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ハルカアキ  作者: 珈琲之助
他校の問題に口出しをした生徒会長
42/55

第42話

ミレニアム高校には空手同好会がある。1年ほど前まで格上の団体だったのだが人数が大幅に減少した影響で規定により同好会となった。その原因はララ美だ。しかし、悪いことをしてそうなったのではない。


ララ美「……」


屋上で珍しく1人でいたララ美はなんだか表情が暗い。当時のことを思い出しているのだろう。1年ほど前のこと。当時のララ美は新入部員でかなりの実力を誇っていた。そんな彼女がある日、複数人の同期部員と1人に対してパワハラ以上の行為を繰り返し行っていた先輩部員2人を部長たち上層部に告発した。しかし、何も解決はしなかった。


先輩部員「あんたのせいだからね!」


挙句の果てにはララ美がその先輩部員の標的にされそうになった。しかし、彼女は後に引くことはなく仲間を守るため毅然とした態度で立ち向かった。そして事件は起きた。証拠があるにも関わらず白を切る彼女たちをララ美が鉄拳制裁を与えたのだ。


ララ美「!!」


部長たち先輩部員から批難を浴びせられてもララ美は「自分は悪くない」と行為に対しては正当だと言い張った。一緒に告発した同期部員の中にはやりすぎだとの声が出た。しかし、何人かはララ美の行為に賛同していた。結果、ララ美たちが提示した証拠が学校側に認められて加害者である先輩部員は退部が課せられた後に停学処分となった。そして暴力を振るったララ美は最恐かつヒーローとなったのだが悪質な行為ということになり加害者と同じ退部となった。


同期部員「処分を取り消してください!」


同期部員たちはララ美の退部を取り消すよう部長たちに願い出たが認められることはなかった。それが発端となり次々と退部者が続出する騒ぎに。気が付けば半数以下に激減。この異例ともいえる事態に学校が対応に乗り出した。そしてララ美の処分が取り消されることになったのだ。しかし、本人が戻らないと言ったことにより空手部は一連の騒動と人数の大幅な減少に伴って同好会への格下げが決まった。


ララ美「……」

冬丸「ララ美さんじゃない」

ララ美「……」

冬丸「あれ?」


外の空気を吸いに屋上にやってきた冬丸がララ美の様子が気になって声をかけた。いつもなら大声をあげて飛び掛かってくるのだが今回に至っては何も起こらない。それどころか冬丸に気づいていない。


冬丸「珍しい」

ララ美「えっあっ」

冬丸「よっ」

ララ美「冬丸様じゃないですか!」

冬丸「どうしたの?」

ララ美「なにがです?」

冬丸「なんかいつもと違うから」

ララ美「とんでもございません!」

冬丸「そう?」

ララ美「はい!」

冬丸「おっとチャイムだ」

ララ美「本当だ」

冬丸「一緒に行こ」

ララ美「えっ」


このとき初めて冬丸に誘われたのか嬉しすぎていつものララ美に戻った。その日の午後、冬丸が冬子と空手同好会の道場を訪れた。それは空手部が同好会から部に格上げされたからだ。


冬丸「規定により部への昇格となりました。おめでとう!」


冬丸が部長に昇格が記された文書を渡した。直後、部員たちから拍手が巻き起こった。後日、昇格を記念して伊藤学園高校の空手部で親善試合をすることが決まった。しかし、ミレニアム高校空手部にて非常事態が発生した。それは団体戦に挑む最強と謳われる5人の内、3人が怪我や急病で出場ができなくなってしまったのだ。


部長「ララ美! お願い!」

ララ美「イヤ」

部長「そんなこと言わないで! ねっ」

ララ美「どうしよっかなぁ」

部長「えっなに?」

ララ美「一発、殴らせてくれたら考えてあげてもいいかな」

リリ子「ちょっとララ美!」

ルル香「やりすぎだよ」


部長は最強5人に匹敵する選手が部員の中にいないためララ美に頭を下げた。しかし、彼女は去年のことが原因で引き受けることはできないと断った。それでも部長は諦めることはなかった。


ルル香「何度も何回も頼んでいるんだよ」

リリ子「ララ美、聞き入れてあげたら?」

ララ美「……」


屋上にて部長がQ美とP子を連れてララ美のところにやってきた。何度目かまた断られてしまった。すると部長が彼女らの前で腕を組み胡坐をかいた。何を企んでいるのだろう。ララ美に出てほしいが為、殴られることを覚悟したのではないか。ルル香とリリ子は驚き呆れている。そんなに彼女に出てほしいなんてと思っていた。


P子「部長?」

Q美「何して……」

リリ子「まさか」

ルル香「うそでしょう」

ララ美「……」


部長はララ美に「やれ」といわんばかりに目を閉じ、その時を待っている。ララ美は仕方ない。ここまでされたら出てやるかと決心し、部長を殴るため手をポキポキならし始めた。リリ子とルル香がララ美を止める。P子とQ美はこの期に及んで何をしようとしているのかわかっていない。


ララ美「覚悟、できてる?」

部長「……」

ララ美「できてんのかって聞いてんだ!」

部長「い! いつでも……」

ララ美「よ~し」


ゆっくりとララ美が部長と距離を縮める。周りの誰もがもうダメだと思った次の瞬間、ララ美が覚悟を決めた部長の前で仁王立ちをした。そして言った。


ララ美「バカじゃないの」

部長「えっ」

ララ美「あたしがそんなことする訳なじゃない」

部長「だって」

ララ美「ふん」

部長「……」

ララ美「出てあげてもいいです。その変わり条件があります」

部長「なに?」

ララ美「あの人が応援に来てくれることですかね」

部長「あの人?」


「あの人」とは冬丸のことである。リリ子とルル香はすぐに浮かび上がったのだが部長たちは誰のことを言っているのかわかっていない。


P子「部長」

部長「なに?」

Q美「ララ美さんに何をされそうになったんですか?」

部長「ひみつ」

P子「何を覚悟されたんですか?」

部長「ひみつだってば」

P子とQ美「??」


部室に戻るとき部長はどうしても言えなかった。ララ美に1発殴られようとしていたとは口が裂けても言えなかった。しかし、ララ美が出場してくれることになり安堵していた。

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