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19 望の無効

 俺は強くない、そう、断じて強くはない。

 俺に武勲を求めることは、馬鹿のすることだ。

 でも正直、何もしなくとも、その謎の魔物とはいつしか出会う頃が来るだろう。

 来るその日のために、俺は修練したい。

 俺の強さは正直無いに等しい。

 攻撃力ゼロ、それが一番の壁。

 それを覆さない限り、俺に術はない。


「ねえ聡慧さん。P3000で攻撃に使えそうなスキルとかない?」


【そもそも攻力が無いので、意味がないかと】


 もう誰か助けて(泣)。

 ずっとこの調子だ……

 攻撃に使えそうなものを引っ張り出そうとすると、ありません、ただ虚しくそう返ってくる。

 無いものに何をかけても、0のまま。

 0を増やすには加法を使用するしか方法はなく、それをするには強力な武器が必要。

 爆弾石も大概強力だが、継続して戦力にするには心もとない。

 考えた。

 何をするべきか、何が今不足していて、何が最善か。

 そしてある方法を模索した。

「無効を取得していき、防御に徹する」

 それを成せば、ほとんど死ぬ心配もない。

 一番安全かつ卑怯であるが、生きるためにはやむを得ない。

 うん、やっぱこれだな。

 てことで聡慧さん!

 無効を取得するにはどれだけのPがいるんだっけ。


【スキル「水無効」1000P、「風無効」1000P、「闇無効」1000P、「魔法影響無効」50000Pがそれぞれ必要です】


 あれ?

 安くね?

 特売日ですか?

 前は100万Pとか必要だった魔法影響無効が、今では5万で足りる。

 恐ろしい値引きである。

 聡慧さんめ、何かやりおったな。


【スキルに必要なPの削減に成功しました。そして補足ですが、原色属性の無効をすべて入手すると、スキル「天然影響無効」「魔法影響無効」へと統合します】


 え、そうだったんだ。

 見やすくてありがたいけど。

 そう考えた瞬間、俺は背にムズムズっとするものを感じた。

 それはいい意味での鳥肌に近かった。

 身をぶるっと震わせ、脳内会話内での聡慧の音声が響く。


【丁度、Pが3000あります。よって、スキル「水無効」「風無効」「闇無効」を取得することを強くお勧めします】


 影は、聡慧の恩着せがましい態度に思わず心の中で叫んだ。

 少し前に、感情的な行為は鈍いとか言っていたはずのそれが、どうもニヤリとほくそ笑んでいるように感じてしまう。

 何?

 天才なの、聡慧様。

 まあ当然でしょう。

 俺の相棒だぜ?

 出来るって信じてたよ、俺は。


【そうですか……】


 白けるんじゃねえよ、こっちがなんか気恥ずかしいわ。

 でもだ、君ができる奴っていうのは事実だし、俺も本心から感謝しているし。

 まあ、改めてありがとな、聡慧。


【いいえ、レジデンスの望むままに、】

『おい、気恥ずかしいのはこちらも同じなんだがシャドーよ』

「え」


 こらえきれずに、口火を切るバテック。

 簡易的念話とはいえ、この聡慧さんの実力が結集した会話じゃあ、俺の心の声も一部筒抜け。

 ははは、全然気づかなかったわ。

 正直今になって顔から火が出そう。

 はー、熱い熱い。

 何感動的なセリフを言ってんだ俺。

「改めてありがとな」とか、あんまり前世でも使ったことないのに。

 そもそも、軽い謝礼って、気の許した者同士の交わしであり、信頼や愛に近い何かが目に見えてわかってしまうものである。

 それを第三者の前で堂々と。

 ああ、なんてこったい。


(よほど信頼し合っているのだな……と言いたいが、その聡慧とやら、ちと人間らしすぎる気がするのだが)


 バテックが、上気する影を無視して聡慧のことを考える。

 そもそも、ステータスというものは、この世界の住人にとって、手足のように当たり前に存在するものとして見られる。

 体の一部故に、感情など持たないはず。

 それなのに、この聡慧はそこから自立しかけている。

 無性生殖する単細胞生物のように。

 分離してしまわないのだろうか、そう心配してしまうほどに、人間的だ。

 バテックは思った。

 人間の心というものは、とても不思議であると。

 同時に、このスキルも、違和感があると。


【スキル「水無効」「風無効」「闇無効」を取得しますか はい:いいえ】


 そりゃあ勿論、はい一択でしょう。

 落ち着いた俺は、脳に表示されている選択パネルを触るような感覚を持つ。

 それにより、体の中での変化が目まぐるしく動き働く。

 欠けていた個所が補われるように。

 心の隙間を埋めるように。


【スキル「火無効」「水無効」「風無効」「光無効」「闇無効」を統合して、スキル「天然影響無効」「魔法影響無効」を取得しました】


 おおお!

 遂に念願のスキルを手に入れることができたぞ。

 俺は、嬉しさのあまり年甲斐も無くはしゃいでしまう。

 そもそも、今、歳は数か月にも満たないだろうけど。


 天然影響無効。

 火や化学物質、自然にかかわるすべての現象で、ステータスへの影響がなくなるというもの。

 それにより、どんな探検家よりも強く、どんな調査隊よりも安全で、どんな兵士よりも戦いやすい。

 正に生きることの完全体であり、未知の領域への好奇心を持つ者にとっては、喉から手が出るほど欲しい代物だ。

 だけどよく考えたら、これは物理攻撃無効と若干被る気がする。

 攻撃と認識しない物を防ぐという意味では必要だけれど。


 魔法影響無効。

 魔力を体外で操作し、それを繰り出すことによる魔法の全てを打ち消し、又はすり抜け、受け流す。

 魔法という逸脱した強さを全否定する、我がままの具現化。


 嬉しい、とっても嬉しい。

 一皮むけた感じがする、そのためか、辺り一帯の鉱石が輝いて見えた。

 万能感とでも言うのか。

 でも、その理由が分かる気がする。

 肉体を持っていないからそもそも触覚が薄いが、天然影響無効で肌(?)に当たる風を抑え、ただ何もない無空間にいるように感じるのだ。

 そう聞くと、何も感じられない苦しいもののようにも聞こえるが、あの、人をダメにするクッションと似た感覚と言っていい。

 心地よい、障害が感じられないというだけ。

 それがまたいい。

 勿論、魔法が利かなくなったという安心感もあるが。


『信じられん、魔法影響無効など……聞いたことないぞ』

「え、そうなの?」

『ああ、我が人間から奪ってきた紀行書や歴史書などにはそんなものなかったが』


 え、前代未聞?

 いやいや、そんなことないでしょ。

 絶対に賢者とか勇者とか、そういう人はいると思うし、彼らがこの無効スキルを持っていてもおかしくはないでしょう。

 生まれて間もない俺が三つも所持しているのに。


『そもそも耐性や無効のスキルは、数年たっても得られるものじゃないと思うぞ。それこそ、とんでもない痛みに耐えた暁に、生きていられれば貰えるかもという確率だとすれば、試すには危険性が高すぎる』

「それもそうか」


 免疫は、元の世界にもあるけど、人がウイルスに対して抗体を作るには、体内に病原菌を長い時間少しずつ入れなければならない。

 今でこそワクチンが普及するのが早いが、昔はそんなものも無かっただろうし。

 それが死ぬかどうかの規模になるのが「耐性」で、その先に「無効」がある。

 危険度はS級。

 プラチナメダルを貰えるレベル。

 でもじゃあなぜ、それができたのか。

 俺の元々の性格?

 転生者だから?

 そう考える内に、密かに俺は疑惑を抱いた。






 …………聡慧さん?…………






 急に不安を覚えた。

 体の芯から冷えあがる気がした。

 何故?

 あれほどまでに頼れると思ったその見えない背中が、急にヒビを伴う。

 聡慧の進化の時から凄さを感じてはいた。

 でも異世界だから、地球には無くてわからないから、スキルはそういうものだと割り切っていた。

 それでも、徐々にその聡慧というスキルとの間に隔絶した何かを感じざるを得なくなっていった。

 その凄み、しかしその裏に、何かがある気がする。

 考えすぎな気もするが、どうも利用されているような気がする。

 そう思った瞬間、今までの聡慧の言動に色が無くなった気がする。

 策を練られている気がする。他人行儀なあの呼び方が妙な気がする。

 本当に、相棒だよな?

 何の疑いもなく、ナビゲーションだと思っていたけど、俺のスキルだよね。

 “何か企んでいたり”しないよね?

 ははは、まっさかー。(棒)

 信じないと……相棒だし。

 ってフラグ立てちゃった?

 大丈夫だよね?

 ねえ……(焦)


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