第二十二話 調べ物
「あ、丁度秋人も降りてきたわね、ご飯出来てるから座って」
ゲームをしている間に昼食の準備は終わっていたらしく、俺のやる事は残っていなかった。
今日のお昼はロコモコ丼だ。
「お兄ちゃんがゲームにハマるの久しぶりなんじゃ無い?」
俺の前に座る春花がお茶を注ぎつつそんな事を言ってくる。
ここ最近はスマホで気軽に出来るゲームしかやってなかったし、ゲーム=暇潰し手段でしかなくて、ゲームがしたくてゲームをするのは凄く久しぶりな気がする。
「最近はスマホの作業ゲーしかしてなかったからな、FWOには小学生の時やってたRPGみたいなワクワク感があって楽しいよ」
「それは何より。それでお兄ちゃんと理沙のレベルはいくつまで上がったの?」
「俺がLv4で理沙がLv3だな」
「なるほどねーお兄ちゃんがLv4で理沙がLv3かー………ってなんで?」
ナイスノリツッコミ
でもなんでって言われてもなぁ…
「8時半過ぎからさっきまでログインしてたんだよね?FWO時間で6時間以上あったのにお兄ちゃんも理沙も2レベずつしか上がって無いってどーゆー事よ…6時間以上もナニしてた訳?」
「何って言われても料理してただけだぞ。」
「6時間半も?」
「5時間くらい」
「その間理沙は何してたの?」
「チュートリアルだな」
「私の知ってるチュートリアルとお兄ちゃんと理沙のチュートリアルは別物だったりする?」
「同じだぞ?多分。ま、会えば分かるさ」
俺のその返答が不満なのか、ジト目で睨んでくる春花。
「早く食べないとロコモコ丼冷めちまうぞ?」
「はぁ、まぁ良いや。後で詳しく教えて貰うからね。」
◇ ◇ ◇
昼食を食べ終え自室に戻り、再びログイン。
待ち合わせの時間までに少し知りたい事があったので早めにログインした。
まずは困った時の頼れる相棒、シアさんに聞いてみる。
『何が知りたいんですか?』
始まりの街周辺で採取出来るアイテムについて知りたいです。午前中は〈バジル〉〈薬草〉〈雑草〉しか取れなかったけど、他にも調味料があったら嬉しいなって思って。
『…残念ながら、知りませんね』
ホーンラビットとかの事は知っていたから、もしかしたら知ってるのかも?と思ったけど、どうやら違うらしい。
『私が持っている情報は、私自身が実際に体験した事だけなんです。βテスト以前のテストの一環で、暫くこの世界を回っていた時期があったのですが、その時の私の仕事は敵の挙動の確認だったんです。なのでその当時実装されていたモンスターの約半数以上の習性、弱点、HP量などには詳しいのですが、採取や料理などの生産系には弱くて…』
それでホーンラビットの事も知っていた訳ですか。知らないのは仕方ないよ、気にしないで?
それにしてもテストを精霊にやらせたのね…
もしかしてサポートAIのサポートってプレイヤーを、ではなくて運営を、なのでは?
シアさんがご存知無いなら仕方ない。
「困った時は掲示板だよ!」って春花が言っていたので公式掲示板を開く。
それらしき掲示板を流し読みして目的の情報を探す。
こんな時wikiの様なサイトが有ると楽なのだが、どうも運営が潰して居るらしく存在しなかった。
◇ ◇ ◇
掲示板を30分程彷徨った結果、それらしき情報は見つかった。
どうやら始まりの街周辺には〈バジル〉〈パセリ〉〈紫蘇〉〈柚〉が存在しているらしい。
この4つに関してはスクリーンショットが存在するので確実と思われる。
問題はスクリーンショット無し、人に聞いた、と言う明らかに怪しい証言だが、北の草原の奥にある森の手前に〈胡椒〉があったと言うのだ。
欲しい…胡椒欲しい…塩と胡椒さえあれば食材は料理になるんや…
買っても良いんだけどさ、採取できるなら採取したい。
◇ ◇ ◇
「エキトさん、何してるんですか?」
掲示板を見ながら唸っていると、不意に声を掛けられた。目線を上げると、そこにはリーサとノアが居た。
午前中に同じ場所でログアウトしたから、近くにログインした訳だ。
「ちょと調べ物をね、目的の情報は手に入ったんだけど、真偽不明の魅力的な情報があって気になってたんだ。」
「そうでしたか。でもそろそろ時間ですし、集合場所の北の門まで行きませんか?」
「もうそんな時間だったか…分かった、行こう」
掲示板を閉じて北の門返答と歩き出す。
リーサは俺の右隣を歩き、シアさんはいつも通り左肩だ。
なんか…左右から妙な圧力を感じる気がする
「『気の所為ですよ』」
気の所為らしい
『探りを入れつつ若干の牽制だねー』
とは俺にだけに聞こえるように呟いたノアさんの一言…
俺は聞こえなかった事にした。
c「シアちゃんとリーサちゃん…」
f「ですね…」
g「これシアちゃん不利ですよね」
f「AIと人じゃ…」
c「例の企画、なるべく早く実現させなきゃね…」




