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ハルカアキ  作者: 珈琲之助
不思議な体験をした生徒会長
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第28話

冬丸の登場にアノ人について議論していた生徒は生徒会長のことだったのかと冬子の行動に納得していた。このとき冬丸は冬子から喧嘩をしている2人について空手同好会のメンバーだと聞かされていなかった。何も知らない冬丸が彼女らの側に歩み寄ろうとするもすぐに行こうとはしなかった。


冬丸「なっなぁ」

冬子「早くしてください」

冬丸「なっなんか激しくない?」

冬子「気のせいですよ」

冬丸「なんかコワいんだけど」

冬子「大丈夫ですよ」


冬丸は思った。喧嘩をしているのは只者ではないと。しかし、冬子は簡単に抑えることができると言っている。冬丸は彼女を信じて恐る恐る喧嘩中の2人に接近した。


冬丸「そこまでだ!」

P子とQ美「あ!」

冬丸「生徒会長の春夏秋冬丸だ! おとなしくしろ!」

P子「なんだてめぇ!」

冬丸「あっいや……その……ねっ」

Q美「邪魔するな!」


P子とQ美の殺気が冬丸にビビっと伝わった。これ以上、彼女たちを刺激するのはよくないと冬丸は冬子の元に戻り「ダメでした」と言った。そんな彼に冬子や周囲の女子らが呆れ顔を見せた。そして再チャレンジと言わんばかりに冬子が冬丸の背中を押した。冬丸は恐怖を感じながら喧嘩を止めさせることを念頭に勢いでQ美とP子の間に入って大の字になった。


Q美「なによアンタ!」

P子「そこどいて!」

冬丸「喧嘩はやめましょう! 学校は! 喧嘩をするところではない!」


冬丸は目の前にいたP子と目が合うなりクールな笑みを見せた。P子はその顔がウザかったのか冬丸の大事なところを蹴った。思い切りだったのかチーンという音とともに冬丸の体に激震が走る。そして彼は大事なところを抑えて苦しみながらその場に倒れた。その光景にバトルが一時、中断した。


Q美「あんたなにやってんのよ!」

P子「仕方ないでしょう!」

Q美「謝んなよ!」

P子「こいつが邪魔するから悪いんでしょう!」

Q美「なによ!」

P子「あ!」


悶絶してのたうち回る冬丸をよそにQ美とP子によるバトルが再開した。冬丸が地面を這いつくばるように冬子たちに助けを求めた。その時、Q美の片足が冬丸の背に乗った。力強く踏みつぶされたのか冬丸から変な声が出た。


冬子「先輩! しっかりしてください!」


冬子や周囲にいた女子によって冬丸はズルズルと引きずられて救出された。冬丸はウヒーとしばらく動ける状態ではなかった。そんな冬丸にある名案が頭に浮かんだ。


冬丸「アイツ呼んで来る!」


冬丸はサッと立ち上がり大事なところをトントンと整えアイツのところへ駆けて行った。アイツとは誰のことかと皆が冬丸の行動に疑問を感じていた。冬丸が屋上の扉を開け、真剣な眼差しでその2人の目の前に仁王立ちをした。


夏男「よう冬丸。どうした? 真剣な顔して」

冬丸「緊急事態だ」

夏男「緊急事態?」

冬丸「実はよう」


冬丸が夏男の耳元で春子に聞こえぬよう事情を説明した。春子は何を話しているのだろうとイチャイチャを邪魔されたことにイラっとし始めていた。話を終えた冬丸が手を引いて夏男を現場へ連れて行こうとする。


春子「ちょっと!」


春子は夏男と一緒にいたかった。その思いから冬丸の手を夏男から離した。すると冬丸がカッコよく春子に「緊急事態なんだ」と言った。春子は冬丸に興味がないのか無表情を貫いた。


冬丸「そういうことだから」

春子「行かないで」

冬丸「わかった。俺が側にいるよ」

夏男「コラっ」


悲しい顔をする春子に夏男が「すぐ戻ってくるから」と優しく言った。その直後、春子と夏男がハートに包まれそうになった。冬丸は恥ずかしそうにするが緊急事態だと夏男の手を掴み颯爽と現場へと急いだ。当然、春子も着いて来る。


冬丸「まだやってら」

夏男「喧嘩か?」

冬丸「これがさぁ中々終わんなくてよ~」

夏男「俺にどうしろと?」

冬丸「あの中に入ってくれればそれでいい」

夏男「はぁ!?」

冬丸「はいはい行ってらっしゃ~い」

夏男「ヤダよ」

冬丸「頼むよ。お前しかいねぇんだよ」

夏男「どういう意味だよ?」


訳が分からぬまま夏男は冬丸に背中を押された衝動でQ美とP子の間に入った。夏男に2人の殺気が伝わる。冬丸は自分と同じで大事なところを攻撃されるのではないかと思った次の瞬間だ。Q美とP子の怒りがうそのように鎮静化した。このとき2人は夏男に見とれていたのだ。


女子「誰あの人」


周囲の女子たちも夏男のイケメンにうっとりとしていた。次第に夏男は大勢の女子たちに囲まれた。夏男は困惑している。


春子「喧嘩、終わりましたね」

冬丸「終わったね」

春子「早く夏男をここへお願いします」

冬丸「もう少し待ってね」

春子「イヤです」

冬丸「俺がいるだろ」

春子「早くして下さい」

冬丸「はい」


冬丸は行儀よく春子に返事をするも危害を恐れて夏男の救出に行くことができない。だから待ってほしいと春子を説得するも中々、納得してくれない。それを見かねた冬子が夏男に群がる女子に言った。


冬子「その子、春子の彼氏なの。だから解放してやってくんない?」


女子たちの視線が春子に集中した。彼女は「夏男の彼女です」とカワイイポーズをとった。するとQ美とP子を含めた女子たちが一斉に「美男美女カップルだー!」と騒ぎ始めた。


夏男「じゃっ俺はこれで」


夏男がイケメンオーラを全開にして春子のところに潔く歩み寄った。彼女の側に来たとき、夏男がQ美とP子の方を向いて甘い声を放った。それに2人はズキュンと胸を撃たれたのかトロけてしまった。


夏男「みんないい子たちでよかったよ」


夏男が春子と仲良く歩き去る光景に女子たちは「理想的」など感激していた。このとき冬丸は夏男との格差に難しい顔を見せた。そんな彼に冬子があることを言った。


冬子「先輩」

冬丸「なに?」

冬子「実はあの2人……空手同好会のメンバーでした!」

冬丸「!!」

冬子「すいませーん!」

冬丸「早く言ってよーっ! 俺、大事なところ蹴られたんだぜ!」


真実を知った冬丸は始めから知っていたら大事なところを蹴られずに済んだとその場に落胆した。冬丸がヘナヘナになって崩れたまさにそのときだ。あの不気味な雰囲気を醸し出す扉が妙な光を放った。

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