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ハルカアキ  作者: 珈琲之助
他校の問題に口出しをした生徒会長
39/55

第39話

伊藤レイは成績優秀で文武両道、一部の生徒の憧れの存在だ。教員からも頼りにされている。そんな彼女が廊下に現れると生徒たちが左右に分かれて道を開ける。この行動は生徒たちが自然とやり始めたことでレイが望んでいる訳ではない。


生徒たち「伊藤レイ」

レイ「……」

生徒たち「あいつってヤバいよね」

レイ「……」

生徒たち「気に入らないヤツを次々と退学にしちゃうんだって~」

生徒たち「二度と立ち直れないくらい精神的に追い込むんだって」

生徒たち「なにそれ」

生徒たち「ヤバくない」

生徒たち「まっ噂だけどね」


一部の生徒がレイを敵に回すと恐ろしいことが起きると噂をしている。しかし、彼女は一度もそのようなことをしたことはない。理事長の孫だからといって気に入らない生徒を学校から追い出すことなどできる訳はない。誰がどのようにして作ったものなのか。レイはうんざりしていた。


冬丸「夏男ちゃん」

夏男「ん?」

冬丸「俺さ」

夏男「なに?」

冬丸「俺、生徒会長じゃん」

夏男「それがどうした?」

冬丸「ドラマの中の生徒会長って怖がられてんじゃん。なんで俺は普通なの?」

夏男「お前のどこを見てビビるんだよ」

冬丸「じゃあさじゃあさ、ドラマに出てくる生徒会長ってなんで怖がれてんの?」

夏男「知らねぇよ」

冬丸「ねぇなんでなんで」

夏男「つつくなよ」

冬丸「ツンツンしてるの」

夏男「やめろってハハハ」

冬丸「私、春子って言うの」

夏男「ちょっと待て、それはやめろ」

冬丸「いいじゃんか~」

夏男「ひーひひ」

冬丸「おりゃおりゃおりゃ!」

夏男「そんなことするヤツにビビるヤツなんかいねぇよ!」

冬丸「だよね。いいよなぁドラマの中の生徒会長って」

夏男「お前には一生無理だな」

冬丸「それはそうと……なんでお前の周りだけ女子がこんなにいっぱいいるんだ?」

夏男「さぁな」


夏男のファンたちで廊下はごった返していた。冬丸の周りをみんながさけている理由はなんでだろう。冬丸が夏男を羨ましがっていると両手を広げて誰かが猛ダッシュで駆けてきた。それは冬子ではない。


ララ美「冬丸様―っ! おはようございまーす!」


その声に皆、ララ美に注目する。冬丸が今日もキターっと嬉しそうにその時を待った。そして、いつものようにララ美が冬丸をギュッと抱きしめた。それは久しぶりに再会した恋人同士のようだ。


夏男「今日もラブラブだな」

冬丸「うらやましいだろう」

ララ美「えっ!?」

冬丸「!?」

ララ美「冬丸様」

冬丸「にゃーっ!!」


冬丸が「羨ましい」と言ってしまったことが原因でララ美が興奮した。そして抱きしめる力が強くなる。夏男を含めた周囲の女子たちが徐々に巨大化するハートに唖然とする中、冬丸は白目を向いていた。


冬丸「にゃにゃにゃー!!」

ララ美「キャハーっ!!」

夏男「このハート熱っ!!」

女子たち「ヤバくない!?」


これ以上は耐えられないと誰もが思った瞬間だ。御茶野が殺気立ったように彼らの元へやってきた。彼の登場にハートがパンっと破裂した。


ララ美「誰だ! 邪魔しやがった野郎は!」

御茶野「すまんかったなぁ」

ララ美「いやいやいやいやいや! とんでもございません!」

冬丸「先生助かった……ハハハ」


ララ美は御茶野に激怒してしまったことに顔を赤くしている。そんなことはさておいて御茶野が冬丸にある知らせを伝えた。それは冬丸が伊藤学園高校に招待されたというのだ。


御茶野「伊藤レイさんからの希望でな」

冬丸「伊藤レイ? 誰? ですか?」

御茶野「伊藤学園生徒会連合の代表だ。もう忘れたのか」

冬丸「はいはい思い出した! です!」

御茶野「今週末、授業が終わり次第、伊藤学園高校に行ってくれ」

冬丸「今週末って土曜日!? ですか?」

御茶野「そうだ」

冬丸「え~っ」

御茶野「なんだ?」

冬丸「その日の生徒会は休みなのに~! です!」

御茶野「そんなの知るか。っていうか変な敬語を使うな」

冬丸「は~い」

御茶野「春夏秋」

冬丸「なんですか」

御茶野「お前は生徒を代表する生徒会長だ! がんばれ!」

冬丸「抽選で選ばれましたけど」

御茶野「それを言うな」

冬丸「へへ」

御茶野「副会長にも伝えておいてくれ」

冬丸「かしこまりました」


このとき冬丸は大変なことになってしまったと思った。御茶野が去った後、ララ美が伊藤レイについて聞いた。冬丸は美人な女子生徒と言ってしまった。するとララ美が自分のことだと勘違いして冬丸を力強く抱きしめた。


弥生「伊藤レイに文句言って来てよ」

Z子「……」

如月「調子のんなってさ」

睦月「ウザいから消えろって」


伊藤学園高校の人通りの少ない場所で睦月、如月、弥生という生徒会トップ3がZ子という下級生に対して精神的な苦痛を与えていた。Z子は怯えて声が出ない。


睦月「なんで黙ってんの?」

如月「なんでいつもそんな顔してんの?」

弥生「キモいんだけど」


Z子は恐怖にかられ彼女たちと目を合わせることができない。睦月が下を向くなと厳しい口調で言うとZ子は一瞬だけ目を合わせた。睦月がZ子を見て笑うと如月、弥生がそれに続く。


職員1「あんなところで何をしているんだ?」


この学校の職員は決まった日に2人1組で学校の安全のため見回りを行っている。彼らは睦月たちを見るなり不審に感じた。接近する職員の気配を感じとった睦月たちは話題を変え、あたかもZ子が友人であるかのような振る舞いをする。


職員1「睦月さん」

睦月「なにかご用ですか?」

職員2「ここで何をしているのかと思ったので話しかけました」

如月「お話をしていただけですけど」

弥生「変に映っちゃいました?」

Z子「……」


職員2人はZ子の表情が気にはなったものの生徒会トップ3の睦月たちが秩序を乱す行為をするはずがないと信じた。そして睦月たちの愛想が良かったため、職員たちは異常なしとその場を去った。その後、睦月たちは愛想良くできなかったとZ子に罵声を浴びせた。冬奈にこっそり見られていたとも知らず。


冬奈「エラいもん見ちまったぜ」

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