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精霊に癒されたかっただけ  作者: キファリス
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第二話 到着

 翌日、俺は朝からずっとソワソワしていた。今朝メールを確認したら今日の夕方に配達する予定となっていたからだ。昨日の春花の説明を聞いてしまっては、ゲームが届くのが楽しみになるのも仕方ないと言うものだろう。

 

 そんなワクワクを胸に今日も今日とて朝飯を作る。仕事上家を留守にする日が多い両親に代わりご飯の用意は俺の仕事だ。なぜかって?春花にご飯を作らせてはいけない、良いね?

代わりに洗濯とかは春花がやってくれてるし、家事は二人で分担して上手く暮らしている。

 

◇ ◇ ◇


「お兄ちゃんおはよう…」

「おはよう春花。今日の朝飯はトーストとスクランブルエッグだぞ」

「いつもありがとうね、それにしても普段の倍はテンション高いね。気持ちはわかるけど」

 

 そうだろうか?まぁ、悪い事でも無いので気にしない事にする。

 

「そうだお兄ちゃん、昨日理沙とチャットしてる時にお兄ちゃんがWFO当てた話したら「サービス開始したら時間がある時一緒にプレイしましょう」って言ってたから、もしよかったら一緒に遊んであげて?」

「もちろん良いぞ」

 

 理沙と言うのは春花の幼稚園からの幼馴染で、フルネームは熊野(くまの)理沙(りさ)。昔から良く家に来て3人で遊んだりご飯を食べたりする仲だ。

 そう言えば最近、昔よりも家に来て遊ぶ頻度が増えてる様に思う。勉強の方は大丈夫なのかと思わなくも無いが、春花と理沙の2人は俺と同じ中高一貫校に通う中学3年生なので成績優秀な2人なら普通に勉強していれば問題無いのだろう。

 

 

 朝食を食べ終わり、片付けをして春花と2人で家を出る。学校に着けば校門で春花と別れ自分の教室へと向かう。

 

 

「おっす、秋人、今日はいつもより顔が生き生きしてるな」

 

 

 教室に入って早々話しかけて来たこのイケメンは、天草(あまくさ)(つとむ)幼稚園からの幼なじみでそのルックスに加え、スポーツ万能というモテ男だ。隣のクラスに日向(ひなた)美登里(みどり)と言う彼女がいる。

 

「おー、たしかに今日のアッキーはいつもより生気があるねー」

 

 そしてこちらのスポーティな美少女が

水島(みずしま)佳奈(かな)、こちらは中学入学からの付き合いで最初の席が隣同士だった事から仲良くなった。それから中学3年間同じクラスになり。高校生になった今回も同じクラス。勝手に運命を感じている。佳奈はその見た目通り中学時代は陸上部で関東大会に出るほどの運動神経を持っている。勉強の方は中の中、良くも悪くも無いと言った感じ。

 

「2人揃って失礼だな、俺は普段から生き生きしてるぞ?」

「「それは無い」」

 

 ありゃ、2人に声を揃えて否定されてしまった。そんなに普段死んでるのかな?

 

「で?実際に何かあったんだろ?もしかして秋人にもついに彼女が出来たか?」

「え⁈アッキーに…彼女…」


 ”ついに”とは失礼な、彼女が居ないのは事実だから言い返せ無いけども。

 

「違う、高校入学前に応募したキャンペーンに当選しただけだ」

「相変わらず秋人は運良いな」

「なんだ彼女が出来た訳じゃないんだ…よかった(小声)」

「それにしても随分と嬉しそうだけど何が当たったんだよ」

「それはあまり大きな声で言えなくてなちょとお耳を拝借」

 

 まだ朝早くて人が少ないとはいえ持っている事がバレればそれなりに面倒な事になるのは予想できるので2人にだけ聞こえる様に小声で事情を説明する。

 

「「えぇーーーーーーー」」

 

「うるさいわアホ」

「悪い悪い、でもそりゃ嬉しいわな。」

「でもコレでみんなでFWOやれるね」

「努がFWOを持ってるのは知ってたけど佳奈は予約抽選外れたとか言って無かったか?」

「ふっふっふー、実は繰り上げ抽選に当選したのだ!諦め無くて良かったよ」

 

 そしてどうやら努の彼女の美登里もゲットに成功しているらしく、サービス開始日翌日の日曜日はみんなでパーティーを組んで遊ぶことになった。

 

 

◇ ◇ ◇



そして放課後、いつもより少し長引いたSHRが終わった後はダッシュで家に帰った。この時の俺は荷物ありでも佳奈の本気より早かったのではなかろうか。

 

家について玄関を開けるとちょうど背後で、車の止まる音がした。振り返るとそこには宅配便のトラック…ではなく「キーファー」のロゴがでかでかと書かれたトラックと白いバンが一台づつ止まっていた。

 俺はとりあえず家に入って荷物を置くと出迎えの為に外へでる。

 バンから作業員らしきつなぎを着た人達数人がトラックの2台へ行った後、助席からスーツをピシッと来た大人な女性が出てきてこちらに来る。

 

「初めまして、私株式会社「キーファー」広報課の佐伯と申します。貴方が遠州秋人様でよろしいですか?」

「は、はい。確かに私が秋人です。」

 

 キーファーと言うブランド力とこの女性の仕事出来ますよオーラに萎縮してしまう。

 そんな俺の様子を察したのか佐伯さんから和かに話しかけてくれる。

 

「高校生だもんね、これくらいフランクに話した方が良いかしら?」


 お、大人な女性から近所のお姉さんくらいに圧力が消えた…ありがたやぁ…

「それでお願いします」

「OKー私が来た理由はわかってると思うけど、君が当てたゲームの設置よ。」

「設置?DREAMってヘッドギアじゃ無いんですか?」

「あれ?昨日来たメール読まなかった?設置にはシングルサイズのベッドと同じ広さのスペースが必要ですってやつ」

「読みましたけど?」

「ん?あーもしかしてゲームだけ貰えると勘違いした?貴方が当てたのはFWOのパーフェクトセットよ?DREAM専用に開発されたベッドも付いた最高級品よ?」

「なるほど、だからそんな大人数で来た訳ですね」

「そう。もしよかったらこちらで今あるベッドと交換するけどどうする?親御さんと相談したいならまた後日来るけど?」


まさかベッドまで付いてくる仕様だったとは、説明はちゃんと読まないとダメだね。

俺は今あるベッドと専用ベッドを交換してもらうことにした。両親には基本的に家の事は任されてるし、この程度は事後報告でも問題無い。

キーファーのメカニックか作業員な人達は手早くベッドの搬出やら設置やらを行っていく。

 

「そうそう秋人君、スマホの契約情報から把握した事なんだけど、妹さんがいるよね?実はお偉いさんの思いつきで妹さんの分のDREAMとFWOもあげようって事になったから。コレ、後で妹さんにプレゼントしてあげて。」

 

 そう言って現在設置中の俺のベッドとは別のノーマルバージョンのDREAMとFWOのセットを、渡される。

 

「良いんですか?」

「良いの良いの、上が決めた事だから。少年は素直に貰っておきなさい。まぁベッドが無いのは勘弁してね」

「ありがとうございます。妹は抽選に外れたの凄く悔しがっていたので喜びます」

「それは良かった。それにしても秋人君は運が良いね…それだけ運が良いとFWOでも良い事があるかも知れないね。」

「え?それってどう言う意味ですか?」

「ハハハ…詳しくは言えないけどFWOにはプレイヤーの運が大きな意味を持つシステムがあったりするのよ」

「は、はぁ」

「ま、頭の片隅にでも留めて置いて。さて君の部屋のベッドの交換は済んだから。お姉さんはコレで失礼させてもらうよ。それじゃあFWOを思う存分楽しんでね。」

 

 そう言うと佐伯さん達は車に乗って帰って行った。

 


◇ ◇ ◇



二階にある自分の部屋へ行ってみると、そこには場違いに高級感漂うベッドとベッドセットが鎮座していた。

とりあえず一旦一階に戻り制服を脱ぐ。そしてシャワーを浴びて着替える。


そしてベッドにダーイブっふぅぉあぁ


 なにこれ柔らかッ。これはもうベッドと言うかもう雲。永遠と寝てられる気がする。

 

「いかん、いかん。意識が飛ぶ所だった。恐るべし高級ベッドの魔力」

 

 このまま寝てしまいそうだな、夕食の準備をするか…名残惜しいが自分の部屋を後にする。

 


◇ ◇ ◇


「ただいまー」

 

 夕飯の準備を始めると春花が帰ってきた。

 

「お兄ちゃん、街中でキーファーのロゴが書かれたトラックを見かけたたんだけど、もしかして家に来た?」

「おう、さっきDREAM置いて帰っていった所だな。」

「やっぱり家に来たんだ。あんなトラックみた事ないってクラスの男子が騒いでたよ」

「確かにあれは見ないよな…所で春花、そこにある箱開けてみ?」

 

 先程佐伯さんに渡された春花用のセットを指差す

 

「ん?おおぉーこれが本物のDREAMかー!お兄ちゃんが羨ましいよ…」


あ、そうか、DREAM置いていったとしか言って無いからソレを俺のだと勘違いしてるのか。

 

「いや実はな、それ春花の分なんだ」

「え?」

 

「妹さんが出来ないのは可哀想だとキーファーの上層部が気を使ってくれたポイぞ?」

「・・・・」

 

 〜1分間の沈黙〜

 

「お兄ちゃんありがとおぉぉぉぉぉぉぉ大好き、愛してる」

 

 突き飛ばす勢いで抱きつかれながら泣かれた。嬉しさはわかるが色々問題がありそうだから落ち着いてくれ。

 

 その後春花が泣き止んで冷静になるのに20分かかり、お互い恥ずかしかったのでとりあえず俺は夕飯の準備を再開し、「春花は宿題をする」と言って二階の自室篭った。

   


2時間程経つと春花が降りてきて改めてお礼を言われた。俺は別になにもして無いので御礼ならキーファーにでもと言ったが、それでも俺に言わないと気が済まないらしい。

 

「でもコレで春花だけ仲間外れにしなくて済むから良かったよ。日曜努達とパーティー組むんだけど春花も一緒にどうだ?確か6人がパーティーの上限だったよな?」

「うん、そうだよ。良いね、みんなでパーティー組んでやってみよ!理沙にも私から言っておくから努さん達にはお兄ちゃんから伝えといて」

「了解。明日学校で伝えとく。」

「明後日のサービス開始が待ち遠しいね、お兄ちゃん」

「そうだな」


次からゲーム

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