21 スライム
ゲーム。
その一言で、全てを言い表すことができる。だが、その全てを細分化すると数えきることができないだろう。
アクションゲーム・ACT。
ロールプレイングゲーム・RPG。
パズルゲーム・PZL。
シミュレーションゲーム・SLG。
アドベンチャーゲーム・ADV。
シューティングゲーム・STG。
スポーツゲーム・SPG。
レースゲーム・RCG。
音楽ゲーム。
複合ジャンルのゲーム。
日常の遊びである「ジャンケン」や「トランプ」。
運動競技など。
大まかに挙げてこの数。
それを更に作品で分解してみたらどうだろう。
きっと、覚えることはできない。
それどころか、知ることも叶わないだろう。
古代より娯楽は培われてきて、今地球では、何百以上もの遊びが生まれ使用されている。
それはもう第三次産業として、経済を支えるほどまでに。
電子機械が普及し、ゲームが一般の娯楽になって早数十年。
今俺が転生している時代が何年で、地球が今どうなっているかはわからないけど、少なくとも死亡時にはゲーム機誕生から3~40年は経っている。
その間に、多くの者が知恵と発想と興味で生み出し、人の心を豊かにした。
小説や演劇、アニメーションといった物で伝えるものとはまた一味違って、そこにしかない感動や奇跡を与えてくれる。
それがゲームだ。
その中でも、一世を風靡したものが、アクションゲーム・ロールプレイングゲームだと思う。
勿論その他の種でも、人々を虜にしたシリーズが多く発売されている。
だが、この二つはその中でも抜きんでて多かった気がする。
あくまで偏見だが。
この二つは、有名なゲーム会社が発売するゲームの傾向に多かったし、何より、遊びやすい・理解しやすいといった特徴もあったため、よく購入されただろう。
そして、後者であるロールプレイングゲームというのは、架空の世界で目標を達成するゲームのことである。
その殆どがストーリーや物語に沿って進められる。
舞台は大体が異世界、又は現実世界や黄泉の国・桃源郷・幻想世界などであり、その登場人物や生物も千差万別。
たかがゲーム。
それでも、人を感動させたり、高揚させる“力”を持っている。
俺はその中でも異世界・ファンタジー世界が大好きだった。
某有名RPGゲームや、俺のイチオシゲームFFFでは、数多の魔物と、個性豊かな人物が織りなす奮激の物語が最高だった。
その世界観に心奪われた人間は世界の大半いると思う。
異世界。
そう異世界。
この世の物とはまだ信じられていない世界。
そこに今、俺は立っている。
異世界には魔物がいる。
姿かたちが地球の生物とは大きく異なり、地球には存在しない魔力を操り、技を繰り出す。
弱肉強食の理があり、均衡が保たれている。
まあそんな哲学は今関係ない。
大事なのはピラミッドがそこにはあるということだ。
ピラミッドの頂点は言わずもがな魔王。
ではその一番下にいるのは何か…
最弱の権化、スライムである。
多くのゲーム・小説で「最弱」を手にしてきた魔物であり、マスコット的存在でもある。
一部作品では、「物理攻撃が利かない・打撃を無効化する」などの設定を持つ物もあるが、少なくとも弱いというレッテルを張られている。
そのレッテルがありつつも、このモンスター無しで、異世界は語れなくなってきているのもまた事実。
その独特な人気とイメージを誇るそのゆるキャラが、今正しく俺の前に鎮座している。
それも、恐ろしくプルプルして。
つまり、「スライムが現れた!」だ。
でも見ていると、これはあれだな。
ゼリーだな(棒)。
流線的なフォルムをぎこちなく抱え、半透明な体に光沢を走らせている。
黄色の丸い眼球に、黒目が小さく刻まれており、アニメキャラのように可愛らしい。
上瞼のような物が垂れさがり、こちらを睨んでいる。
体をプルンと振るわせて。
「か、可愛い!?」
『…そうか? 魔法やスキルでしか倒せないうえ、粘度が高くて我は好きではないのだが』
洩れた俺の心の声に、溜息交じりの音声が呼応した。
バテックゴブリンはこの愛苦しい子がだめらしい。
どうやら俺とは趣味嗜好が絶対に合わなそうだ。
王を無視して、俺はステータス解析した。
非表示解除が久方ぶりに起こり、新たな項目と共にこの子の弱さが改めて証明される。
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ステータス スライム Lv1 属・水 体質・酸
攻力5
防力30
体力3
魔力7
精力13
俊敏2
スキル:物理攻撃無効・魔吸収・防御・再生
P0所持中
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新たな項目「体質」が聡慧さんのお陰か表示された。
これはどうやら、これは自己防衛機能を示すらしい。
ハリネズミやヤマアラシの針、蛾や蛇の毒。
これらに挙げられるように、敵を撃退する物理攻撃はこの項目で表されるようだ。
何とも便利なことだ。
そしてそれは等しく、俺に効かないことも意味する。
うん、正直定期報告程度の意味しかなさないね。
そして、この世界のスライムは、ただ滅ぼされる存在でないことも分かった。
バテックの言動からもわかるように、魔力でしか倒せない。れっきとした異世界の産物である。
ちなみに「再生」は「体力即時回復」の下位のスキルらしい。
そんなことを考えていると、スライムは勢いよく突撃してくる。
あーはいはい。
もう可愛いねー。
でもね、残念ながら俺にはその技は効かないのよ。
君と同じく俺も物理攻撃が利かないのよ。
すると、この子。酸を出し始めた。
それが俺をすり抜け、地面をほんの少し溶かした。
うわお!? 何晒してんだ。
ビックリするでしょう。
でも、これがこの子たちの戦法なんだろうな。
魔法が使えず、魔法等に弱い。
ならば凸ってすぐさま酸出す方が賢明。
捨て身というか、特攻隊というか。
距離を置かれたくないからこその動き。
でも、俺には効かない。
…………で、俺も魔力が使えないから、この子を倒せない。この試合・無価値!!
では俺はこの子を眺めるとするかな。
上目づかいでこちらを見つめるスライム。
闘志のようなものが目に映り、影を倒そうと必死に藻掻いている。
酸を出し、アタックし、分裂してタコ殴りにしようとする。
だがしかし、その攻撃の殆どがことごとくすり抜け、打ち消され、垂れ流れる。
嘲笑うかのような影の見下ろしに、半泣きになるスライム。
相手も攻撃してこないからか、自分勝手に振舞っている。
なんなんだ、この可愛さ。
元の世界のゲーム・アニメなんか比でないぞ。
あーもう、畜生。
めんこいー。
愛おしいー。
緑とも青ともとれない色。
その色は影に纏わりついて離れない。
うん、そろそろ本気で倒そう。
小さな経験値も、塵も積もればだ。
心が痛むけど、この世界で生き残って、多くの未知に出会うために倒されてもらおう。
大いなる進歩には犠牲が伴ってしまうのだよ。
ああ、なんでこんなに神は意地が悪いのか。
せめて、心地よい死、若しくはいい転生先をこのスライムには授かってもらいたい。
影の心が暗闇に混じり、刻々擦れていく。
何のこともないが、倒すという考えが少しばかりふらつく。
方法を探しつつ。
今はただ、スライムとの時間が過ぎていく。




