第17話
冬丸が保健室に到着した。そこで待っていたのは健子と御茶野。そして校長だった。冬丸は健子らとともにクケ子を病床にゆっくり下ろした。
園子「ゆっくりね」
作業が完了後、冬丸のスタミナが切れた。その場にくだばった彼に健子がドリンクを手渡した。それを一気に飲み干した冬丸は落ち着きを取り戻した。
冬丸「間に合ってよかった」
園子「生徒会長君」
冬丸「あっ校長先生!」
園子「急病の生徒を運んでくれてありがとう」
冬丸「はい!」
園子「ゆっくりしていきなさい。では私はこれで」
園子は上機嫌でスキップをしながら保健室を後にした。
健子「ありがとね」
御茶野「お前がここまでする奴だとは思わなかった。よくやってくれた」
冬丸「俺、生徒会長ですから」
冬丸は一休みをして運動場に戻った。その頃はすでに全員マラソンを終えて後は閉会式のみとなっていた。閉会式の時、冬丸と冬子は結果を伝えるため朝礼台近くの放送席にいた。
冬丸「では、本年度マラソン大会男子の部の結果を発表します」
冬丸は男子の結果が記されている用紙を見ながら1位から順に伝えていく。優勝はもちろん秋矢だ。2位は夏男で3位は……と冬丸は読み上げる。最後、5位に自分の名前があった。記録の欄には棄権と記されていた。彼は残念な気持ちになったものの仕方ないと前を向いた。冬丸が着席したあと冬子が女子の上位5名の名を読み上げる。その後、優勝した男女が前に出て一言、喜びの言葉を口にする。最初に女子が話をした。それが終わると秋矢が朝礼台に上がった。
冬丸「……」
冬丸は嬉しそうに話す秋矢を見て俯いた。秋矢が話を終えて朝礼台を降りた。列に戻る時、彼は何か言いたそうな感じで冬丸を一目見た。だが諦めたのかそのまま列に戻った。それから校長の話が始まった。園子は優勝した男女に加え、冬丸たちクケ子の対応にあたった生徒たちを称賛した。
園子「これにて本年度ミレニアム高等学校マラソン大会を終わります」
その日の放課後、秋矢はムメモたちとダンス室にいた。緊迫した空気が流れる中、秋矢が彼女たちの前に立っている。
秋矢「悪かった」
ムメモ「秋矢君が謝った!」
秋矢が皆を前に頭を下げて謝罪するという予想外の行動に部員たちは驚いていた。彼は優勝にこだわり過ぎて冬丸の走行を自ら妨害したことを自白した。
秋矢「俺のやったことは最低だ。責任を取り、今日限りでダンス部を辞める」
退部宣言をすれば皆が納得して許してくれると秋矢はそう思っていた。しかし、現実はそう甘くはなかった。
秋矢「今まで本当に……」
ぬねの「あの!」
秋矢「……」
ぬねの「私は今まであなたに何度も何回も罵倒されました」
秋矢「……」
ぬねの「精神的な傷を負いました」
秋矢「……」
ぬねの「私はあなたが退部することを大いに喜んでいます。今後、2度とあたしたちの前に姿を見せないでください」
秋矢「……」
ぬねの「今すぐ……今すぐ出てって!!」
ぬねのの迫力に圧倒された秋矢は奥歯をかみしめながらダンス室を出た。扉を閉め、彼は壁伝いに腰を下ろした。中では部員たちが歓喜に沸いていた。
ムメモ「ぬねの~やるじゃ~ん」
ぬねの「ありがとう!」
数日後、職員室の前にマラソン大会の結果が張り出された。生徒が群がる中、冬丸が自分のところを見ると「棄権」の文字が書いてあった。
冬丸「あ~あ」
夏男「残念だったな」
冬丸「まぁな」
夏男「あん時のお前、超カッコよかったよ」
冬子「今度ばかりは見直しちゃったかな」
冬丸「お? 春夏秋冬子!」
冬子「おはようございま~す」
冬丸たちが楽しく会話をしている時だ。クケ子がやってきた。彼女は冬丸に話しかけるなりマラソン大会での出来事を謝った。
クケ子「ごめんなさい!」
冬丸「……」
クケ子「あたしのせいで記録無くなっちゃって……」
冬丸「別に謝ることじゃないだろ」
クケ子「えっ」
冬丸「急病だったんだ。仕方ないじゃん」
クケ子「でも」
冬丸「俺は自分から棄権を選択した」
クケ子「……」
冬丸「元気出せよ。そんな顔してたらまたお腹キューってなっちゃうぞ」
冬丸はにっこりと笑顔を見せた。そんな彼にクケ子は笑顔で深くお辞儀をした。夏男や冬子、周囲の生徒はほっこりとしていた。そんな中、ララ美だけは興奮していた。
リリ子「ララ美落ち着きな」
ルル香「どーどーどー」
リリ子とルル香が今はそっとしておこうと空気を読み、冬丸にラブラブ光線を放とうとしていたララ美を落ち着かせていた。
筋「これで秋矢君の記録を上回れば春夏秋に満点を与える」
数日後、冬丸とクケ子それから彼女を介抱したララ美たちにチャンスが与えられた。それはマラソン大会を再チャレンジするというものだった。記録に応じて点数も与えられ、優勝した生徒の記録を上回ることができれば満点が得られるという。冬丸は気合を入れて挑んだ。その結果……。
冬丸「しゃーっ!!」
秋矢の記録をかなり上回る記録を打ち立てた。これを目の当たりにした誰もが驚いた。
珈琲谷「生徒会長の記録をご報告いたします」
園子「どうだった?」
珈琲谷「1位を獲得しました」
園子「さすがね。春夏秋冬丸という生徒を生徒会長に選んで正解だったね」
珈琲谷「今のところは私も同感でございます」
園子「まっ今後、どうなるかよね」
園子と珈琲谷は窓から冬子や夏男たちに1位を得たことを物凄く喜ぶ冬丸を見つめていた。
第3章を読んでいただきありがとうございます。
第4章が出るまで今しばらくお待ちくださいませ。
珈琲之助




