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死んだ
確実に死んだ
なんだか死ぬ間際に健康診断だの胃カメラだのごちゃごちゃ考えてた気もするが、死んだ今となっては痛みも消えて穏やかなもんだ
それにしても、目が開かないし耳もよく聞こえないがやたら周りが騒がしい
体があるのかないのかもわからないが、動く気配もなくて五月蝿くても耳が塞げない
周りも騒がしいが、恐らく赤ん坊?だろうか?その泣き声が随分と近くで響く
まるで自分が泣き喚いてるかのようだ
やはりここは…天国だろうか?
天国って本当にあったんだな…さっきから泣いてる赤ん坊も死んだんだろうか…
正直天国があるとかあんまり信じてなかったけど
…地獄じゃないよね?
そんなに悪いことは…してないと思う
にしても……眠い……
次に目が覚めると、慎吾は暖かな日だまりに居た
「やぁ」
幹も枝も葉も真っ白な樹の下で、同じく白いトーガ?に似た服装の少年が話しかけてきた
「これは君の意識がその体に馴染んで、覚醒する直前に再生される様にした録画のようなものだよ。だから、会話はできない。一回しか言わないから良く聞いてね」
自分がどんな姿でどっちを向いているかも定かではないが、この話は聞かないと、と思えた
少年の言葉をまとめると
・自分は地球の神の一人
・運命の微妙な重なりに生まれる小さなズレによって本来の運命から外れて死んだ魂は、文字通り運悪くも輪廻の輪から外れてしまう
・そうした極稀に輪廻から溢れ落ちる魂を救い上げて、別の世界の輪廻の輪へと渡すのが自分の役目
・その際、本人が希望した場合に限ってある程度の願いを叶えることがある(希望が無い場合、記憶があっても邪魔にしかならないと思うので記憶を消してから送りこむ)
・お金やハーレム、勇者になりたいとかの希望だとそうなるようにする運命操作にコストを食われるから結果的にショボくなりやすい
・君の場合は「健康」っていう自身にしか作用しないざっくりとした希望だったので、リソースを全て健康状態の維持、促進に充てた
・ついでに、久しぶり(神基準なので想像もつかないが)の仕事なので張り切って僕の力のほんの一部を与えた
・その結果、君の「健康」はなんだか概念?のような物となった
・ちょっと予想外だけど、まあ悪いことではない…はず
・そちらの世界には直接干渉できないのでよろしく
・新しい人生を楽しんでね
長々と言うだけ言って、自称神?はにこやかに手を振った
慎吾はまたしても襲いくる強烈な眠気に抗えず、意識を手放した