七話
九割がカルファスのセリフです。
「今からおよそ半年ほど前に何者かが理に干渉していることがわかった。」
「なっ!」
理、それは世界を創造した初代蒼紋天守が作り上げた世界の根幹であり、大いなる流れ。
人は愚か神々の命運すら握るもの。
初代の跡を継いだ歴代の蒼紋天守ですら、あくまで管理をしているだけであり、非常時ならばともかく平時では干渉すらも許されないはずのもの、それを誰よりもわかっているはずのカルファスの言葉にエルネスタは思わず声を上げるが、カルファスはなおも話し続ける。
「理に干渉されていることに気づくことができたのはほんの偶然にすぎない。
下手をすれば今も気づいていなかった可能性すらあった。
だが、気づいたからにはすぐに相手を見つけ出せる自信が私にも当代にもあった。
歴代の蒼紋天守には自分の代のみではあるが理によりさだめられた命運を知る権利が初代の頃より受け継がれていたうえ、非常時には自分の代以外の命運を知ることも、干渉することも多少ではあるが許されているからな。
それらを使えば理に干渉したものをすぐに見つけ出し捕えることができるはずだった。
しかし、私たちにはそれが誰なのかわからなかった。
こんなこと本来ならば在りえぬ。当代と時代蒼紋天守が二人かがりで寝る間を惜しんで調べつくしてなお、だれが一体何の目的で理に干渉したのかわからぬのだ。
わかったのは二つだけ。
理への干渉が初代の頃から続いていたことと、天界を拠点としている痕跡があったこと、この二つだけなのだ。
・・・・・・それ以外はほんとに何もわからんのだ、いったい何のために干渉したのかも、理をどのように書き換えたのかも・・・・・・
そもそも、理が本当に書き換えられているのどうかも何一つとしてわからなかったのだ・・・・・・
だからどうか協力を頼みたい。
この天界においては次期蒼紋天守である私より、光輝天守である貴殿のほうがより強い権限を与えられている。」
長い話を終え、事の重大さに青どころか白と言っていいほど血の気の失せたエルネスタ殿の顔を見て私は小さく笑みを作った。
それは自分でも疲れが滲んでいるとわかるようなものだったが、それでも笑わずにはいられなかった。
・・・・・・何が次期蒼紋天守だ
・・・・・・私は何もできないただの無能ものだ
何も・・・・・できない・・・・・・・




