第三十二話 ベアー
「見つかりませんね、胡椒」
「無いね、胡椒」
「無いな」
『有りませんね』
『無い』
時折モンスターの相手をしつつ、〔胡椒〕探しをする事約4時間。ノアまで探すのを手伝ってくれているが、見つかる気配は無い。
トレントの奇襲は喰らったのかって?喰らったよ?2回だったかな?
『3回です』
・・・3回吹き飛ばされました。
とは言えちゃんと成果もある、幾つかの食材を確保する事が出来たのだ。
〔木耳〕〔りんご〕〔セージ〕の3種類は現実世界と同様の物を数個ゲットし、その他にカラフルなキノコや見たことの無い果実達だった。
この手のFWO固有の食材は食べてみないと、どんな味か分からないので扱いに困る。
それと何故か〔ワーム(極小)〕を沢山手に入れたのでインベントリに入れておいた。
「仕方ない、今日はここまでにして街に戻ろう」
「そうですね、胡椒以外の目的の物は手に入れましたし、戻りましょうか」
「ねーねー、せっかくだしこの先に居るエリア
ボスのジャイアントベアー見に行かない?」
「今の私達が挑んでも確実に負けますよ?」
「見るだけなら問題無いでしょ?」
「まぁ、見るだけなら良いか」
◇ ◇ ◇
という訳でアイラの望み通り、エリアボスである〈ジャイアントベアー〉のいるボスフィールド前にやってきた。
「思ったより可愛い見た目なんですね」
「でもあの見た目で攻撃力はエグいんでしょ?」
「おー!くまクマ熊べ『それ以上は言わせませんよ?』
はい…
ジャイアントベアーは春花の言っていた通り二足歩行している熊で、体長は俺達の倍。
栗色の体毛にデフォルメされた造形が相まって可愛さを醸し出しているが、しっかりとした太さの手足には、顔に似合わぬ鋭い爪が付いている。
体毛が黄色だったらあだ名はぷ『それ以上言ったらボスエリアに突き飛ばしますからね?』
流石にアレには勝てないので黙ります。
◇ ◇ ◇
暫くクマ公を観察していると、別のパーティーがボスに挑戦しに来たので、隠れて観察させてもらう事にした。
「見せてもらおうか、エリアボスのクマ公の戦闘とやらを」
「良いね、僕達の攻略の参考にさせて貰おう!」
「参考になれば良いですけど…」
コソコソとエリア外の木の影に隠れるエキト達3人。
それに気付いているのかは分からないが、特に気にする事なくボスエリアに突入する5人組パーティー。
3人が見ている前で、5人組のパーティーとエリアボス〈ジャイアントベアー〉の戦闘が始まった。
f「エリアボスって1パーティーずつしか挑戦出来ないんですか?」
a「いや、2組目からはボスエリアに入った瞬間に別空間に飛ばされるから、何パーティーでも同時に挑戦出来るよ。」
b「ボスエリアの外から見えるのは最初に入ったパーティーの戦闘だけだけどね」




