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魔素
使用人と医者が揃って中二病を発症した痛いやつらって可能性をとりあえず除いて、魔素という成分?があると仮定しよう
魔、とつくことから考えると…
(もしかして…魔法とかのあるファンタジーな世界だったりする…?)
オタクというほどでは無いが、それなりにRPGゲームもしてきた慎吾からすればなかなかにわくわくする話だ
良く聞くラノベみたいに「幼少期から鍛えた莫大な魔力で無双」したりなんてできてしまうかもしれない
慎吾は小さな手を上に挙げて短い指を開くと
「むむむぅぅぅ…」
と唸りながら力を込めて(ファイヤー!)と念じてみる
当然の如く何も起きなかった
(呪文的な物があるのか?もしくは発声が必要?色々試す必要があるな…)
元メンテナンス業の性か、慎吾はこういったトライ&エラーが嫌いではなかった
むしろ大好きだった
この日から、慎吾の実験の日々が始まる
36才の精神はあれど、体は赤ん坊
時間だけはたっぷりとある
まあ、結果から言うとまるっと全て無駄に終わった
発声、イメージ、気を溜める等、考えられるそれっぽいことを試しては寝て試しては寝てを繰り返したが、何ひとつとして変化は無い
段々、自分こそが中二病の痛いやつなんじゃないかとすら思ってきた
(はぁ…やっぱ魔法とか無いのか?魔素はある癖に…あのおっさんに魔素を抜かれるから魔素が足らないとか?だとしたら…なんもできねぇな…赤ん坊だし…せめてゲームみたいにステータス「ヴン」とか…え?)
慎吾の目の前に、半透明の板が現れた
「あぅあー!(あんのかよっ!)」
思わず叫んだ
名前:レオンハルト=フォン=グリムワルト【健康】
祝福:無し
半透明の板に書いてある情報はこれだけだ
(情報すっくな!名刺かよ!)
思わず不満を漏らすが、初めてのファンタジー要素だ
慎吾はとりあえず触れようとするが、通り抜けてしまい触ることはできない様だった
(名前と状態、あとは《祝福》か…祝福無しって書かれるとなんか不運な感じで嫌だな…)
やっと出会えたファンタジー要素だが、自称神も魔法とかある異世界に転生させるならもうちょい説明が有っても良かったと思う
神なら時間止めて説明とかできなかったのか…
しかし、今更文句を言っても仕方ない
(でも、ファンタジー世界の第一歩ってとこだ。こっから始まる俺の無双ストーリーだぜ!)
ステータスという新たな「おもちゃ」を得て、慎吾の赤ん坊ライフはますます実験の日々となるのだった