりますと選考方法はどうしましょう?」
園子「どうしようかね~」
結局、この場では決まらず。後日、教員を交えて決めることになった。その情報がどこから漏れたのか生徒たちに知れ渡ってしまった。生徒たちは自分が選ばれたらどうしようなどお祭り騒ぎだ。
冬丸「僕は何も知りましぇーん!!」
冬子「きゃあぁぁぁ!」
誰が広めたのか。選考方法は生徒会が知っているという誤情報が広まった。その影響で連日、生徒会に情報を求める生徒たちでごった返した。その影響で生徒会の活動ができなくなってしまった。そこで学校の許可を得て冬丸と冬子は学内放送で「選考方法について生徒会は何も知らない」と強く皆に訴えた。
冬丸「静かじゃの~」
冬子「静かになりましたね」
放送の成果もあり生徒が押し寄せることはなくなった。普段の生徒会に戻ったとき、冬丸が冬子にこんなことを言った。それは自分たちがモデルに選出さるのではないかだ。冬子はそんなことはあり得ないと言った。
冬丸「可能性はゼロではない!」
冬子「そうですけど……いや待てよ」
冬丸「ほら~」
冬子「いやでも……」
冬丸「でもでも?」
冬子「!?」
そのとき、冬子は自分が選ばれたらどうしようと興奮した。それを見て冬丸は選ばれたらの話だと笑っていた。すると冬子は「やだ~」と冬丸に強烈なツッコミを入れた。その衝撃で冬丸は椅子から落ちてしまう。
冬丸「冬ちゃん興奮しすぎ……痛ぇ~」
翌日、男子は夏男が。女子は春子がそれぞれモデルを務めるのではないかというデマが流れた。2人とも美男美女だけにお似合いだ。彼らはその噂に何ら否定する様子はなくやる気満々だった。
夏男「ついに俺の時代がきたな」
冬丸「俺の時代もな」
休み時間、冬丸が夏男の真似をしてキランっとカッコ良く決めるもクラスの女子から笑われた。冬丸はこのとき夏男はよくてなぜ自分は笑われないといけないのかと不満を口にした。するとムメモがこんなことを言った。
ムメモ「春夏秋君がやるとなんだか面白くなっちゃうんだよね~」
冬丸「どういう意味だよ!」
ムメモ「わかんないハハハ」
冬丸「ニャニャ!?」
冬丸はムメモの発言にショックを受けた。クラスの女子生徒からも冬丸は夏男の恰好良さには勝てないと言われてしまった。その瞬間、冬丸は固まってしまった。そんな冬丸を溶かしたのは次の授業を担当する御茶野だ。彼が目の前に来るまで面白いことに冬丸は固まっていた。
冬丸「うーっす!」
放課後、生徒会室にやってきた冬丸はいつもの席に腰掛ける。そして冬子がいない間にスマーフォンの画面を見つめながらイケメンポーズをした。そこへ冬子がコントのように扉を思い切り開けて入ってきた。
冬子「先輩なにしてるんですか?」
冬丸「おぉ冬ちゃん!?」
冬子「なになに自撮り?」
冬丸「選ばれたときのために練習してるんだ」
冬子「何に? 何かに選ばれたんですか?」
冬丸「モデルだよ!」
冬子「あぁ~」
御茶野「お前らに話がある!」
冬丸「わぉ!?」
冬子「びっくりした~!」
冬丸「先生いたの!?」
どこから出てきたのか御茶野が彼らの目の前にいた。当然のことながら2人は驚きのリアクションを見せる。そんなことはさておき、御茶野の口から衝撃の発言が出た。それはモデルの選出に関わることだ。
御茶野「知っての通り、学校案内用パンフレットが新しく製作されることになった」
冬丸「マジっすか!?」
御茶野「連日、選考方法について色々な情報が出回っている」
冬丸「確かに」
御茶野「学校もどのような方法で生徒を選べばよいのか真剣に話し合った」
冬丸「そっか」
御茶野「その結果!!」
御茶野がいちいちツッコむ冬丸の机を両手でバンと叩いた。あまりに強く叩きすぎたのか痛がっている。そんな御茶野を見て冬丸と冬子は笑うのを必死にこらえた。
冬丸「ぷーっ!」
御茶野「!!」
冬丸「すいません」
我慢できなくなり少し笑ってしまった冬丸を御茶野は睨みつけた。そして彼から衝撃の言葉が出た。それに冬丸と冬子は開いた口が塞がらないほど驚いた。その言葉とは冬丸と冬子をモデルとして起用するとのことだった。
冬丸「キターっ!!」
冬子「やった!?」
2人は大いに喜んだ。しかし、それには続きがあった。起用されたのは彼らではなく2人をモデルにしたAIだった。それを聞いた瞬間、先ほどまでの感情はどこへ行ったのか。冬丸と冬子はシーンを静まり返った。
冬丸「AIってどういうことですか?」
冬子「どうしてAIなんですか?」
御茶野は詳細を明かすことなく諸事情とだけ2人に伝えた。それからして新学校案内用パンフレットが完成した。職員室近くの掲示板にその1ページが1枚のポスターになって張り出された。
夏男「このモデルAIだってな」
春子「言われなきゃわかんないね」
生徒たちは起用されたモデルはAIだということは知っていた。しかし、誰をモデルに作られたのかは知られていない。冬丸と冬子もその場にいたが自分たちをモデルにしているとは言えなかった。
ララ美「ハロー冬丸様」
冬丸「おはよう」
ララ美「できたんだ」
冬丸「おう」
ララ美「これなんだか冬丸様に似てますね」
冬丸「そっそうかな」
ララ美は気づいていた。ララ美は他言しないからという約束で本当のことを教えてほしいと冬丸に言った。彼は小さな声で彼女にだけ本当のことを伝えた。
ララ美「やっぱり。これはあたしたちだけのひ・み・つフフ」
ララ美はそう言うと冬丸に向けてハートを放とうとした。だが冬丸は背中に冷たいものを感じたのかそそくさとその場を離れていた。それを知ったララ美は残念そうな顔を見せた。
ルル香「付き合っちゃえばいいのに」
リリ子「そっそんなことより」
ルル香「どうしたの?」
リリ子「こっこれ見て」
ルル香「なに?」
リリ子「えっ!? ヤバいって!!」
ルル香とリリ子はスマートフォンのネットニュースを見て悲鳴を上げた。一体、何が起きたのか。




