第32話
冬子「最後は空手同好会ですね」
冬丸「まだやるの~」
冬子「行きましょう!」
冬丸「行ってらっしゃ~い」
冬子「ギロッ」
冬丸「頑張るぞ!」
冬丸が満面の笑みでやる気を見せた後、チラっと冬子を見た。一瞬、恐ろしくなっていた冬子が元に戻っていた。そして生徒会一同は空手同好会の練習場に辿りついた。
部員1「大会が近いからパス」
部員2「はい、帰った帰った」
冬丸「帰ろっか」
冬子「ダメです!」
冬丸が部員にやらないわけにはいかないと話すも聞き入れてはくれない。冬子も参戦してなんとか部活調査できないかとお願いした。しかし、相手にしてくれるはずもなく挙句の果てには締め出されてしまった。
冬子「なんなのよ!」
冬丸「締め出されちゃった」
冬子「同好会の分際が調子に乗りやがって!」
冬丸「相手は空手集団だよ。恐ろしや~」
冬子「乗り込んでやりましょう!」
冬丸「会長カッコイーっ!」
冬子「行きましょう!」
冬丸「ちょいちょいちょいちょいちょい!」
冬子は冬丸を盾にして空手同好会の練習場の扉を開けて進入した。部員たちは練習を止めて2人に唖然としている。そのときだ。P子と組手をしていたQ美が冬丸めがけて技をかけてきた。P子が危ないと言うがQ美は無我夢中で取り組んでいたのか聞こえていない。
冬丸「!!」
Q美「やーっ!」
冬丸「おっと」
Q美「やーやーやー!!」
冬丸「ほいほいほい」
Q美の突きを冬丸が可憐に受け止めていく。冬子やP子、周囲の部員たちはすごいと見入っていた。Q美と冬丸の息の合った組手はしばらく続いた。そしてスキを見て冬丸がQ美の尻を蹴った。
冬丸「いい加減にせい!」
Q美「きゃっ」
冬丸「リアクション可愛いね」
Q美「ちょっとP子!ってアレ?」
冬丸「パコパコは向こう」
Q美「あーっ! ララ美さんの彼氏!」
部員たち「ララ美さんの彼氏だって!?」
Q美の一言にP子は頷き、部員たちは驚きの声を上げた。冬子は何が起きたのか驚いている。Q美とP子以外の部員が冬丸に「部活動調査」に協力しなかったことに頭を下げて謝ってきた。その光景に冬丸は彼氏ではないと言いたいところだが利用しないのはもったいないと腰に手を当て、胸を張った。
冬丸「部活動調査に協力してくれる?」
部長「はい!」
冬丸「ありがとう。冬子くん」
冬子「くん!?」
冬丸「あとは頼んだよ」
冬丸は上品に冬子に言うと練習場を後にしようとした。だが一瞬で冬子に捕まってしまう。そのやりとりを目の当たりにしたP子とQ美は本当に生徒会長なのだろうかと思った。
冬子「え~っと」
冬子が活動内容や部員数を部長から聞き出しメモしていく。最後に冬子はアンケートの記入を部長に頼んだ。部長がそれを記入しているとき冬丸は部員たちに蹴りの威力を確かめようとしていた。
部員「本当にいいんですか?」
冬丸「いいよバシっといっちゃって!」
部員「どうなっても知りませんよ」
冬丸「おう!」
部員が蹴りの姿勢を取り、冬丸がお尻を突き出す。そして部員が冬丸の尻を蹴ろうとしたときだった。
冬丸「あっ」
部員「ちょっと!」
冬丸「あ~悪ぃ悪ぃ!」
部員「クサーいっ!」
冬子「……」
遠くから彼らの様子を見ていた冬子がバカみたいと呆れていた。そんな彼女にP子とQ美が話しかけた。それは冬丸のことだ。
P子「あの人本当に生徒会長なの?」
冬子「そだよ」
Q美「本当だったんだ。生徒会長ってさ、なんかこうさっ」
冬子「でしょー」
P子「いつもあんな感じなの?」
冬子「そだよ。陽気というかバカというか」
Q美「頼りないでしょ」
冬子「まぁね。でも、いざという時は頼りになるかな」
P子とQ美「へぇー」
P子とQ美は本当にいざという時に頼りになるのだろうかと部員に蹴られる寸前の冬丸をじっと見つめていた。部長ができましたと冬子に言い、空手同好会の部活動調査が幕を閉じようとした時だ。部員から猛烈な一発をくらった冬丸は涙目になって尻を両手で押さえ、ピョンピョン飛び跳ねた。
冬子「バカ」
冬丸「あ~痛ってぇ」
生徒会一行は空手同好会に礼を言い、御茶野のもとへ向かった。しばらく廊下を歩いていると壁にふわっと奇妙な雰囲気の扉が出現した。冬子が歩くのを止めた。
冬丸「どったの?」
冬子「まだ1つ残っていました」
冬丸「えっ」
冬子「ここです」
冬丸「会長?」
冬子「入りましょう」
冬丸「会長、なんだか様子が変だよ」
冬子「そんなことはありません」
冬丸「急に顔色が悪く……ちょっと!」
突然、顔色と様子を急変させた冬子がヤバさを醸し出す扉を開けて呪われたように中へ入る。冬丸は足がすくんで中に入ろうとしない。そんな彼に冬子は手を差し伸べて中に引きずりこもうとする。
冬丸「ちょっとなんだよ!」
冬子「おいで」
冬丸「会長! どうしちゃったんだよ!」
冬子「カモーン!」
冬丸「うわぁ!!」
冬丸は中に入った途端、周囲を見渡した。至って普通の教室だ。冬丸は出るぞと扉を開けようとする。しかし、固まっておりビクともしなかった。ふと冬丸が下を見ると誰かの足が見えた。それを辿っていくと冬子が倒れているのに気が付いた。
冬丸「会長!」
冬子「……」
冬丸「会長! しっかりしろ!」
冬丸が何度も声をかけるも冬子は目を覚まさない。冬丸はこのままこの中から出られないのかと床に腰を下ろして困り果てていた。そんな彼にある女子が声をかけた。
???「何部がいい?」
冬丸「!?」




