第三十一話 トレント
「リーサちゃん!エキトの回復が終わるまでトレント抑えてて!《ガードアップ》」
「分かりました!バフ感謝です」
エキトが攻撃を受けた事を認識したリーサとアイラは戦闘態勢に移行。
アイラの魔法によって防御力アップのバフのが付いたリーサが前衛でトレントを足止めし、その間にアイラはエキトの回復を行う。
「調子に乗ってると死に戻りするよ。って言ったよね?《ヒール》」
「ありがとう。別に調子には乗ってないぞ?ただ、シアさんに教えてもらったトレントの見分け方を実践していただけだ。」
「見分けられて無いじゃん」
「トレントが後ろを向いていたのが悪い」
「はぁ…まぁいいけど。私はリーサちゃんと前衛やるから、エキトは支援射撃よろしくね」
「了解。」
アイラは武器を槍に持ち替えトレントへ向かって行く。
リーサは短剣でトレントの攻撃を往なす事に集中していたが、アイラの加勢によって余裕が生まれ、徐々に攻撃の手数を増やして行く。
そんな2人に矢を当てない様にトレントの樹冠を狙うが、手応えが少ない。
『矢が枝の間を通り抜けちゃってますね。葉に当たり判定は無いので、よく狙って幹や枝に当てる様にしましょう。』
それならと1番太い幹を狙うが、葉っぱが邪魔でいつもより命中精度が悪い。仕方ないので《ダブルショット》で2本ずつ矢を放ち、ダメージを稼いでいく。
こんな時ハクがいたら火魔法で焼いて簡単に終わるんだろうな…
『確かにトレントに火魔法は効果抜群で早く倒せますけど、焼き殺すと戦闘終了後のドロップが著しく悪くなるので今回の様な場合にはお勧めしませんよ』
そう言えば倒し方でドロップが変化するんだったか、火を使ったら燃えて素材は消えるが早く倒せると…
炭とかドロップしそう。
『火魔法の威力が高ければ炭がドロップする可能性はありますけど、今のプレイヤー達のレベルでは難しいでしょうね。』
本当にドロップするんだ、炭を使ってお肉を焼いたら美味しそうだけど、ハクが無理なら諦めるしか無いな…
◇ ◇ ◇
「あれ?」
「きゃあ!」
リーサとアイラの活躍のおかげでトレントのHPは残りわずかとなったのだが、トレントの最後の抵抗として攻撃速度が上昇し、前衛の2人は攻撃の中断を余儀無くされる。
最後くらい活躍しましょうかね…
とは言っても最近新しく覚えたアーツはMPが必要で使用出来ないので、レベルが上がって威力が少し高くなった《パワーショット》を、攻撃速度が上がった代りに動かなくなったトレントの顔にお見舞いしてやる。
どこが顔かは分からないけど、口が有るから顔でいいよな?《パワーショット》。
放たれた矢は綺麗にトレントの口へと命中し、その巨大をポリゴンへと変えた。
◇ ◇ ◇
「エキトナイス!」
「手数を増やされると短剣での接近戦は難しくなりますね…」
「2人ともお疲れ様。助かったよ」
さてドロップの方は…お、〔トレントの木材〕が1つドロップしてる。後は〔トレントの枝〕が1つと〔トレントの葉〕が2枚。
「木材ゲットだぜ!」
「私も1つドロップしたので最低数は揃いましたね」
「それじゃあもう無理してトレントの相手はしなくてもいい訳だね」
「またエキトさんが吹き飛ばされたら戦う…くらいで良いんじゃ無いですか?」
「そうだね、それじゃあ森の探索を再開しよう!」
「はい!」
僕だって吹き飛ばされたくて吹き飛んだ訳じゃ無いのよ?
『必要な数の木材が手に入ったんですから良いじゃ無いですか。これで心置きなく胡椒探しが出来るんですよ?』
確かに!
f「あの沢山あった葉っぱのドロップは2枚なんですね」
a「ゲームだからね」
b「あれ全部ドロップしたらトレント1体倒すだけでインベントリが葉っぱで埋まるぜ?」
f「確かに…」




