第24話
冬丸「夏男」
夏男「おう」
冬丸「今までかかってたのか」
夏男「そうなんだよ」
夏男が手を洗っているとき冬丸がやってきた。2人は一緒にトイレをあとにしようとしたときだ。大急ぎで冬子が駆け寄ってきた。
冬子「大変です!」
冬丸「どうしたの?」
冬子「春子が!」
彼らは大慌てで職員室へやってきた。夏男が女性教員から事情を聞かれている春子に近づく。そして夏男は何があったのか真剣な眼差しで春子に詰め寄った。
御茶野「余計な口出しをするな。今、話を聞いているところだ」
夏男「なんで……」
御茶野「お前の気持ちはわかる」
夏男「先生! 俺、学校の周辺探して来ます!」
御茶野「そんなことをしてどうするんだ」
夏男「だって!」
ララ美「不審者はとっくに電車に乗った」
ララ美が夏男に追いかけたけど逃げられてしまったと報告する。夏男は肩を落として下を向いた。御茶野は冬丸たちに遅くなったら危険だと帰宅するよう促した。
秋美「わかりました」
音子が音楽室でピアノを弾く秋美やダンス室で活動をするムメモたちにも同様の指示が出た。秋美が音楽室を出て正門へ向かっているときだ。イロハがスマートフォンを介して喋っている光景を見てしまった。ムメモたちも同じ光景を目撃したのだが両者とも気にはしていなかった。
冬丸「イロハ先生怪しくない?」
ララ美「どうしてイロハなの?」
冬丸「なんとなく」
ルル香「なんとなくってウケる」
冬丸「そう?」
リリ子「彼っていつもこうなの?」
冬子「いつもこんな感じですよ」
と冬丸たちはしゃべりながら最寄り駅まで集団で歩いていた。ふとララ美がスマートフォンで話すフードを深くかぶる男性を見て言った。
ララ美「ちょうどああいう感じ」
冬丸「へぇ~」
ララ美「身長も体型もそっくり」
冬丸「ああいう感じかぁ」
ルル香「あんたたち失礼だよ」
とかなんとか話していると彼の声が聞こえてきた。その話声に彼らの足が止まる。
男「あともう少しのところでお前んとこの生徒が絡んできやがったんだよ」
イロハ「それは残念ね」
男「その1人が俺に生意気な口ききやがったんだ」
イロハ「まぁ」
男「逃げれると思ったのに追いかけてくるし。ホント散々だったよ」
イロハ「いいこと教えてあげる」
男「なんだよ」
イロハ「あなたが犯そうとした生徒」
男「今そっちにいる!?」
イロハ「ええ。先生たちに事情を聞かれてる」
男「マジかよ」
イロハ「また厳しくなりそうね」
男「今度はうまいことやらねぇとなぁ」
イロハ「そうね」
男「また教えてくれよ。今度はおとなしそうなヤツ」
ララ美が話しかけようとしているが冬子とリリ子が危ないと引き留める。ルル香がアイツかもしれないとララ美と一緒に行こうとしている。冬丸は本当にアイツが犯人なのかと信じていない。彼らが戸惑いを見せていると男が電話を終えた。なにやら視線を感じると男がララ美たちを見た。その瞬間、かぶっていたフードが取れた。
ララ美「あーっ!」
リリ子「あいつだ!」
ルル香「いたーっ!」
男「あの時、追いかけてきた! あっ」
男はつい口に出してしまったと動揺し、変な汗をかきながら彼女たちから遠ざかる。逃がすまいとララ美たちもあとを追う。徐々に男のスピードが速くなった。冬丸も冬子もララ美たちとともに男の後を追う。
冬丸「見失った!」
あのあと見失ったのだが後日、ララ美や冬丸たちの証言で男は逮捕された。そして男の供述からイロハが関与していることが明らかとなった。
園子「懲戒解雇を言い渡します」
イロハ「私は何もしていません!」
珈琲谷「イロハ先生! 落ち着きなさい」
イロハ「!!」
珈琲谷「イロハ先生!」
園子「待ちなさい!」
早朝、生徒のいない時間帯に校長室にてイロハが園子から処分を言い渡された。彼女は何を思ったのか珈琲谷の静止を振り払い校長室から逃亡した。何も知らない御茶野たち2、3人の教員が正門で生徒たちを見守っていた。冬丸がいつものように正門を通過して校庭をのんびり歩いていた時だった。
珈琲谷「イロハ先生!」
イロハ「生徒会長春夏秋冬丸―っ!!」
イロハは隠し持っていた刃物を片手に冬丸の前に姿を現した。彼女の変わり果てた姿に冬丸のみならず周囲の生徒たちも驚いている。イロハは全部お前のせいだとなぜか冬丸に刃物を向けて近づいた。
冬丸「……」
冬丸はどうしてよいものか息をのむ。御茶野が冬丸に離れろと大声を出したもののすぐに行動に出せない。冬子や夏男、F女3、周囲の人間が大惨事になるだろうと想像した。その時だ。誰もが予想だにしない出来事が起きた。
イロハ「!?」
タチが校庭にある箒をうまいこと操りイロハが持つ武器を地面に落とした。そしてタチは素早く彼女の背と足を打った。それはまるでアクション映画のようだ。イロハはタチの攻撃によって失敗に終わり膝から崩れおちた。冬丸は安心したのか腰を抜かしたかのようにその場に座り込む。御茶野が複数の教員とともにイロハの元へ駆け寄ろうとした次の瞬間。またもや騒動が起きた。
夏男「タチ、それ貸してくれ」
夏男がタチから箒を受け取るなり掃く部分を取った。イロハも何事かと警戒している。御茶野がやめろと言うも夏男は言うことを聞かない。
夏男「聞きましたよ」
イロハ「……」
夏男「あの日、俺を呼び出したのは春子を男と合わせる為だって」
イロハ「……」
夏男「ふざけんな!!」
夏男はイロハに激怒して箒を振り下ろそうと構えた。その瞬間、冬丸が大の字のごとくイロハの前に立ちはだかった。
「そこまでだ」




