十話
コッコッコッーーーーー
命の気配一つ存在しない静寂の中、規則正しい足音のみがその空間に響きわたる。
そこはどこまでも白が続く場所だった。
空も大地も、上も下も、右も左も何も存在しないどこまでも白一色が続くその空間の中、規則正しい足音を響かせながら進む一つの影があった。
それはカンナギだった。
蒼紋天守とまみえたときにまとっていたローブを脱ぎ捨て目元を隠す仮面だけをそのままに空間に溶け込みそうな白い衣をまとい迷いの無い足取りで空間を進んでいく。
その白一色の中で唯一彼、いや彼女の真紅の髪のみが色をまとっていた。
自身の身の丈をも超えるほど長く伸びた真紅の髪を真珠を連ねた髪飾りで結い上げたその姿は目元が仮面で覆われていることを差し引いてもなお一服の絵画のように美しかった。
彼女は一言も言葉を発することなく無音で真白の空間を進んで行く。
ただ、ただ彼女の足音のみが響いていた真白の空間、どこまでも続くと思われたその色の中、ついに異彩を放つものが現れたのである。
それは、どこまでも青くーーーーーーー
青く澄み切った湖だった。
湖面を揺らす風もなく、まるで鏡面のように静かに凪いだ水面の中央には小さな小島が浮かんでいた。
彼女が湖に近づくと水面の一部が青白い光を放ち始めた、その光は湖の岸から、小島まで転々と、まるで飛び石のように続いていた。
彼女は歩みを止めることなくその青白い光の上を進んでいく。
すると不思議なことに青白く光っていることを除けばその下はただの水面であるはずの湖面に踏み出してなお彼女は湖に沈むことなくそこにあった。
しばらく青白い光の中を進み彼女は小島へとたどり着く。
その島には遠目にはわからなかったが、島の中央に位置する場所に大理石でできた白い瀟洒なガゼボが建っていた。
ガゼボの周りには僅かな緑とこの真白の空間に溶け込みそうな白いーーーーーーー
白い、純白の花々が咲き乱れていたーーーーーーーーー
彼女はガゼボにたどり着くと歩みを止め、ゆっくりと腰かけた。
そして、それまで彼女一人しかいなかったその空間にもう一つの影が現れる。
その影は彼女に向って恭しく頭を垂れるとそれまでの無音の静寂に包まれていた空間を細波で揺らすかのように一言、言葉を発した。
「お帰りなさいませ、我が君」
と、いうわけで今回は最後の最後に出てきた新キャラ以外一切のセリフがありません。
そのセリフに関しても「お帰りなさいませ、我が君」の一言だけ!
今回はあえてセリフなどをなしにしていたので、このセリフを最後に入れるかどうか悩みました。
言葉の通りこのキャラはカンナギの部下なので主?ボス?が帰って来た時に出迎えの言葉がないのはおかしい、だけど次の話の冒頭に持ってきて頭を下げる描写だけを入れるのも何か違う気がしたので悩んだ挙句結局最後に入れました。
今まで投降した中でこの話が何でに一番書いてて楽しかったです。
実は名前も決めていないキャラクターを出してしまった。




