54 障害ハ刃
「あ! おぉい」
雅な風が俺達を誘うように、群衆から少し離れた位置から、幻が手を振っている。
「ああ。サンキュウ幻さん」
「幻でいいよ。それに、助けてくれたのはあんた達でしょ。感謝するのはむしろこっちなんだよね」
「なら、褒められよう」
「褒めたたえよう……ってなんで自慢げなん?」
胸をふんぞり返らせて、自画自賛する俺に、怪訝そうな幻。
自分でもびっくりするぐらい自慢したくなる。ここ数日間、休みというものを感じたことは無かったから。
ミレメルの仮設住宅では多少なり平穏を感じたものの、敵の予感が断たれることは無かった。
どうしてなのだろう。あの観察者のせいだろうか。あまりにも厄介者が多いように感じる。
どう考えても偶然偶発だけとは思い難い。
「まぁ、俺も? みんなのメンタルケアを一身に担ったしね。褒められても良いと思うわけよ」
戦わずして自分の成績を評価する彼はどうやら、必然的に有頂天になりそうだ。
だが俺は目を棒にして、
「ウンウン。ガンバッタネー」
「なんだその感情のない言葉!?」
「にべもないでしょ?」
「うるさいよ!?」
適当な返事をすると、それに幻が憤慨。
憤慨というと度が過ぎているだろうか。まあ、チョケル、というやつだ(俺の中では)。
「俺頑張ったのに……オレ、ガンバッタノニ……」
「おにいさん、まつりのひと?」
頑張りを無下にされ、落胆している幻(いや、俺は別にけなしたわけじゃないけども)。
そこにマギーが近づいて行って、幻の顔を覗き込んだ。
髪から覗く、くりっとした目が愛おしく、それだけで幻は報われたような表情を取り戻す。
「そ、そうだとも。お嬢さん」
「!……じゃ、あれみせて。あの、とりだすの」
「おう、いいともいいとも!………ほいッ☆」
帽子を取った途端、目の色が変わったように見えたが、すぐに帽子をかぶったため、多重人格の変遷はよくわからなかった。若干言葉に星が着く程度の違いしかなく、明るさが出たかと言われるとそう思える程度。
しかし、これだけは言える。こいつは間違いなくマジックの虫だ。その帽子の着脱の間に、銀鳩が三羽現れたのだから、そう言わざるを得ない。
更に面白いことに、幻は魔力を一切使わないのだ。
その演技の隅から隅まで知恵の詔で解析したところで、微細な魔法もスキルも感じられない。
俺が言うところの、“物理”の範疇で物事を行っている。
それを常に準備しているからか、いつでもできるというのが、俺が「虫」と題する理由だ。
全くどこから鳩を出しているのか。魔物であっても感心させられる。エンタメとは素晴らしいものだとつくづく。
「わぁ!」
「かわいいだろ? だがこう見えて、ツンデレなんだぜ?」
「つんでれ……って?」
「おい異世界人、ツンデレは多分通じないぞ」
鳩は幻に目もくれず、手を広げたマギーの所に寄っていく。
「あははっ、くすぐったいよぉ」
「なッ!? お前なんでこの子には懐くんだよぉ……」
「……ドンマイ」
運には恵まれないのかもしれないが、彼は彼なりに努力しているらしい。
彼から魔力が流れてこないから、感情を読むことはできないが、彼の表情から何となく理解できる。
まあ、切実、とでも言うのだろうか。
「とりあえず、生存者の確認に行く?」
「そうだな」
ミレメルが聞いてくる。
俺は既に全員無事なのは知ってるんだけどね。
ま、百聞は一見に如かずとか何とか言うし、会いに行かないとあとでまたガミガミ言われそうだし。
そうして俺達五人は町のセントラル目指して歩いた。
ほどなくして建物の間から広間が窺えたが、何故か騒がしかった。
何を言っているのか、耳をそばだてると、「俺の方が」「いや私が」といった言葉の応酬が絶えなかった。
面倒臭そうで俺は近づきたくない。
何ならもう真霊化で逃げたい。正直ここに留まる義理も利益もないし。
「だ・か・ら! 俺の方が倒した数多いんだって」
「いやだからその証拠の首を持って来いって言ってんだ」
「それを誰かが横取りしたって言ってんだろ!?」
「嘘かもしれねぇじゃねえか」
うん、なんか思い出した。
そう言えば俺、ハリボテの金魔石あげる的なテキーラ言ってたね。
「あ、カゲハルさんだ」
「うん、ただいま」
「なぁカゲハルさん、俺が獲った首を誰かが盗んだんだけど!」
「いや、絶対おめぇ嘘ついてんだろ」
「んだと?」
「あぁ? 首ねぇのがその証拠だろうが」
止めてほしいんだけどマジで。
俺の軽はずみな発言で問題起こされると、こっちもレスポンシビリティが必要になってくるやん。
「喧嘩する奴にゃ、そもそも確認してやらねぇぞ?」
「「え」」
「他の奴らもだ。とりあえず、持っている魔物の死体の数で計りはするが、問題を起こせば即刻退場だからな」
口酸っぱくそう警告すると、全員が一斉に黙ってしまった。
幻は状況を知っているからか、なんとも言えない顔でサイレント。
ミレメルも同じ感じだ。
マギーはあたふたとしており、ギェリヴは積み上げられた死体の山に目を光らせている。
そんな彼らを放置し、俺は日が暮れる中集計に当たった。
「皆並べてねー」
令を出すと、我先にと魔物の一部または全体が並べられていく。
基本出てくるのは猿の魔物「ガルティッシュ」や、狼「ヴァウル」、鳥「ビューリー」、スライムやゴブリンなど、数で攻めた感じだ。
しかしまぁ、全員よくやったものだ。
俺の前には百を超える魔物達が。鯨で撃ちまくったとはいえ、これだけが流れ込んでもなお、金の亡者の欲の前にはただのポイントにしかならなかった。
欲って怖いね。
「ええと……35、13、68。うん、この68匹倒した奴が一位だな。誰だ?」
「ハイハイハーイ!」
活気ある双剣使いの少女が、大袈裟に手を振っていた。
鎧は皮や薄めの鉄製。若干鱗なんかも使っている様子。背は小さいが、所々覗く腕や腹には筋肉がひしめいていることから、熟練者ではあるようだ。
見かけによらず。可愛い子には旅をさせよ、的な家庭に育ったのかな。
「おめでとう。これ、報酬の魔石だよ」
「わぁ! ありが……と、う。ってこれ金色じゃないじゃん!?」
俺が渡したのは、ハリボテより一回り大きな魔石だ。
どこの誰からとった魔石だったか全く覚えていないが、とにかくでかい。
【サイクロプスの物です】
(あ、そうだったね)
思い出していると、少女が不満げにこちらを見つめている。
一応悪いことした自覚はあるから、贖罪の意をこめて説明しておこう。
「あの金の魔石は加工品。だから実際の価値は普通の魔石とほぼ同じだ。やる気出させたかったから派手なアレにしただけで、価値はそっちの方が高い。だから安心して貰ってくれ」
「ッんだよそれ!」
「金の方が若干良かったような……」
「頑張り損だぜ……」
この世界の金はそこそこ価値が高いらしい。
未知の金色の魔石ときたら、それはもう効果絶大だったらしい。
でもいいじゃないか。サイクロプスの魔石を貰えるんだぞ?
そう思う俺の意図を知らずして汲むように、彼女は、
「いや、カゲハルさんの言う通りかも。こんな大きさの魔石は私も見たことない。とりあえず質屋に行ってみるよ。ありがとうカゲハルさん!!」
満面の笑みで礼をされた。
何というか、清々しい子だった。
というか、見たことないからといって質屋に行っても、向こうもわからないんじゃないか?
どうなんだろう。俺は質屋というものを訪れた経験が無いから、推測しかできない。
ま、鑑定額を偽って詐欺られないように祈っておこう。
その後は皆が各々の戦利品をお持ち帰り。全員が帰る支度をしていた。
……帰る場所、か。
「さて、俺はここを発とうと思うけど、どうするミレメル?」
「もちろん、ついて行く」
オーナメンタルに会うため、どこへ向かえば何が得られるのか。それを知ることにまた時間を費やし。これは恐らく途方無き長い旅。
だがそれでも彼女はついてきてくれる。
護る・支えるの相互利益と信頼のもと、積み上がったこのセット。
もう崩れることはないだろう。
だからこそ俺は気長に進み、彼女が行きたい場所があれば率先して道草を食う。
そしてそれは、苛烈な運命を耐え抜いた幼き子にも言えることで。
「マギーも来るか?」
「うん!」
朗らかな表情に、何か救われた気がする。
……それにしても、二人とも優しいな。
名付けによる契約は、ある一定距離を主人と置くと従者に若干の不便が生じる。例は一つだけではないのだが、大まかに挙げると「移動速度の低下」「継続ダメージ」「昏睡」といったものだ。
こういった、いわゆる束縛を受けているはずなのに、そこに異議申し立てをしない。それどころか、楽しそうに歩んでくれる。
俺のことをよく思ってくれているからなのか、こちらとしては嬉しいというのが素直なところだ。
改めて、俺は歩こうとする。
……だが、
「ちょいちょいちょい、カゲハルさんカゲハルさん? 俺にも聞いてくんないの?」
「………………は?」
「いや、俺戦いのアビリティ無いからさ。カゲハルになら守ってもらえるんじゃないかなって」
何を言っているのだろうこの子は。
女の子を前にこの覇気の無さは何なの?
いやまあ俺も魔物に産まれなけりゃ、ここまで人と関わろうともしなかっただろうけど。
「えっと……まずここから出るの?」
「え、だってここも安全とは言い難いじゃん? あれだけ魔物が来たんだし」
「いやでも俺達についてくる理由が……というよりその方が危な―――」
「あるんだよぉ! 俺一人じゃ生きれる気がしなくなったんだよぉ! 同じ異世界人のよしみでさぁ。守ってくれよぉ……」
あらなんて情けない。一応、手に職つけたマジシャンなんでしょ?
こんなに感情を表に出しても良いものなのか……?
ああ、もういいんだな。俺の服に涙混じりの鼻水が沁み込み始めた。(諦観)
顔を離すと糸引いてる……
やめてくれ。マジでバロスなんだけど。
「お? なんだ、てめぇも仲間入りか? けッ。ほっそい体してんなぁ。ミレメル嬢ちゃんより細いんじゃないか?」
「うげっ。何だあんた。まさかカゲハルの仲間!? え、怖いんだけど……」
「おお、俺を恐れるとは見る目あんじゃん? だが、弱ぇのは嫌いだぜ」
肩から覆いかぶさるように幻にのしかかるギェリヴは、さしずめ輩といったところ。
だが当の輩より遥かに恐ろしいのが、対を成す可愛い人物。
「……誰が、太いって?」
「あ? 嬢ちゃんよりこいつのが細く見―――」
俺は振り向くのを止めた。
そこからは俺も見てなかったから、何が起きたのかさっぱり。
ただ言えるのは、恐ろしい魔力の流れが背後に起きたということ。そしてそれを受け流す者がいて、それに巻き込まれた者(幻)がいたということ。
「ぎょわぁああああああ!?!?」
「きゃっ」
マギーが俺の体に飛びついてくる。
(服を魔吸収から取り出しておいてよかったー。鼻水が彼女につく心配がない)
俺も俺で、風圧と魔力で吹き飛ばされそうになったけど、マギーのためにも何とか踏ん張った。
なんだかんだあって、数分後にはギェリヴが「すまんすまん」と一笑し、ミレメルが不服そうにしていたのを俺が何とか慰める結果に。
それで解決したから良かったものの、今後フォーマルな場では、絶対あの「無礼が人を模した奴」を出さないでおこうと、固く決意した。
それはもう堅く。硬く。
そんなこんなでドタバタとしていると、何か嫌な予感が。
「そこにいるのはカゲハル殿かー!」
どこからかおじさんの声が……
気づけば冒険者たちは消え、代わりに何か兵たちがぞろぞろと。
そしてその中に神輿のようなものが。恐らく偉い人が入っているんだろうが、俺はああいう堅苦しいのが嫌いだ。
「あ、国王様じゃん!? もしかしたら、僕たちに報酬かな!」
えらく元気じゃないか幻クン。流石は幻というだけある。君にはアレが明るく見えるんだな。“幻”覚として。
俺にはアレが、トラブル的な案件しか関わっていないように見えるんだが。
「なら、いい武闘場でも貰えっかな、ボス?」
こいつも気楽なもんだ。対して女性陣はどうよ……
「か、カゲハル……私また何か言われるかな……」
「こわいよぉ、にいちゃー……」
俺のことをお兄さん改め“にーちゃ”と呼ぶのはいかがなものかな、マギーさん。
まあそれは今置いておいて。
二人とも怯えているというのが大事なのだ。
そしてついでに言おう。俺も怖い!
いやだって、目の前には十を超える兵たちと国王(?)だよ?
面倒臭く無いわけ無いじゃん!?
誰が、話聞いてやるもんか。
「行くぞ、皆」
「うん!」
「にいちゃー!」
「え? ちょ、ちょっとカゲハルッ!?」
「ボス!?」
拒絶しているわけじゃない。物々しいのが悪いんだ。俺は悪くない。僕は悪い影じゃないよ?
俺たち五人は走って門から出た。
夕が眩しく、後ろからは誰も来ていない。
どうやら撒くことが出来たようだ。そもそも察知できる範囲に人が居なかったから、追ってきてたのかすらわからんけど。
「……なんで逃げてきたの?」
納得しない様子のマジシャンに、俺は向き直って応える。
「こっちのミレメルは過去に、というか今なお迫害を受けているんだ」
「ああ、確かに。フード被ってるもんね」
「そう。で、このマギーもあそこで怖い目に遭ってるらしいんだ。な?」
「うん……おっかけられて、ごはんもなくて……」
「そう、だったんだね」
幻は手の平返し、180度意見反転。
俺があの国を離れた理由に頷いてくれた。
確かに何か報酬があったのかもしれない。いわゆる前世の異世界ラノベテンプレ、王に感謝されるシチュー。
だが、そんなことに賭けて、彼女がバレて、説得できずに騒動になったら?
彼女は「慈悲の心」の紋を持つほど人を殺さないお人好し。あのギェリヴを縛ることができる警備体制(一時的だったけど)があるあの環境で果たしてどうなることか。
それはミレメルだけじゃなく、マギーにも、なんなら役に立ったギェリヴにも言えることだ。
あそこは奴隷すら許す場所。
俺は到底相容れる気はしない。まぁ、料理といい、冒険者といい、全部を否定はできないけど。
「そうかぁ……ミレメルちゃんが来てた時に何か役に立てたら良かったんだけど……」
「いえ、大丈夫。私たち、カゲハルが居なけりゃ会わなかったかもしれないし」
「……それに、マギーちゃんも。ごめんな。それこそ助けに行けたかもしれないのに」
「ううん。だいじょうぶー」
お前が行っても助けられねえだろ、と野暮なツッコミは今は無しだ。
そんなこと言ったら、肉弾戦なら俺より強いであろうこいつ(脳筋ギェリヴ君)が、今もなお上の空なことをツッコむべきだ。
おおかた俺とのバトルの事しか考えていないんだろうけど。
「……よし、そういうことなら仕方ない。せっかくだし、俺っちのマジックで移動するかい? あの国がすぐに何かを送ってこないとも限らないだろ」
唐突な提案に、俺はきょとん。
「マジックで……?」
「そう! 俺っちのマジックなら東西南北・古今東西、どこへだって。とはいっても数百メートルぐらいが限度だけどね」
それだけでも十分凄いと俺は思う。
魔力が物を言うこの世界で、スキルの類を一切使わず、なんなら前準備を一切していない大自然の中で、その妙技が成せるというのは異常にして最高だ。
俺は有無を言わさず。というか、有しか言わさず。
「やってくれ」
「了解道中膝栗毛! ……よッ☆。さぁエブリワン、俺っちに寄った寄った!☆」
軽快な声が、俺達の心を明るくする。同じ異世界人、もとい同郷の日本人というのもあるが、何より彼のパーソナリティの良さが作用しているのかも。
たった一日の内だが、彼が確かに憶病であることはわかった。だが、彼は持ち前の多重人格を利用し、人へ笑顔を振りまき、また笑顔を客に作らせる。一見欠点に見えるが、そうではないという証明を、ごく自然に行っている。
彼を見て、俺は再確認した。
仲間が皆、“強い”ということに。
ミレメルはもとより人を愛する心の持ち主だ。
それだけでも強いが、彼女は足が悪い。混血と言う事もあり、若干人と見た目が異なる。
こういった外見的影響によって受けた多大なる危害に関わらず、彼女は耐え抜いた。
ギェリヴは戦闘狂。
彼の障害は異常な思考・精神を持っていること。だがそれでも、俺と戦うという条件を正しく呑み、魔王を倒し、暴れずついてきている。
マギーはこの幼さにして、自殺を考えるほど。詳細を聞こうとは思うが、まず彼女からは壮絶の二文字が窺える。それでも希望を捨てずに立ち止まってくれた。
彼女の障害はその「世界崩壊魔力」。でもこれは、俺やミレメルが使える大容量ポーション。言い方が悪いが、つまりその魔物を呼び寄せるだけだった濃い気体が、俺達のために、そして彼女自身をも救うものになるということ。
何事も、障害は欠点たりえない。
この団体には肢体不自由・精神障害・魔力の病・多重人格…………計り知れない重みがある。
だがそれは、全て、問題じゃない。
ノープロブレム、モーマンタイ。
俺は異世界に来て、ただ生きていたいという思いに従っていた。向こうでもそうだった。
でも、彼女らに会って、単に望むのは違うと思った。
生きていることは、当たり前で最高の武器。
どんな見てくれ、どんな主義志向、それら全ては意味をなさぬアクセサリ。
出会い、そして友達、仲間。家族……
ラノベだけでなく色んな物語で、絆と語られる全ては、近しい人にしか言えないと思っていた。
でもそれは違う。なにか、に立ち向かうひたむきな姿勢が、たまらないんだ。
だから俺は人の醜さを恨んでも、人である自分を恨まなかったし、地球に対して諦めもついたのだ。
ギェリヴじゃないけど、やっぱり精神が強い人というのは尊敬するし、惹かれてしまう。自分が精神的な生物だからだろうか。
要するに、俺は今の仲間に会えて良かった、ということだ。
ミレメルと契約した時と同じく、また心に潤いを感ず。
帽子を取り、どこからともなく布を取り出し、俺達全員をその内に包む幻。
暗闇が視界を拒み、数秒が経ったから、正直寝そうになった。幻惑に連れていかれる、夢の中。
風の音が消え、葉が落ちる音、虫の羽音一つすら聞こえず、体がふわりと地を離れた感覚を味わった。
暗闇がその身を引いたとき、世界は……
――――湿ったレンガに支配された、謎の空間に成っていた。




