第二十四話 レベリング
『エキトさん、あの2人と少々お話がしたいので少し離れて歩いてて貰えますか?』
とシアさんに言われたのがついさっき。
何の話があるのか僕には全然、これっぽっちもわからないけど、とりあえず指示通りに2人の前方30m付近を歩く。
アイラとシアさんは会話できないだろうに…
シアさんは現在そこらに落ちていた雑草を持って飛んでいる。アイラに自分の存在を示す為だ。
『リーサが通訳みたいな事して会話してたよ?』
うお、びっくりした!
いつの間にか俺の肩に座っていたノアがシア達の様子を教えてくれる。
ただし会話の内容を言うつもりは無いらしい。
『そりゃ…ね、後で何されるかわからないし?でも実はエキトさんも分かっているんでしょ?』
ははは…ノーコメント
それから俺はLv4~8の敵が出る狩場に着くまでの間1人寂しく歩いたのだった。
え?ノアはどうしたって?『硬くて寝にくい』とか言ってリーサの元に戻りましたよ?
◇ ◇ ◇
「兎1匹そっち行きました!」
「了解。ウサ公1匹位なら抜けてきても問題ないzグヘッ」
「ちょ!問題有りじゃんよ!《ヒール》」
狩場に着いて約3時間
現在ウサ公4匹と戦闘中…
アイラにバフをかけてもらって、リーサとアイラが前衛でウサ公を引き付けてもらい、俺が後ろから狙う形で戦闘をしている。していた。
抜けてきた1匹のウサ公に対処出来ず負傷、前衛に居たアイラが駆けつけてHPを回復したため現在前線を維持しているのはリーサ1人である。
「エキトさん!アイラさん!助けて!今度は私がやられちゃいます!」
「こっちに来た1匹は俺に任せてアイラはリーサの援護を頼む」
「それは良いけど調子に乗って死に戻りしないでね?」
「ここは俺に任せて先に行け!」
「はいはい」
適当にあしらわれた…
ま、デスペナは嫌なので真面目にやりますか…
《ダブルショット》
コレは〈弓術〉Lv5で覚えたアーツで、少量のSTを消費する事で1度に2本の矢を放つ事ができる。
放たれた矢は綺麗な放物線でウサ公へと飛んで行ったが、1本外れてしまう。
ちっ、1本外れたか
二本同時に放つ《ダブルショット》は着弾地点が微妙にズレるため、ウサギの様な小さい的だと1本は確実に当たるが2本目は外れる事がある。
とりあえずもう1射っと…ん?あれ?
もう1度弓を射る為に矢筒に手を伸ばしたが、矢筒の中に矢の気配が無い…
インベントリに入っていた矢はさっき全て出してしまったので、矢筒に矢が無いという事は俺の攻撃手段が無くなったという事である。ふふ
ふふふ…弓なんか必要ねーや。…ウサ公なんて怖かねぇ!野郎オbグヘッ
ナイフとか持ってないので拳でウサ公を迎撃しようとしたが失敗。
ウサ公の角付きの頭が俺のお腹に減り込む。
急所に当たったのか、突き飛ばされて俺のHPはレッドゾーンになってしまった。
立ち上がろうと顔を上げると二撃めを喰らわせるためにこちらに走ってくるウサ公の姿が…
あ、コレ避けれませんわ。せめて最後まで言わせてほしかった…
◇ ◇ ◇
《*%#h;a<》
死に戻りを覚悟した瞬間、上空から放たれた風の刃によってウサ公はポリゴンへ変わり消えていった。
昨日何度か聞いた謎言語による攻撃。シアさんの風魔術である。
『エキトさん、楽しそうなのは大変結構なのですが、もう少し真面目にやりましょうね?』
降りてきたシアさんは俺の顔の前で止まると少しむくれた表情で俺に言った。
ごもっともです。助けくれてありがとうシアさん…
『どういたしまして。矢が無くなったのなら今回はここまでですね、リーサさん達が相手している3匹は…無理そうなら加勢しましょう。』
ノアは…寝てるのかよ…俺はもう何も出来ないし、シアさんにお任せします。
あー死ぬかと思った。
俺は腰のボトルホルダーから〔初心者用HPポーション〕を取り出してHPを回復する。
そんなボロボロの俺を見てシアさんは
『私が貴方の側にいる限り、死ねるとは思わない事です。どんなにレベル差があろうと、私が貴方を守りますので。』
先程のむくれた表情から一変、優しい笑顔でそう囁いた。
…ありがとうシアさん。
でもそれ、男としては俺がシアさんに言いたかったな…
『エキトさんが私を守ってくれるんですか?』
女の子に守られるのは男として情けないからね…ま、いつになるか分からないし、とりあえずは自分の身を自分で守れる様に頑張るよ。
『楽しみにしてますね。』
あぁ、楽しみにしててくれ。
◇ ◇ ◇
『え、精霊は死なないし、そもそも攻撃対象に出来ないy《*%#h;a<》
『あ、リーサちゃん達無事に勝てたみたいですよ?合流して街に戻りましょう?』
…………そうですね。
ノアの声が聞こえた方向にシアさんが魔術を放ったとか、その魔術がそのままリーサ達が戦っていた最後のウサ公の首を切り落としたとかは見なかった事にしよう。
ちょと良い雰囲気だったんだけどね、今のはノアが悪い…のかな?
『エキトさんもエキトさんだよね、女の子2人に前衛させて、自分は後ろから弓撃っておきながら「女の子に守られるのは情けない」とか言っちゃてさ…』
さ、街に帰ろ
a「右足が痺れた、来いよb。スマホなんか捨てて、こっちに来い。」
a「指を突き立て、俺がもがく様を見るのが望みだったんだろう。」
a「来いよb。怖いのか?」
b「その痺れた足を突いてやる!へへへへっ スマホにはもう用はねぇ!」
b「へへへへっ……誰がてaなんか、てaなんか怖かねぇ!」
b「野郎オぶくらっしゃー」
f「あの人達何してるんですか?」
c「さぁ?」




