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ハルカアキ  作者: 珈琲之助
生徒会長と代表
38/55

第38話

冬丸が挨拶をする順番がきたのだが何か指示があると思っておりボンヤリしていた。。そんな彼を見かねて冬子が「挨拶を」と指示を出す。


冬丸「えっなに?」

冬子「先輩、早く」

冬丸「は?」

冬子「挨拶するの!」

冬丸「OKOK挨拶するのね」

冬子「も~」


そのやり取りにレイたちは「この人は本当に生徒会長なのか」と呆気にとられていた。そうとは知らず。冬丸が姿勢を正して挨拶をした。冬丸から放たれたイケメンオーラが皆に届いたかと思いきやそうではなかった。


冬丸「俺がイケメンだからみんな騒いでんだなハハハ」

冬子「違うと思います」

冬丸「キッパリと否定」

レイ「あなた男子生徒?」

冬丸「どこからどう見ても男でしょう。えっもしかして女だと思った? いや~ん!」

レイ「……」

冬子「バカ」


冬丸がふざけるも1人を除いて誰も笑ってはいなかった。笑っていたのは冬奈しかいない。冬丸と冬子を含む全員の視線が冬奈に集中する。


冬奈「あははははは」

睦月「笑うところじゃないでしょ!」

冬奈「すんませんテヘ」

レイ「……」


レイの「いい加減にしろ」と言わんばかりの熱い視線が冬奈には届いたのか。たぶん届いてないだろうと思われる。だが睦月にはしっかり届いていた。


冬丸「あの~」

レイ「はい」

冬丸「俺、会議に参加するの初めてなんですけど、何を話せばいいんですか?」

レイ「今から説明します」

冬丸「一応、校長先生から色々聞いたんですけどわかんなくて」

レイ「説明します」

冬丸「ほんとねぇ……」

レイ「説明するって言ってるでしょ!」

冬丸「怒んなくてもいいじゃん。なぁ~」

冬子「……」


いつもなら何かを言う冬子だが会議の緊張感が効いているのか無言を貫き通した。冬丸は依然、いつもと変りはない。このときレイは思った。このような生徒会長は初めてだと。


レイ「……」


レイは冬丸のことを考えており、しばらく沈黙が続く。誰がどのような声をかけてよいのか迷っている。こんなときに冬奈が声をかけてくれないものかと誰もが思っていた。しかし、彼女の目は今にも寝落ちしそうなくらいウトウトしている。


睦月「おい」

冬奈「??」


睦月の額に青筋が立ち、気を利かせた役員が冬奈の肩を軽く揺さぶる。睦月が彼女にレイに声をかけよと目で合図を送るが彼女は何もわかっておらず疑問符を頭に幾つも浮かべている。皆、沈黙を続けるレイに早く声をかけてほしいと願っていた。次の瞬間だ。


冬丸「あの~! さっそく休憩ですか? トイレ行って来ていいですか?」

睦月「!?」

冬奈「誰?」

生徒1「ミレニアム高校の生徒会長でしょ」

冬奈「ああ~」


冬丸が呑気に生徒会室をあとにすると冬子が「すいません」と頭を下げる。しかし、このとき誰もがよく声を出してくれたと感謝をしていた。冬丸の声にレイがハッと気がついた。そして第一声が冬奈に向けたものだった。


レイ「伊藤学園高校生徒会! 春夏秋冬奈!」

冬奈「呼び捨てされちゃった」

睦月「返事をする!」

冬奈「はい!」


冬奈が元気な声を出すとレイがこんなことを言った。冬丸はあなたの親戚かと。その訳は苗字や名前、雰囲気が似ているからだ。冬奈という第三の春夏秋の登場に冬子は見入っていた。そこへ冬丸が戻ってきた。


冬丸「なんの話してんの?」


冬丸が気になったようで冬子に尋ねた。彼女は3人目の春夏秋がいたと言った。その発言に冬丸がまさかと冬子が指さす方を見た。


冬丸「戻りました」

レイ「ミレニアム高校生徒会会長! 春夏秋冬丸!」

冬丸「はいはい」

レイ「途中で退室する場合は何か言ってからにして!」

冬丸「なになになに?」

レイ「小学生じゃないんだから!」


このとき誰もがレイの沈黙のせいで会議が中断していたなど口がさけても言えなかった。そしてレイの怒りに冬子を除いて誰もが「処分を受けるだろう」と思っていた。そのとき、冬丸がレイに向かってある指摘をした。


冬丸「言いましたよ」

レイ「私は知らない」

冬丸「だろうね。ずっと黙ってたんだから」

レイ「!?」

冬丸「みんなに聞いてみろよ」

レイ「もういい」

冬丸「えっいいの?」


冬丸以外なら確実にヤバい展開になっていただろう。事実、冬丸の行動にある意味で勇気があると興味を示す者がいた。冬丸が席に着くとレイにより中断していた会議が再開した。


レイ「という訳で誰か意見のある人は?」

冬丸「はいはいは~い」

レイ「(また~)ミレニアム高校生徒会長!」

冬丸「はい!」


以外にも冬丸は積極的に発言をしている。冬子は冬丸に対して会議に参加せず居眠りをして皆を呆れさせると思っていただけに感心していた。


冬丸「以上です」

レイ「(やるじゃない)はい他!」

冬丸「はいはい!」

レイ「(まだあるの?)1人1回まで!」

冬丸「はいはい!」


この問いに関して冬丸は当てられることはなかった。次もまた次も冬丸は手を挙げて自分の考えを述べた。そして最後の議題に入った。そこでもレイは皆に意見を募る。最初に手を挙げたのはまたしても冬丸だった。


冬丸「次は会長が発言しま~す!」

冬子「えっあたし!?」


突然、ふられた冬子だがレイなど他の生徒が不思議な顔を見せた。その理由は冬丸が冬子を会長と言ったからだ。


レイ「ちょっと待って!」

冬丸「なに?」

レイ「あなた生徒会長じゃないの?」

冬丸「生徒会長ですよ」

レイ「でも、さっきあの子に会長って」

冬丸「あだ名あだ名。副会長なのにアダ名は会長なんです! はは」

レイ「……」

冬子「すいません」


レイが苦笑いをした。冬丸は冬奈と同じで何も気にはしていない。しかし、冬子はかなり動揺していたのかレイやほかのメンバーに向けて謝った。


レイ「(なんなの)はい、あなたの考えを聞かせて」

冬子「えっ」

レイ「さっきの議題に関する意見をお願いします!」

冬子「ああえっと……議題、なんでしたっけ?」

レイ「……」


レイに対してそのような発言が出たと冬丸と冬奈を除く誰もが驚いた。冬子は反省しているのだがレイは唖然として言葉を失っている。


冬丸「議題は……」

冬子「ありがとうございます」

冬丸「レイちゃんレイちゃん」

レイ「レイちゃん!?」


レイは今まで生徒会連合の役員に呼び捨てされたことがない。ましてや「ちゃん」付けなど論外だ。彼女は冬丸の呼びかけに対し、面白いヤツが入って来たと興味を示し始めた。


レイ「なにか?」

冬丸「会長が議題に対して考え中なんで少し待っててください」

レイ「わかりました。今から1分で考えてください」

冬子「はい!」

レイ「始め!」

冬丸「さぁ~どんな発言がでるかにゃ~」


と冬丸がリズムに乗せて言った瞬間、レイは冬奈と似ているところがあると彼と見つめていた。と同時に冬奈と本当に何の血縁関係もないのかと疑問に思っていた。それから数十分後、色々あった伊藤学園生徒会連合定期ウェブ会議は終わった。


冬丸「終わった~」

冬子「先輩」

冬丸「なに?」

冬子「さっきはありがとうございました」

冬丸「え~っとなんだっけ?」

冬子「考えるチャンスを与えてくれたことです」

冬丸「あぁそれね。よかったな」

冬子「はい」

冬丸「それじゃ帰りますか」

冬子「帰りましょう」


てな雰囲気で2人は生徒会の活動を終えて帰路についた。

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