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36 以上ホントのプロローグ

「何言ってんだこいつ」

≪おいおい、口に出ているぞ。まるで、私が頭のおかしい道化みたいじゃないか≫

「…実際そうだろ?」

≪まあ、否定はしないけどね≫


 自分たちのことを誰かが見ている。

 そんな内容を、その存在―――オーナメンタルは語った。

 もちのろん、それを当の繁治が理解できる訳がない。


「で? 俺らの言葉を見ている人って?」

≪……ここは物語の世界。現実であり、幻想でもあるんだが≫

「ストップ。誰がシュレディンガーの猫みたいな話しろって言ったよ。二つに一つとか、ややこしいから簡潔に頼む」


 オーナメンタルの意味不明な解説を、途中で遮るシャドーこと繁治。


≪まあまあ聞きたまえ。つまり、私のように、次元を超えて君を傍観している者がいるということだ。ただ、彼らは私のように君に干渉できないがな≫

「傍、観…?」

≪ああ、傍観。いや、鑑賞と言っていい。君は物語の主人公として、ここに君臨しているのだよ≫


 相変わらず、金と紫の視界。オーナメンタル本人の姿はなく、世界は逆再生を超スローに繰り返す。


≪そして君の転生を促したのは他でもない私だ。ただ実際のところは、先代勇者と魔王ヴェルディの戦いで、魔法が次元越えして地球に影響し、その過程で死んだ君の転生先を決めたのが私というだけ。……たまたま君の魂を見たとき、私は心底興奮した。世界を第三者視点で捉え、多少の支えを頂戴してもなお一人で生きられる精神の強さ。陰としての自分を嫌うことなく、芯が強い。だから君をあえてシャドーに転生させた。楽しむのが好きな私なりに掛けてみたのだよ≫

「はぁ…」

≪さっきここは物語の世界と言ったが、それは文字通りの意味でね。ここは君ら現実の世界線の人間が、大量生産したノベルの集合体なんだ。もちろん転移者や転生者も、君ら3-3組の生徒を含めて何十人といる。自分たちが作った世界に引きずり込まれるという、これほど滑稽な話を私は知らないが、見ていて実に楽しいよ。そして、君ほどの人間なら、今後も楽しませてくれると信じている≫


 想像の先にある世界線。それは、人々が存在しないものを、脳内で生み出したことで遥か彼方に発生する。そして、「異世界」をテーマにしたこの「アース」という惑星のように、世界線はごろごろとある。

 オーナメンタルはそう言った。

 規模がビッグ過ぎて付いて行けないが、事実を述べているだけの彼の存在は、実にまともだと言える。


「荒唐無稽すぎて話にならないが、夢じゃないなら信じるさ。だが、あんたのその、俺らを娯楽としか見ていません感がどうも気に食わねぇ」


 繁治は、ゲームでフェアにプレイしない、チーターというものが嫌いだった。

 ゲーマーの殆どが嫌いな存在だが、見下すその感じが、なおの事彼にとって醜く見えた。

 それに重なる部分がオーナメンタルにあり、苛立ちが。


≪どうとでも思うが良い。それも私を楽しませうる材料でしかないから≫

「そうだとしても、許せない」

≪なら、いずれ掛かってくるが良いさ。もちろん、今の君には、数“垓”光年先にいる私に近づかないと戦いにすらならないけれども≫


 一、十、百、千、万、億、兆、京、垓……

 その数字の重みは、光年という補助によって格段に跳ね上がる。

 比例し、強さも技術も圧倒的に上。

 勝負とかそういう話で向かい合うべきではないことは明白。

 そもそも、地球とか宇宙とか、そんなベクトルの話ではないし、下手したら神に匹敵する存在かもしれない。

 それを知り、繁治は急に、下に見える地面や山が小さく見えた。


「……たとえ無理でも、いずれ可能にしてやる。あんたの敗北を」

≪やってみてくれ。まあ、ここまで来られたら、そもそも君は私より強くなっているだろう。その時は私も満足して、死を受け入れるさ。だから精々楽しませてくれ。時々、そっちにお邪魔することもあるだろうけど≫

「来れるのかよ……」

≪もちろんだとも! 今私は、ここからそこを『猶予(リバス・ディレイ)』して、かつ『念話(テレパシー)』しているんだ。結構難しいんだよ? 転移なんて昼飯前だね!≫


 意気揚々と高らかに、宣言するオーナメンタル。

 唯我独尊に近い、自身の強さへの圧倒的な自信。それを持っていながら、自分の所へ繁治が来たら死を受け入れるという、矛盾のような謎の状況。

 まるで読めない。何もかも。だが、朝飯前だろ、なんてツッコミ繁治は入れてやらねえと誓った。そもそも、普通に話していて良い相手じゃない。


≪因みにだけど、そちらにお邪魔するのは、本当に私の気分次第だから、その時は是非、慌てずに歓迎してくれ≫


 相手はこちらを殺さないつもりだ。

 だったらもう気にせず強くなるしかない。


≪まあ、焦ることはない。私はただ君を取り巻く物語が見たいだけだからね≫

「正直こっちもやる気が失せて来ているよ……だがいつか絶対、何かのついでに倒してやる」

≪おお、ついでとは……二度目の宣戦布告がなんだか虚しいぞ……≫


 繁治は心の中で、この道化を悲しませられたことに、微々たる喜びを抱いた。


「ああ、そうだ。聞きたいことが二つくらいある」

≪……答えていいと私が思った範囲なら構わないよ≫


 繁治は脳超加速が使えない今、必死に頭を整理して質問を用意した。

 数は少なくとも、まだ少し話すべきだと思った。


「あの怨念の塊……たしか怨呪害憎怪とか言ったっけ? あれはなんだ」

≪ああ、それは別の世界線、「ホラー」をテーマとしたアースの怪物だね。骸骨っぽい肉づいた顔がより恐怖を誘うよね≫

「いや、レビューとかいらん…」

≪そいつが、たまたま「時空超え」って感じでそっちに顕現しただけのこと。別に、よくあることさ≫

「よくあるって……」


 呆れた。

 あんな化け物が、ただでさえ恐ろしい魔物に加勢したら、それこそ人類は滅びるのではないか。というか、滅びていないのが不思議だ。

 そんな風に想像し、身の毛がよだつ。しかし同時に、魔物としてか、両親を無下にされたという人間への失望か、どうでもいいという恐ろしく冷たい感覚が。

 胸の霧を振り払い、改めて。

 あと必要なのは、己の周囲の情報。


「……俺の家族や、知り合い、みつりは来ているのか?」

≪君の家族の死因は病死だから、こことの因果関係がない故、残念ながらいない。大家はそもそも死んでいない。友は転移しているから、まあ、一目見ればわかるだろう。そしてみつりは、来てはいるが知っての通り転生済みだ。しかしあえてその容姿は伝えないよ。君の旅路が一番のショーだからね。ネタバレは良くない。全く、私は君の虜だよ≫


 心酔したように声を震わせるオーナメンタル。

 気色が悪いと感じ、繁治は苦い顔をする。苦虫を噛み潰したような顔とは、まさにこういう事なのだろう。身をもって知った。アンダースタンドした。


「はあ……まあ、聞きたいことはとりあえず聞き終わったかな」

≪そうか。なら、もう長く話すこともなさそうだ。君の時間を無駄にしないよう発動した『猶予(リバス・ディレイ)』を……解除!っと≫


 時は再び動き出す。

 この能力が、少しずつ巻き戻るという謎すぎる効果を持つために、下に見えていた動物が数メートルバックした位置から動き出していた。

 世界が金と紫から、虹色へと変貌し、気体の肌に日の温もりが差し込む。


≪では、健闘を陰ながら祈っているよ。影だけに、ね≫

「うるせぇよ」

≪ははは。……では最後に土産だ。「影」と「繁治」を合わせて、君をカゲハル=オーナメントと名付けよう。≫


 その瞬間、体から溢れんばかりの力が。

 と言っても、狂乱時に跳ね上がる力の十数パーセントしかないため、上塗り程度の補強だが、無いよりはマシだ。


≪この世界では名付けが契約というものになるが、私にそんな稚拙な法則は通用しない。よって契約の効果が及ばない私が名付ければ、君は縛られることなく強化される。我ながらナイスアイデアだよね!≫


 名付けは、加と被の間に(ちぎ)りを施す。そしてそれにより、被にはいくらか行動に制限を設けられる。よって、何者にも縛られずに、自由に生きられるというのは大きなアドバンテージとなる。

 話の内容から、恐らく契約の上書きは難しいのだと推測される。それをも見越しての名付け。流石に遊びに長けた鑑賞者という所か。

 だが、付属して「オーナメント」というファミリーネームが付いているのが気に食わない。

 本当に、気に食わない。


≪さて、そろそろ通話解除かな≫

「なら最後に言っておく……」


 退出しようとしたオーナメンタルに対し、カゲハルは止まれを命ずる。

 深く呼吸し、天を睨み。


「情報と土産、ありがたく貰うよ。だけど、俺は主人公なんかじゃない。ゲームが得意なだけのモブだ。そんな俺を主役と定めたお前は絶対後悔する。精神的にも、物理的にも」

≪ふふふ……期待しているよ。カゲハル君≫


 宇宙の果てと果てを隔てて火花が散る。

 神と影、無と無の、誰にも悟られず言及されない、(さび)しい戦の約束。


≪では、私はフロリダしよう。君が私に会える日を楽しみにしているよ≫


 そう言い残し、脳から声が聞こえなくなった。

 余りにも相手がよく喋るものだから、その後の静寂が半端ではない。

 何というか、こちらの苛立ちを闘牛のように華麗に躱して来るため、怒りが空回りする。

 どうも調子が狂う相手だった。


(……あいつ「風呂入るから離脱(フロリダ)」って、風呂入るのかよ)


 何となく、温泉に浸かりたくなってきた。

 そして上がってからミルクを飲んで……


(悲しいかなぁ。そもそも俺、銭湯行ったことないんだわ)


 事実、経験不足である。


(はあ、なんだかんだで、カゲハルなんて名前までくれたし、なんなんだ。だが俺はあいつと話してわかった。あいつは俺どころか、全てを駒としてしか見ていない……)


 そう。あれは、というよりこの世界は異常だ。

 ゲームだとか漫画だとか、そんな丸く収まってなどいない。

 歪に歪み、凹凸激しい無の惑星。

 そんな場所に飛ばされ、そもそも存在が保っていられるかもわからぬ状況を作り出した元凶を、許す道理などない。


(許すマジ……)


 今は強くなる。それを念頭に置き、ただそれを追求し続ける。

 そして、家族を失う怖さを知っているからこそ、今度は失わない。

 藁にも縋る思いを込めて。愛猫みつりと、旧友の羽田と、親しくしてくれた笹峰を探し出す。


 陰キャラなど装飾としか思っていない俺は、もはや影本体になった。

 これからはそれを最大の武器とし、自分の何でもできそうなノリとテンションで、テンアゲに生きていく。そしていつかあのふざけたのを倒して、他でもない、自分を救う。




 シャドーになって彷徨うけれど……

 柔らかくも強い精神は健在で、あたりの風景は絶景で、3150(最高)のコンディション。

 高校生になった年頃だが、世界を股にかけ物語を紡ぐ。

 神に等しきオーナメンタルを、喜ばせてしまうほど波乱万丈に。


「……マジでバズリそうなほど綺麗な景色だな」


 心奥、仲間と共に見たいと思う。


一応一区切り。


※カゲハルの能力メモ


ステータス シャドー カゲハル=オーナメント Lv163 属・闇霊 体質無し

攻力0(人間時25)

防力6080

体力9200

魔力16300

精力19000

俊敏23100


紋:不屈の影・欲張り・殺戮加護・夜魔多のオロチ


スキル:能力査定・解析変化体・霊化・体力即時回復・魔力即時回復・痛覚耐性・自然影響無効・魔法攻撃無効・存知・掘削・影操作・魔吸収・防御・浮遊・脳超加速・忍耐・強化障壁・眠気耐性

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