表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハルカアキ  作者: 珈琲之助
先生に説教する生徒会長
21/55

第21話

放課後、冬丸が購買で買った200ミリリットルの牛乳を飲みながら生徒会室にやってきた。教室には冬子がイヤホンで音楽をノリノリで聴いていた。冬丸もそれにつられてノリノリでいつもの席に荷物を置いた。


冬丸「ノリノリだねぇ」


冬丸がそう言うも冬子には届いていない。着席した冬丸は牛乳を飲みながら冬子を見ていた。彼は気づくのを楽しみしていたのだ。


冬子「イェーイ!」

冬丸「やっほ~」

冬子「!?」


恥ずかしがる冬子に冬丸はにっこりと軽く手を振った。当然、彼女はいつからいたのか冬丸に聞く。彼は牛乳パックをゴミ箱目掛けて投げると「ついさっき」と答えた。


冬丸「入った! 入った入った!」


一発で入れることに成功した冬丸は小学生のように喜んだ。その姿を目の当たりにした冬子はノリノリで歌っていたことに関心がなくてよかったとホッとした。が、そうではなかった。


冬丸「ノリノリでなに聞いてたの?」

冬子「なんでもいいでしょう」

冬丸「気になるじゃん」

冬子「気にしないでください」

冬丸「って言われると……」

冬子「気になるんですよね~」

冬丸「わかってんじゃん」


冬子はため息をついたのち彼に○○の曲を聞いていたと告白した。すると冬丸が聞かせてほしいとイヤホンを要求。当然、冬子はイヤですとキッパリ断った。


冬子「あっそうそう」

冬丸「なに?」

冬子「決まりましたから」

冬丸「そっか決まっちゃったか」

冬子「下校時間ですのでよろしくお願いします」

冬丸「下校時間ね」

冬子「なんのことか分かってるんですか?」

冬丸「見守り活動のことだろ」

冬子「えっなんで知ってるの?」

冬丸「生徒会長ですから~」


このとき冬子は思う。御茶野から冬丸にも伝えておくよう指示が出た。冬丸は知らないはずなのにどうして知っていたのか。適当に言ったのか。それとも私と御茶野の会話を隠れて聞いていたのか。冬子はその真相を尋ねることはなかった。


冬丸「それにしてもよ」

冬子「なんですか?」

冬丸「生徒の俺たちが下校する生徒を見守ってどうすんだよ」

冬子「いいじゃないですか」

冬丸「俺が不審者に出会っちゃったらどうすんだよ。まぁお前は大丈夫だと思うけど」

冬子「なにそれ。そんな訳ないでしょう」

冬丸「とかなんとか言っちゃって、カンフーとかできるんでしょ」

冬子「あのねぇ」

冬丸「ポジェット蘭みたいにこうこうこうやってさ」

冬子「それねこねこニャン子物語ですよね」

冬丸「そうそう」

冬子「ドラマと現実は違うんですよ」

冬丸「知ってるよ。当たり前じゃんハハハ」


冬子は冬丸に見えないところで静かにこぶしを握りしめた。冬丸はそれに気づくことなく笑っていた。そこへ御茶野が入ってきた。御茶野はどういう訳か睨みを効かせてて教卓をバン!っと叩き、冬丸と冬子を見た。2人に緊張が走る。御茶野は言った。


御茶野「不審者が出たという情報は今や校内の誰もが知っている。春夏秋も春夏秋から聞いていると思うが生徒会も見守り活動に参加し、不審者の警戒に当たる!」

冬丸「春夏秋が春夏秋に……!?」


この時、冬丸は冬子の苗字が春夏秋であると改めて知った。一方の冬子は不安で御茶野にこんなことを尋ねた。


冬子「先生!」

御茶野「なんだ」

冬子「活動中に不審者が現れたらどうすればいいんですか?」

御茶野「その時は先生に知らせろ」

冬子「はい」

冬丸「会長どうしたの?」

冬子「怖くて」

冬丸「大丈夫大丈夫」


もしもの時は御茶野が不審者を八つ裂きにして地獄へ送ってくれると冬丸は言った。御茶野も大切な生徒を襲おうとした不審者を生かしておくべきではないと口にした。


冬丸「だから安心しろって」

冬子「はい」

御茶野「必ず滅多打ちにしてやるヘヘヘヘヘっ」

冬丸「先生コワっ」


それから本日の生徒会が終わった。施錠をして鍵を職員室に戻して2人は帰路につく。正門を出た時だ。冬子がいつもとは違い警戒していた。


冬丸「そんな警戒しなくても」

冬子「だっだって」

冬丸「そうそういる訳ないじゃん」

冬子「でっでも……」

冬丸「会長可愛いすぎ」

冬子「もう! こんな時になに言ってるんですか」

冬丸「あ!」

冬子「なっなに! なんですか!?」

冬丸「忘れものしちゃった。じゃあな」

冬子「ちょっと!」

冬丸「なんだよ」

冬子「着いていきます」

冬丸「来なくていいよ」


冬子は1人で帰るのがコワいのか冬丸の後を追った。冬丸は着いてくるなと駆け足になり冬子から離れようとする。しかし、冬子は彼の側から離れることはなかった。


冬丸「こわいんだ」

冬子「そうですけどなにか」

冬丸「開き直った」

冬子「先輩はこわくないんですか?」

冬丸「幽霊とか信じないタイプだからねぇ」

冬子「今そんな話してるんじゃないんですけど」

冬丸「う~ら~め~し~や~」


冬丸が幽霊のマネを見せると冬子が殺気を立った。冬丸は思った。これができるのであれば1人でも大丈夫なのではないかと。


冬丸「あったあった」

冬子「先輩まだですか?」

冬丸「今いく」

御茶野「……」


冬子は御茶野に気づいていた。何も知らない冬丸が教室から出た。そして御茶野と目が合うなり飛び跳ねた。その勢いで冬丸は不審者が出たと大声を出してしまう。


御茶野「誰が不審者だ」

冬丸「なんだ~先生か」

御茶野「こんな時間に何をしていた?」

冬丸「忘れものを取りに……」

御茶野「そうか。終わったなら早く帰れ」

冬丸「は~い。失礼します」


と冬丸は言い、冬子をワザと遠ざけた。すると冬子がサッと冬丸の側についた。結局、何事もなく2人は世間話をしながら帰路についた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ