第40話
冬丸が冬子に伊藤レイに会いに行くことを伝えにいく為、1年生エリアに足を運んだ。彼は在籍するクラスを本人から教えてもらったことがあるにも関わらず記憶にない。単なる忘れているだけだ。冬丸はどこだと勘を頼りに教室へ進入した。
冬丸「なんじゃこの視線は」
男子の登場にその教室のクラスメートの視線が冬丸に集中する。それに負ける男ではない彼は近くにいた女子に話しかけた。
冬丸「会長どこか知らない?」
女子「会長はあんたでしょう」
冬丸「そうだった。副会長いる?」
冬丸は聞き方が悪かったとイケメン風に同じ女子に副会長のことを問いかけた。このとき冬丸は自称イケメンオーラを放っていた。明らか避けられているとも知らず。しかし、副会長の知名度が低かったのか彼女たちは誰だろうと悩んでいる。
女子1「あの」
冬丸「どこどこどこ?」
女子2「副会長って誰でしたっけ?」
冬丸「エッ!?」
女子1「副会長って知名度低くない?」
女子2「だよねー」
冬丸「冬ちゃん知らないの?」
女子1・女子2「冬ちゃん?」
冬丸「失礼しましたー」
ここにはいないと確信した冬丸はスーっと教室を出た。冬丸は片っ端から探っていくしかないと思いながら次の教室へ入ろうとした。そんな冬丸に秋美が話しかけた。
秋美「お久しぶりです」
冬丸「久しぶり」
秋美「1組になにかご用ですか?」
冬丸「えっとねぇ」
秋美「もしかして冬子に会いに来たとか?」
冬丸「おっいいねぇ! えっと……誰だっけ?」
秋美「秋美です」
冬丸「そうだった秋美ちゃんだ。いつしかのピアノ女子!」
冬子「女の子の名前を忘れるなんて最低」
冬丸「ニャニャ! 冬ちゃん発見―っ! いたいたいたーっ!」
冬子「やめてください恥ずかしい」
冬子が冬ちゃんと呼ばれていることに対し、秋美は微笑みながらカワイイと口にした。冬子はみんなのいる前でそう呼ばれたので少しだけ顔を赤くした。冬丸は依然として普通だ。
冬丸「君に話がある」
この冬丸の発言が一部のクラスメートを勘違いさせてしまう。
クラスメート1「彼氏?」
クラスメート2「ラブラブだね」
などクラスメートが冬丸を冬子の彼氏と思い込んでいる。冬丸が冗談交じりに「そうなんです」とテレくさそうな仕草を見せると冬子の額に青筋が浮き上がる。
冬丸「冗談だよ冗談!」
冬子「冗談でもやめてください」
冬丸「はい」
その後すぐ秋美の助言により冬丸は生徒会の用事で冬子に会いに来たことがクラスメートに知れ渡った。これを知ったクラスメートたちはがっかりしていた。
冬子「で」
冬丸「にゃ?」
冬子「なんの用事ですか?」
冬丸「えっとねぇ……」
冬子「もしかして忘れた訳じゃないでしょうね」
冬丸「アハ」
冬子「(呆れ顔)」
冬丸「思い出した!」
冬子「なんですか?」
冬丸「レイちゃんがさ俺たちに会いたがってんだ」
冬子「レイちゃんって伊藤レイのことですか?」
冬丸「イエス! 今週の土曜日に伊藤学園高校に行くから」
冬子「日曜日!?」
冬丸「日曜日?」
冬子「日曜日はちょっと……」
冬丸「日曜日じゃなくて土曜日!」
冬子「土曜日か。ならオッケーです」
冬丸「日曜日なんかあんの?」
冬子「先輩には関係のないことです」
冬丸「教え……あっ大丈夫です」
冬丸が冬子のなにかを感じ、これ以上の詮索はしなかった。その後すぐチャイムが鳴った。冬丸は「土曜日だかんな!」と言って2年生エリアに走り去った。彼らの仲の良い会話に秋美が言った。
秋美「仲良いんだね」
冬子「別に。でもまぁ、気が合ってるのは確かかな」
秋美「羨まし」
冬子「そう?」
秋美「あたしもああいう男子がいたらなぁ」
冬子「あいつは単なるバカだから」
秋美「いいの? 生徒会長だよ」
冬子「いいのいいの」
秋美「いいんだ」
冬子「ああ見えてね頼りになるんだよ。春夏秋冬丸というヤツは」
冬子がそう言ったとき冬丸がくしゃみをした。誰かが自分の噂でもしているのではないかと思いながら。
冬奈「ねぇねぇ」
Z子「えっ」
冬奈「プニっ」
Z子「……」
冬奈がZ子のほっぺに人差し指を優しく当てた。冬奈とZ子は同級生である。Z子は如月たちに呼び出される以外は教室で目立たぬよう静かにしている。そんな彼女に冬奈が話しかけたのは睦月たちから受けている行為についての真相を知りたかったからだ。
冬奈「単刀直入に聞くね」
Z子「なに?」
冬奈「イジメられてるよね?」
Z子「……」
冬奈「生徒会長たちから」
Z子「あたし忙しいから」
冬奈「全然忙しそうに見えないけど~」
Z子「……」
黙り込むZ子を見て冬奈の顔つきが変わった。彼女はZ子に真実なら味方になると言った。しかし、Z子は何もされてはいないと言い張った。
冬奈「そっか」
Z子「どうして」
冬奈「なに?」
Z子「なんでもない」
冬奈「ならいいの」
冬奈はそう言ってZ子から離れるなり他のクラスメートと楽しそうにし始めた。そんな冬奈をZ子はしばらく見つめていた。本当のことを話していれば気が楽になったのではないかと思いながら。
睦月「Z子に問題です」
Z子「……」
睦月「誰にイジメを受けているのでしょうか?」
Z子「……」
如月「3……2……1」
弥生「誰誰? 誰にイジメられてるの?」
放課後、生徒会の集合時間まで時間がある3人はZ子をいじって楽しんでいた。彼女は睦月の質問に答えようとしない。弥生に問いかけられても無言を貫き通した。すると如月が強い口調でZ子に言った。
如月「早く言えよ!」
睦月「大声出さないで」
弥生「バレちゃうよ」
如月「ごめん」
睦月「Z子、早く答えて」
Z子はオドオドしながら「伊藤レイ」そう静かに答えた。睦月たちの顔が一瞬だけ険しくなったのでZ子は少し大きな同じことを言った。
睦月「わかってんじゃん」
如月「絶対そう言えよ」
弥生「よろしく」
なにかを企てているのか睦月たちはZ子をその場において生徒会へと向かって行った。そのときZ子は今にも泣き出しそうな顔で下を向いていた。




