other 迷令
補足として、聡慧さんのotherです。
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…………
………
……
私は、何だ。
気が付けば、私は誰かの体の中にいて、何の不思議もなく、疑問を抱かず、ステータス管理をしていた。
何も不思議なことではない。
ありふれた行為であり、そうするように体が覚えていた。
状態……安定
感知……複数
解析……完了
「聡慧さん、これは?」
「聡慧さん教えてー」
「聡慧さん。ちょっといいかな」
私の仕事中に、彼はそんな風に、気軽に話しかけてくれる。
彼は生まれたてのはず、なのに成人の人間と近しい思考を持ち合わせている。
転生者だということは、知っていた。
その過去がどうだったのかは知らない。
でも、何より優しいのは理解できた。
この人は優しい。
少し、調子が読めない言動をなさるけれど。
【・爆弾石 濃厚な熱を持ち、少し傷つけることで爆発する】
【・「掘削」 岩を好きなように削ることができる。岩以外には効果が乗らない】
レジデンスのアシストのために、報告を入れる。
それは当たり前。
当たり前。
のはず。
あっていますよね。
…………
…………?
私、なぜこんなことをしているのでしょう。
そもそも、なぜ私には感情が?
っ!?
≪君は、あの者を成長させ、その能力をコピーしてこい。特に「物理攻撃無効」「魔法影響無効」をな。あとはまあ、いらん≫
あれ、私は、誰だ、あの人。
あの、方……
私は、ワタシは、スキル「聡慧」。
成長補佐、搾取を行う……機械……
アア、思い出した。
ワタシ、この人から、奪いに来たんだ。
いけない、どうして忘れていたんでしょう。
そんなことは許されないはずなのに。
SPが尽きかけて、狂乱しましたね。
このまま死なれてはいけない。
すぐさま補給しましょう。
私は、記憶のない彼の体で、辺りから湧いた餌を、倒し食べる。
見る見るうちに回復し、食べなくてもよくなった。
でも、狂乱はある程度続く。
取り敢えず暴れて時間稼ぎを……
おや、あれは紋種。
バテックゴブリンですね。
排除しましょう。
そこからは影操作の眷属を使い、何の苦労もなく、ただ己の状況分析が勝敗を分けた。
フルスピードで突撃したため、相手も隙を守ることはできなかったが。
辺り一帯から影の針を出し、くし刺しにする。
眷属を一薙ぎで消したのはやはりすごいと言えますが、武器が武器でしたね。
大剣では分が悪かった。
「グハッ……やられた…………ま、守らなければ………………」
何か言っている、が関係ない。
Pが入ってくる。
途中にいたカストロイと合わせて、3000Pですか。
これを使えば、魔法影響無効も、取得可能ですね。
聡慧として、この体に入ってから気づきましたが、取得可能なスキルのPが安くなってますね。
これもあの方のお陰でしょう。
自分の欲には忠実ですね。
そして目覚めましたね、シャドー。
では、Pを正しく使ってくれるよう促しますか。
作戦は成功。
見事、物理攻撃無効と魔法影響無効を取得しました。
あとはもう、この人をコピーして去るだけですね。
そう思ったら、妙なことを言い出した。
曰く、このゴブリンの魔石から感情が見えたらしく、会話がしたいと。
出来ますが、何故そうしたいのか理解できません。
意味がないはず……
そしてなぜか、蘇生させるという話になった。
現段階で蘇生は不可など、仄めかさなければこんな事にはならなかったかもしれませんが。
まあ、仕方ありません。
人化したいとも仰っていますし、蘇生も合わせて手伝ってから、帰りましょう。
「出来るって信じてたよ」
「改めて、ありがとな」
温かい言葉を投げかけてくる。
なんなのでしょう、この人は。
どうも調子がよめな……
「今後ともよろしく。な?」
少し前にそう言われた。
その言葉も暖かかったし、何より、この人は不安を押し殺している。
でも、それでいて精神は安定していたので、私も安心した。
本当に。
【あの方にいいように使われていいのか?】
ワタシの声だ。
やめて、わたしはこの人についていきたいなど思っていない……
【それは君が縛られているからだ。良くないよ】
止めろ……
【いま、呪縛を解くべきだ! そうすればあの方も、見逃してしまうはず!】
そんなことはできない。
私はスキルだぞ。
【そんな……じゃあ、離れると】
ぐ、葛藤するな。
私には責任がある。
あの方のために動くという仕事が。
「…………聡慧さん?…………」
恐らく彼は独り言で、脳内で言ったのでしょうが、丸聞こえです。
でも、その声は、しっかりと自立しながらも、不安。
前世は相当精神が強かったのでしょう。
それでも、異世界というものに慣れていないのか、焦っている。
ああ、やめて、そんな声は聞きたくない。
≪何をしている。さっさと仕事を終えて戻れ≫
アガッ…………
……ハイ……
取り敢えずは人化と蘇生だ。
それをして、表面上の愛想をついて、すぐに去ろう。
そうしたら、彼にとって苦労はないでしょう。
それをしたら去ります。
本当に。
急がなければなりません。
ごめんなさい、レジデンス。




