僕は異世界で美幼女姫様と刑事をする。〜異世界における科学捜査の手法について〜 番外編 オデンでほっこり。
久しぶりのリーヤちゃんとタケのラブラブ、ほっこりな家族話です。
どうぞ、心暖かくしてくださいませ。
「ただいまなのじゃ!」
「おかえりなさい、リーヤさん」
「おかーさん、おかえり!」
「ままぁ」
「お邪魔しておるのじゃ!」
マンション玄関口でとびかうあいさつ。
帰ってきたばかりの異世界美少女は、飛び掛かるように走ってきた2人の子供を受け止めた。
一見、女子高校生くらいに見える彼女。
満開寸前の花をイメージする様な完成寸前の美貌、それでいてどこか幼さも残しつつ悪戯っぽい表情。
濡れ羽色の長い髪、大きく見開いた金色の龍眼、小さく髪飾りにも見える巻角、すこし尖り気味の小さな耳、背で小さく羽ばたくコウモリの羽にお尻から見える細い尾。
異世界ゼムーリャの魔族種にして上級貴族たるリリーヤ姫。
「アリサにユーリ、ちゃんと賢くお留守番していたのかや?」
「うん! もう宿題も全部終わったよ。チエお姉ちゃんと一緒にアキト兄ちゃんの宿題も手伝ったの。兄ちゃん、英語苦手なんだもん」
「ままぁ、だっこぉ!」
「はいはい。ユーリは甘えん坊なのじゃ! チエ殿、いつも子守りすまんのぉ」
リーヤは我が子ユーリを抱き上げて、部屋の中に入ってきた。
「いえいえなのじゃ! ワシにとれば、孫みたいなもの。可愛くて仕方がないのじゃ!」
そんなリリーヤ姫、リーヤさんは僕の愛する奥さん、そして2人の愛すべき子供達の母親だ。
◆ ◇ ◆ ◇
「では、いただきまーす!」
「のじゃ!」
今日の夕食は「おでん」がメインディッシュ。
11月にもなり、そろそろ冬の足音が聞こえてくる日々。
頑張って仕事をしてきた妻を美味しい料理で労わるのもダンナの務めだ。
「タケ殿、今日も見事な味なのじゃ! ワシ、毎日楽しみなのじゃ!」
「チエさん。確認しておきますが、ご実家でも夕食は食べられていますよね?」
「そんなの当たり前なのじゃ! この時のための多重影分身なのじゃ! 同時多発夕食なのじゃ!」
今日も5人で賑やかに囲む夕食なのだ。
「リーヤ殿、仕事の方はどうかや? 守秘義務範囲もあるのじゃが、忙しそうにしておるように聞いておるのじゃが?」
「此方、正直チエ殿の影分身の術が欲しいのじゃ! 仕事もそうじゃが、子供達の成長をずっと間近で見ていたいのじゃ!」
リーヤは今、異世界帝国の外交官として仕事をしている。
2人目の子供を出産後、1年間の育児休暇を終えた去年から、復職。
今日も日本のお役人と難しい話をしていた。
「そうですよね。今日も沢山の方とお会いしていましたし。その代わりに日本国内での仕事なので、警護役の僕は暇でした。ですので、早めに帰ってリーヤさんや子供たちの晩御飯を作って待ってました」
僕は、今も「異世界機動隊」の一員として外交官警護の仕事についている。
まあ、その警護対象が奥様だというのが普通じゃないけれども。
「普通は家族の警護をするのは無いじゃろ? そこを押し通すとはリーヤ殿もやるのじゃ!」
「此方、タケとは仕事中でも離れたくないのじゃ! もっと言うなら本当ならアリサやユーリともずっと一緒に居たいのじゃ!」
子供たちを両手で抱くリーヤ。
異世界帝国の少年皇帝、僕やリーヤさんとは友人であり上司。
このような無理難題も、皇帝権限を行使してもらってできる限り家族の時間を長く取れるようにしてくれている。
「おかーさん。今日ねぇ、学校の体育でね、縄跳びやったの。アタシね、クラスで一番『はやぶさ』飛びが上手かったの!」
「アリサや、それはえらいのじゃ! ところで『はやぶさ』飛びとは何じゃ? 難しい飛び方なのかや?」
「えーっとね、二重飛びしながら交差飛びをするの!」
小学4年生、10歳になる長女アリサ。
金色の瞳以外は、地球人とは大きく違わない彼女だけれど、魔族種が長命であるためにハーフ種になるアリサの成長スピードは地球人よりも遅い。
おそらく体格的に7歳児、一年生の子達とほとんど変わらないくらいの小柄な姿だ。
「アリサ、ママにテストの結果も教えてあげたらどう?」
「うん、おとーさん。今日ね、全国統一テストが帰ってきたんだけど、100点いっぱいだったの!」
「それはすごいのじゃ! 流石は此方とタケの娘なのじゃ!!」
それでも知的レベルは実年齢以上に賢く、父親として自慢の娘。
どうやら、コウタ閣下の息子さん、中学2年になるアキトの宿題すら手伝っているそうだ。
……アキト君、頑張れ!
「ままぁ、おしっこぉ」
「はいはい、ちゃんと言えるようになったユーリも賢いのじゃ!」
「あ、僕がトイレに連れて行くから、リーヤさんはご飯ゆっくり食べていてね」
僕は長男ユーリを抱き上げて、トイレに行く。
そして便座に落ち込まない様に補助便座を置いて、その上にユーリを座らせた。
「はーい、ちー」
「ちー」
まだ3回に1回程度しかうまくいかないが、それでも偉いと我が子ながら思う。
ユーリは2歳になったばかり。
リーヤゆずりの小さな巻き角がチャーミングな男の子。
姉のアリサ同様、身体の成長は遅めで標準的な一歳半くらいの体格。
その代わりに、運動能力が高く一歳誕生日翌日には伝え歩きが出来るようになっていた。
今や走る事もできるようになり、正直目が離せない状態だ。
「はい、ママの処に帰るよ」
「うん!」
紙おむつを元に戻し、ユーリを抱き上げる僕。
この小さいけれども温かい命、僕の大事な宝物だ。
「ままぁ、できたよー!」
「ユーリは偉いのじゃ!」
リーヤに抱かれて嬉しそうなユーリ。
「そういえば、この家にしろユーリやアリサの面倒まで、いつもすいませんです、チエさん」
「何、お安い御用なのじゃ! アキト殿にも良い刺激じゃし、妹のサトミ殿にも良い遊び仲間なのじゃ!」
僕もリーヤさんも毎日仕事をしている関係で、子供達はいつもチエに預かってもらっている。
また、今住んでいるマンション、上の階にマサト先輩も住むチエがオーナーのもの。
何から何まで、このお人好しでおせっかい焼きでデバガメ趣味の魔神将のお世話になりっぱなしなのだ。
……サトミちゃんは、確か小学2年生だよね。もう身体はウチのアリサよりも大きいけど、仲良くしてくれているのは嬉しいよね。
チエの実家であり、コウタの実家。
今も最強お母さんのマユコが中心にある。
去年、マユコの両親が共に百歳を過ぎてすぐにほぼ同時にこの世を去り、寂しくなったとこぼしていたが、それでも入れ替わり立ち代わり関係者の子供達が現れるので、寂しさも安らいだとも。
「世代交代は進んでいくんだね」
「どうしたのじゃ、タケ殿? ワシから見ればタケ殿も母様もリーヤ殿も同じなのじゃ。ワシだけ残されるのは、もはやしょうがないのじゃ。じゃが、こうやって友の血を継ぐ新たな子達を育てられるのは、最高に幸せなのじゃ!」
すこし神妙な顔のチエ。
この優しすぎる魔神にも、永遠の命ゆえの苦悩はあるのだろう。
「まあ、湿っぽいのは終わりなのじゃ! さて、もっとオデンを要求するのじゃ!」
「此方もお代わりなのじゃ!」
「はいはい。姫様達の言われますように致します」
今日も笑いの絶えない食卓。
僕は幸せをかみ締めながら、オデンの具を継ぎ足していった。
「久しぶりに本編に出られたのじゃぁ! 作者殿、感謝なのじゃ!」
いえいえ、チエちゃん。
私こそ、いつもありがとうです。
「しかし突然の短編なのじゃな? 一体何があったのじゃ?」
いえ、数日前にリーヤちゃんのファンアートを書いてくださっています池原阿修羅様とツイッターでお話していて、おでんが美味しいという話題になったとき、リーヤちゃんが子供たちと食卓を囲んでいる風景が見えたので、急いで書いてみました。
なぜか勢いついて、結局2時間かからずに完成しました。
「なるほど、ワシもリーヤ殿も作者殿の脳内に既に住んでおるからなのじゃな」
ええ、リーヤちゃんとチエちゃんも、もう私には忘れられない「子供」ですもの。
いつでも、飛び出して来ます。
「それは嬉しいのじゃ。今後も季節ごとに書いてもらいたいのじゃ!」
了解です。
親子連れでの幸せそうな観光とか書きたいですしね。
では、他の短編や長編でまたお会いしましょう!