第43話
冬丸「えっ応援に行くの?」
冬子「空手部からの要請です」
冬丸「妖精? ヒラヒラヒラ~」
冬子「要請!」
冬丸「冗談冗談。でもさ」
冬子「なんですか?」
冬丸「親善試合だろ。なんでララ美さんが部員でもないのに出るの?」
冬子「そんなこと知りませんよ」
冬丸「そもそも出ていいの?」
冬子「いいんじゃないんですか」
その日の生徒会にて空手部の部長から直接、冬丸に親善試合の応援に必ず来てほしいと要請があった。冬丸は「その日は何の予定もないから」とすんなり受け入れた。しかし、彼はどうして自分が応援に行かなければならないのか疑問に思っていた。だがそれはララ美が出るからだと直ぐにわかった。
冬子「彼女さんから何も聞いてないんですか?」
冬丸「聞いてない」
冬子「あんなにラブラブなのに?」
冬丸「そうなんだよね~ってコラ。彼女じゃねぇわ」
冬子「これを機に告白してみるっていうのはどうですか?」
冬丸「おっ俺が冬ちゃんに!?」
冬子「あの人に!!」
冬丸「わかってるよ、そんなむきになるなってハハハ」
冬子「も~」
数日後、それは親善試合の前日のこと。久しぶり?にララ美が冬丸に抱き着いた。いつものララ美に戻ったと冬丸は少々喜んでいた。しかし、みんなの前でのこの行為は毎回、恥ずかしい。ララ美は恥ずかしくないのか。
冬丸「ねっねぇララ美さん」
ララ美「なんですか?」
冬丸「ララ美さんて本名なんて言うの?」
ララ美「フフフ」
冬丸「フフフララ美っていうの!? 珍しい。どんな漢字書くの?」
ララ美「苗字はヒ・ミ・ツ」
冬丸「おっおっおーっ!」
いつも以上にララ美が冬丸をハグした後、巨大なハートが2人を包んだ。バーンと勢いよく破裂したのちララ美はハイテンションで気分がよかったのか冬丸の腕を教室に到着するまで放さなかった。
ララ美「絶対、明日来てくださいね」
冬丸「うっうん。行きますです」
行かなければ多分……と思い、必ず応援に行こうと心に決めた。その日の放課後、伊藤学園高校で生徒会トップ3がZ子にいつもの行為をしていた。睦月たちがいつも以上に激しい口調でZ子に当たっている。
睦月「明日、もう一度おさらいするから」
如月「わかってんだろうな」
弥生「絶対やれよ」
Z子「……」
睦月「なんか言えよ!」
彼女たちがZ子に指示をした行為について知ってしまった冬奈は飛び跳ねた。今すぐ先生に言おうか迷っている。密告が知られると自分も標的になるのではないか。しかし。Z子を守るためには……。冬奈はどうしようか考えた。
Z子「……」
冬奈「ハロー」
Z子「……」
冬奈「待って!」
冬奈は隠れて様子を伺っていたとZ子に言った。そして指示されたことを本当にするのかどうか尋ねた。しかし、Z子は何も言わず。その場から立ち去ろうとした。そんな彼女に冬奈が言った。
冬奈「本当にしたらあんた加害者になるかもしれないんだよ」
Z子「ほっといて!」
冬奈「今から先生とこ行こ」
Z子「……」
冬奈「ねぇ! ちょっと!」
Z子は本当にやるつもりなのか。冬奈の問いかけに応じることなく走り去った。翌日、親善試合が終わり、部員ではないララ美はリリ子とルル香と一緒に帰ろうと校内を歩いていた。
ルル香「あんたもう少し手加減しなさいよ」
ララ美「冬丸様が見てた手前、手加減なんかできる訳ないでしょ」
リリ子「でも相手を気絶させようとするのはどうかな~」
ララ美「いいじゃない試合なんだから」
ルル香「それにしてもアイツ起きなかったね」
ララ美「あたしの試合を見て疲れちゃったのよ」
リリ子「そうかな~」
ルル香「ララ美が愛を込めて思い切り抱きしめればよかったんじゃない」
ララ美「あ~そうすればよかった……。それにしてもなんで出入口に着かないの?」
リリ子「それは道に迷ってるだけじゃない?」
ルル香「確かに」
ララ美「ちょっと待った」
体育館から中々、正門に来ることができない。F女3は明らか道に迷っているのか校内を歩きまわっていた。そんなときララ美が睦月たちのZ子に言葉の暴力を浴びせる場面を目撃してしまった。もちろん睦月たちには知られていない。
睦月「犯人は誰?」
Z子「いっ伊藤レイ」
弥生「タメ口! お前いい加減にしろよ!」
Z子「……」
如月「すぐ黙る。ざけんなよ」
Z「……」
睦月「指示通りにしてね」
睦月たちがZ子を残して歩き去る。ルル香がイジメだと思い、リリ子、ララ美とともにZ子に話しかけようとした。しかし、他校の生徒ゆえにそういうことをしてもよいのかと迷った。
リリ子「そういえばあたしたちも同じようなことしようとしたんだよね」
ルル香「結局、あいつにやられたんだよね」
ララ美「まっそれがなければあたしが冬丸様を好きになることもなかった」
リリ子「今思えばそうしてあんなことしようとしたんだろう」
ルル香「めっちゃくだらないことだよね」
ララ美「ほんとバカみたい」
結局、彼女たちはZ子に話しかけることはしなかった。それから正門に辿り着くことができたララ美たちは無事、帰路についた。その頃、冬丸は1人、体育館の観客席で目を覚ました。
冬丸「終わってんじゃん! 誰か起こしてくれよ」
一瞬、ぼけっと冬丸はいつから居眠りを始めたのか考えた。ララ美の試合を思い出すなりホッとしたのもつかの間。こうしてる場合ではないと冬丸は急いで体育館をあとにしようとした。次の瞬間だ。
冬丸「うぎゃ!」
冬奈「ひょえー!」
2人は近くにいたなんて知る由もなく。出会った瞬間、バカみたいな声を出した。冬丸が第3の春夏秋と言い、冬奈がミレニアム高校の生徒会長と言った。
冬奈「会長がここで何してんスか?」
冬丸「空手の親善試合見てたら寝ちゃってさハハハ」
冬奈「マジすかハハハ」
冬丸「何がそんなにおかしいんだろうなハハハ」
冬奈「わかんないです~ハハハ」
冬丸「よし! それじゃ帰るわ。じゃあな」
冬奈「ではまた」
冬丸と冬奈は同時にこう思った。もしかして気が合うのかもしれないと。




