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24 人人人人

「神秘の泉には近づかせません。強き邪物よ、今すぐ立ち去りなさい!!」


 俺は一身にその言葉を受けていた。

 正直、強きって言われても、俺そこまで強くはなくねって思うんだ。

 その言を与えたその人。

 能力査定した結果、種名がハイ・フェアリだとわかった。

 彼女は辺りを飛翔する妖精の何十倍もデカく、俺を人間規模と考えても、軽く2m位はあった。

 露出度が割と高く俺も少しゾッとするが、そこにはフェアリ特有の清楚さも残していた。

 眼光がその美顔に似つかわしくなく歪んでいる。

 怒りより、焦燥・不安が見て取れた。

 声を出して、どうにか友好的に行きたかったが、その暇すらなさそうだ。

 俺が後退ろうとすると……


「止まりなさい!!」

「通しませんよ!」

「みんな、構えて」

「はい!」

「はい」

「任せて!」


 妖精が口々に言葉を発して連携しあい、俺を進退させないように取り囲む。

 一糸乱れぬその動きに、俺は感動すら覚える。

 結束力も高い。

 それに、彼女、ハイ・フェアリは、眷属を無理やりにでも動かせる紋の「指揮権」を持っていながらも、無理やり彼女らを動かそうとはしていないらしい。

 その証拠に、さっきも別の一人が構えてと指示を飛ばしていた。

 緊迫した空気。

 相手は俺の能力を見透かしているわけでもないだろうが、それでも俺が光に無反応なところからその力量を見定めて来ている。

 相手のリーダーは「聖界の光線」とかいうバカげたスキルをもっている。

 俺が初対面で今しがた受けたスキルだろうが、正直、痛覚耐性持ってろうが、防御を発動させようが、とんでもなく痛い。

 消費する魔力が多いのなら、こちとら万歳だけど……

 今は徐々に回復しているだろうか、連発してこないあたり。

 うーん。

 どうにか平和的に解決できないものか……


「……なぜ攻撃してこない?」


 相手も疑問を顔に浮かべる。

 手にしている、辺りの眷属の物より一際立派な杖を握りしめてこちらに構えてはいるが、その手は震えている。

 ……聡慧さん。疑似的な会話って外部ではできないの。


【無理です。しかし、今人化の方法を検討し終えました。とりあえずは、男性と女性の人の資料を要求しますね】


 なんか今サラッと恐ろしいことを言いやがったなこの人。資料?

 イコール肉体?

 なに、な俺に、拉致って来いと?

 無理無理。

 待て待て待て!

 絶対に嫌だよ?

 ゴブリンですら手が震えて仕方なかったのに……

 それに、そんな都合よくそこいらに男女の体が転がっている訳ない。

 …………

 …………

 え、なんか二人後ろで這いずっているんだけど。

 それも男女。

 なんだろう。逃げてるのか?

 囲まれている俺の後ろ。丁度俺がこの泉に入ってきた通路の脇道みたいなところから、蒼白を超えて死相すら見える顔をした男女が、ゾンビのように這って出てきた。

 苦痛に顔を歪めているらしい。

 衣服はほんの少しボロついている。

 しかし、激しい攻防があったようには見えない。どちらかというと状態異常のような?

 彼らを解析する暇はない。

 だが、今彼らが必要だ!(主に五体満足な体が!)

 ……ここは神秘の泉とか言ったな?

 聡慧さん! ここの水を解析してくれ!


【・神秘の薬(別称 回復水) 傷が立ちどころに治るという聖水。神秘の泉にて生成され、多くの命を育んできた。光の属を持ち、闇属性の物には悪影響】


 これだ!!

 俺はほぼ無意識に妖精たちの影を繋ぐように影操作で黒を繋ぎ、妖精王を超えてその水を魔吸収で吸い取りにかかる。

 もう有無は言っていられない。

 どれだけ攻撃されても、構わない。

 あの二人に少しでも生きてもらおう。

 理由はどうでもいい。俺の人間としての慈悲、人化への利用、妖精王への無害表明。

 急ぎ俺は体内に吸収していく。

 うん、自然影響無効のお陰か魔吸収の性能か、痛みはないな

 懐かしのスキルのレベルアップの音が聴こえる。

 そして別の音も聞こえる。


「な、なにしているのです!」

「この神聖な水を……汲んでいる!?」

「でもなんで、ダメージ受けてなさそうに平然と……」


 俺はある程度吸った。そして振り返る。妖精王の向く方向に向けて俺は手を向ける。

 妖精たちに無駄にかけてしまわないように、上を向け、放物線を描くように回復水を放つ。

 体の中で圧縮させるようにして放つと、消防車のホースのごとく勢いで水が飛んでいく。

 お風呂とかで、手で水鉄砲するのと同じ感じだ。

 我ながら、感覚が良くなってきている。応用もそうだ。

 こんなに簡単だったのなら、もっと早くからしたかった……

 ……そんなことより、この技良いな。

 技名とかつけて、使いまわしたい。

 でも今そんなこと考える余裕ねえや。


「か、回復水を……」

「あ! あそこに負傷者が」

「この魔物、あの人たちを回復させている!?」


 俺は飛んだ、いや、ジャンプした。

 そして負傷者たちのもとへ歩み寄る。

 武装しているところから見て、冒険者とか戦闘者、探索者って感じか。

 こいつら、傷は治っているけど、顔色が非常に悪い……

 いや、傷が治っているってだけでもすごいけど。

 状態異常を見たいとこだがその前に、聡慧さん。

 これで資料とやらは足りているかい?


【はい、人の構造を解析。スキル「解析変化体」を取得できます。Pは必要ありませんので、すぐに取得します】


 来た来た来たー!!!

 遂にこの時が来た。

 なんかここ数分で色々起きすぎな気もするけど、ひとまず人化を急ごう。

 では、改めまして。

 変身! スキル「解析変化体」!

 影の黒色が濃くなり、ヘドロのように変形を繰り返しドロドロと。

 伸びては縮み、光っては陰り、色は徐々に肌色に近しくなっていく。

 まず、足が生え始めた。


「な、なにあれ……」

「ねえ、女王様! あれは何なんですか!?」

「……」


 艶のある肌、しかし人間らしさが妙に無い。

 こう、綺麗すぎるのだ。

 そして、足から上。脛、膝、臀部、腰、胸、背。

 その容姿だけで見れば、男女どちらとも取れない。

 人に必要な部分がまだいくつか足りていないからだ。


「あわわッ! どんどん作られていますよー!?」

「す、すごい……」


 そして肩。

 なで肩のようだ。優しい肌感。しかしそれでいて逞しい。

 そこから腕が生え始める。

 みずみずしい。

 芯の貫くような、賢き両腕。

 指をニギニギ、グーパーを繰り返す。

 そして、首、頭が生えてきた。

 童顔に近い、柔和な顔で女性っぽいが、目はそこそこ凛々しく男らしさがそこには在る。だが全体的に見れば、可愛らしい。

 髪が生えゆく。黒と紫を織り交ぜたようなカラーを持つ。しかしその内こめかみより生える髪は、元々のシャドーの手の爪の様に、三つに毛先が分かれていた。


「ひ、人型に……」

「変身した……」

「なんていう芸当……」


 辺りの妖精が驚愕を目に、顔に浮かべている。

 あ、やべ。

 全裸じゃねえか……

 取り敢えず、魔吸収からバビリアフラッシュカスターの毛皮を取り出す。

 それを巻きつけるようにして、着た。

 うん、我ながら露出狂かとも思しき……

 妖精の女性方前にして、なんて格好だよ。

 …………………………

 ……ん?

 あ、俺の下半身。

 何もない。

 無性別か。

 ねえ、聡慧さん。俺一応男性なんですけど。


【排泄の必要はないので、必要ないかt】


 そんなことは聞いていないんだわ!?

 無いとなんか違和感があるんですけど。

 ……まあ、考えずに行こうか。(棒)

 とりま今は、人化成功を喜ぶべきだろうし。


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