第18話
本日は快晴なり。実に球技大会日和だ。この日、ミレニアム高校では2年生による球技大会が催されていた。その球技とはドッヂボールだ。1クラスに男子生徒が2名いるかいないか。そういう状況なので男女混合で行われていた。
イロハ「只今より本年度球技大会2学年の部決勝! 2年10組対2年9組の試合を行います!」
女性教員・イロハの宣言後、決勝戦が始まった。両チーム死闘の末、10組から夏男が脱落して冬丸のみとなった。彼にボールが当たれば9組の勝利となる。相手チームはララ美と球技が苦手なタチ・ツテトが残っていた。
タチ「ひーっ!」
ララ美「タチ!」
タチ「だっだって!」
ララ美「何してんの!」
タチ「無理だよ~」
ララ美「男でしょ!」
タチ「君より男気ないかも」
ララ美「あ!?」
タチ「おっと!」
ララ美「よけるな!」
タチ「ひゃーっ!」
ララ美「もう~」
タチの可憐すぎる交わしに見とれている生徒もいたのだが当然、呆れている生徒もいた。ララ美に至っては睨みを利かせている。そんな彼女の視線を感じたタチは震え上がった。だがタチは怖すぎるがゆえにボールを奪うことを考えていない。ついには9組のクラスメートがタチに向けてヤジを飛ばした。
イロハ「こらこらこら! 静かに! それと生徒会長!」
冬丸「はい?」
イロハ「男子生徒ばかり狙うの禁止!」
冬丸「わかりました」
イロハ「はい始め!」
冬丸「タチ!」
イロハ「こら!」
冬丸「これで終わりだ!」
ピンチに陥ったタチはどうしようか悩んだ末、あることを実行する。この時のララ美は冬丸のキリっとした顔にうっとりとしていた。そんな中、タチが行動を起こす。
夏男「マジか」
タチの行動に夏男たちが唖然とした。なぜならタチがララ美を盾にし始めたからだ。これにはララ美も驚いている。
冬丸「そうくるか。いくぞ!」
タチ「こい!」
ララ美「ちょっと!」
冬丸の投げたボールは夏男に渡った。その瞬間、タチがララ美の後ろに回った。タチの行動に9組の生徒が批判を浴びせた。それもまたイロハによって沈静化する。
ララ美「やめてよ!」
タチ「……」
ララ美「聞いてんの!」
タチとララ美が前になったり後ろになったりとイタチごっこが続く。中々、終わらない行動に試合が一時中断してしまった。
冬丸「ハハハハハ」
皆が呆れる中、笑っていたのは冬丸だけだった。ついにララ美の堪忍袋の緒が切れた。彼女はいい加減にしろと言ってタチの襟を鷲掴みした。そして彼を夏男と向かい合わせにする。ララ美は彼の後ろで仁王立ちしていた。
ララ美「動いたらぶっ殺す」
タチ「ええ!」
ララ美は強烈な一言を口にした。これでタチは動くことができなくなった。2度目のピンチに苛まれたタチに向けて夏男が強烈な一発を送った。
夏男「おりゃ!」
タチ「ムリだーっ!?」
タチがボールの接近に伴いしゃがんだ。そのボールはララ美の顔面に直撃しようかという勢いだ。誰もが大惨事になると思っていたのも束の間。誰もが見とれるほどララ美は可憐な足技でボールを冬丸へと送った。それによりボールは剛速球と化して冬丸の顔面にヒットした。
冬丸「!?」
冬丸はブーっと鼻血を出し、白目を向いて倒れてしまった。この一撃に周囲の生徒や味方であるはずの9組までもが蒼然とする。周りが静まり返る中、ララ美は腰に手を当ててドヤ顔を見せた。
冬丸「まっまだ……まだ終わっちゃいねぇ」
気絶こそしなかった冬丸はなんとか起き上がり鼻を抑えながらララ美を見た。彼女は好意を抱いているはずの相手に危害を加えたにも関わらず優勝した喜びを態度で示していた。
イロハ「足は反則ーっ!」
ララ美「えーっ!?」
イロハの判定に味方もうんうんと納得していた。ララ美は不貞腐れて呆然と膝から崩れ落ちた。試合が再開した瞬間、冬丸は鼻血を垂らしながらではあるが立つことができた。
タチ「ヤバっ」
ララ美「マジ!?」
この時、タチやララ美はもとより。敵味方関係なく試合を見守っていた全ての人が冬丸のパワーに驚愕した。彼はフラフラしながら狙いを定めることなく攻撃を開始。冬丸から放たれた一発は警戒するのを忘れた2人に当たってしまう。
イロハ「試合終了! 本年度球技大会2学年の部! 優勝は2年10組!」
10組の優勝が決まるも冬丸に注目していたのか誰も喜ぶ様子はない。変な空気が流れていた。するとララ美が倒れようとする冬丸を支えた。
ララ美「冬丸様!」
冬丸「(カクっと気を失う)」
ララ美「冬丸様? えっマジ? えっちょっと冬丸―っ!?」
気絶した冬丸は保健室へと運ばれた。冬丸が目を覚ますとララ美が心配そうに。今にも泣き出しそうな顔で見守っていた……かに見えた。
冬丸「ララ美さん?」
御茶野「大丈夫か春夏秋!」
冬丸「!?」
ララ美が御茶野に変わった瞬間、冬丸はまた気を失った。御茶野は何が起きたのかキョトンとしている。それを見た保健子はクスっと笑ってしまった。
園子「生徒会長君は?」
御茶野「まだ気を失っています」
健子「それがですねぇ」
園子「??」
御茶野「保先生」
健子「ごめんなさ~い」
健子は急いでかけつけた園子の前で笑いをこらえることができなかった。




