第四話 チュートリアル
目が覚めると先程と同じ草原に立っていた。
とりあえず頭とお尻を触って確認してみる。特筆すべき変化は無し…背中に羽は無いし身長や体型が変わった様には感じない…身体も違和感無く動かす事ができる。
残念ながら?〈獣人族〉や〈天使〉〈ドワーフ〉などの種族にはならなかった様だ。
『改めましてエキトさん、サポートAI-S-000002です。どうですか?生まれ変わった感覚は』
「どこが変わったのか分からない。と言うのが素直な感想だな。身体に違和感は無いし、頭に耳がある訳でも無いあたり、特殊な種族になった訳では無さそうだし。」
『そうですね、まずはステータスの確認をしましょう。頭の中で〔ステータスオープン〕と念じてみてください』
〔ステータスオープン〕
Name 《エキト》Lv1
種族〔エルフ〕
ジョブ〔精霊使い〕Lv1
HP 100/100
MP 150/150
SP 50/50
筋力 7
防御 6
俊敏 15
器用 15
精神 20
ステータスP:0
《スキル》
〈使役〉〈精霊言語〉Lv1
〈弓術〉Lv1〈鑑定〉Lv1
〈調合〉Lv1〈料理〉Lv1
〈気配察知〉Lv1
〈隠蔽〉Lv1
《精霊》
〔空き〕
「エルフの精霊使い。もしかしてコレはレアな〈アバター〉を引けたのでは?」
『〈ランダム〉の結果としてはレアですね、’運営オススメの組み合わせ’と言う奴です。ステータスの割り振りとスキル選択が上手く纏った良い〈アバター〉です』
現実は小説ほど甘くなかった。えきと。
『〈勇者〉や〈魔王〉は出ない事が前提ですから気にしたら負けです。それに精霊使いは楽しいですよ?精霊は人型から猫型などの動物型、可愛い系からカッコイイ系まで色々居るので気に入った子を仲間にして下さい。』
「仲間を増やしながらの冒険か〜小学生の時に流行ったゲームを思いだすよ」
そう考えるとこのアバターは悪くない。むしろ良い。テンション上がる。恐らくテイマーの様な〈職業〉もあるだろうがこの際気にしない事にする。
『確かに職業〈テイマー〉も存在しています。ですが〈職業〉はあくまで対応した〈スキル〉への補正と専用の技を覚える事が出来るだけです。なのでエキトさんも〈調教〉のスキルを手に入れる事が出来ればモンスターをテイムする事は出来ますよ。この世界のトップを目指す訳で無いのなら一つの事に囚われずいろいろな事にチャレンジするのが良いですよ?』
1つを極めて最強を目指すも良し、広く浅くゲームを楽しむも良し、むしろ観光気分でこのゲームをプレイして貰うくらいでも良い。と言うのが運営の考えらしい。
『それでは、今お話しした〈スキル〉などについて詳しく説明するために〔チュートリアル〕を始めさせて頂きますね』
◇ ◇ ◇
そうして始まったチュートリアルの最初は座学。見渡す限りの草原にぽつんと机と椅子が置かれ、サーポートAIさんによる説明を受けた。
基本は一般的なゲームと一緒だったので困る事は少ないだろう。〈スキル〉は店で売っているのを購入するか、モンスターからのレアドロップ。後はイベントの報酬でゲット出来るらしい。AIさん曰く〈使役〉を所持している俺は〈調教〉のスキルを覚えれば野生動物や魔物も仲間に出来るとの事。君に決めたをするにはまず仲間になる事、そして〈使役〉で指示を出したりするらしい。
「つまり仲間にするのに必要なのが〈精霊言語〉や〈調教〉などのスキルな訳か」
『そうなります。例外はゴーレムでしょうか?ゴーレムは登録者の指示しか聞かないので〈調教〉で敵Mobゴーレム仲間にする事は出来ません。未登録品を生産者から買う事でのみ仲間に出来ます。こちらは〈使役〉だけあれば良いので仲間にするのは簡単ですが、ゴーレム自体が高額なのと、プレイヤーが生産出来る様になるのが暫く先になると言う点に注意ですね。」
ゴーレムかぁ…夢が広がるね…
◇ ◇ ◇
座学が終われば次は実技。机と椅子がポリゴンとなって消え、今度はそこら中に赤や青、緑や黒と言った光がフワフワと浮かび上がる。いや、黒は光では無いな…黒いモヤ?でも汚く無くて、寧ろ綺麗に見える。不思議だ。
『さて、それでは実技になりますが〈精霊使い〉であるエキトさんには精霊を仲間にしてもらわなけば始まりません。ステータスの《精霊》の〈空き〉となっている欄の数がエキトさんが仲間に出来る精霊の最大数です。スキルレベルや職業レベルを上げる事で最大数を増やす事が可能です』
「つまりこのフワフワ浮いてる中から最初の精霊を選べと言う事ですね?」
『そうです。この〔チュートリアルフィールド〕
1平方キロメートルの範囲には現在6001体の精霊が居ます。』
「精霊ってそんなに沢山の種類が居るの?もしかして序盤では仲間になれない伝説の精霊とかも含まれてたりする?」
『確かに強い精霊は何体か居ますが、ここに居るのは基本6属性の精霊だけです。精霊を構成する要素、〔格〕〔属性〕〔見た目〕〔性格〕の4つ。〔格〕は置いておいて基本6属性毎に見た目と性格の違う精霊を集めてありますのでこの中から好きな子を仲間にして下さい。』
〈格〉は精霊の進化度合だったよな?
「〈属性〉は良いとしても、俺にはどれもフワフワした光にしか見えないんだが?」
『よく見るとちゃんと形が分かりますよ?エキトさんの場合〈鑑定〉を使って精霊の情報を見る事も可能です』
試しに近くに居た精霊をよく見てみると確かに中心部は人の形をしている様に見える。
更に鑑定してみると…
〈精霊〉
〔下位精霊〕Lv1
属性/型〈水/人〉
MP:31/145
魔術:〈水〉Lv1
と、確かに人型の水属性下位精霊だった。
『最初の職業に〈精霊使い〉を選んだ特典で最初の1体は必ず仲間にする事ができます。属性で選ぶも良し、見た目で選ぶもよし、〈精霊言語〉を駆使して会話をして相性の良さそうな相手を選ぶの良いかも知れませんね。一緒に冒険をする大切な仲間です。時間の許す限り存分に悩んで決めて下さい。相棒が決まったらその子に触れながら仲間になって欲しいと声をかけてあげて下さいね?』
◇ ◇ ◇
とりあえず近くにいる精霊達を鑑定する
〈精霊〉
〔下位精霊〕Lv1
属性/型〈火/蜥蜴〉
MP:24/130
魔術:〈火〉Lv1
〈精霊〉
〔ーーーー〕Lvー
属性/型〈水/人〉
MP:ー/ー
魔術:〈ー〉Lvー
「あれ?属性と型しか判らない?」
『それはエキトさんの〈鑑定〉のスキルレベルが低いからですね、格上相手に使うと弾かれますよ。ちなみにチュートリアルフィールド内で経験値を貰う事は出来ないので、情報が見えない程エキトさんより強い…と言う事になりますね。強くなりたいならコレ重要ですよ?』
なるほど、〈鑑定〉は基本同格以下、相手のレベルが高いと分からない情報が出てくる…か…
◇ ◇ ◇
ひたすら声を掛けて〈鑑定〉をして回る事1時間。未だに決める事が出来ずにいた。途中5体程良いかも?と思えた精霊は居たが、直感がこの子では無いと告げた為やめた。
俺が何を探しているかって?それは勿論このフィールド内に居るはずの6001体のその1だ何故6000体では無く6001体なのか…
きっとこのフィールドの何処かに他の6000体とは違う精霊が居るはず…
その子を見つけるまで俺は諦めるつもりは無い
「そにしても広すぎるだろ…」
◇ ◇ ◇ー3時間後ー◇ ◇ ◇
「サポートAIさん!俺は決めた!」
『おや?やっと決心が付きましたか?どの子にするんですか?最初に鑑定した水属性の子?それとも3分ほど見つめていた猫型の子ですか?』
「いや、そこの子たちじゃ無くて…」
俺は静かにその子へと手を伸ばす
「俺の相棒としてFWOの世界を旅して下さい」
選ばれたのはサポートAI-S-0000002だった