第十八話 料理・下
『ふぅ。ご馳走様でした。』
シアさんソーセージ完食。体型に変化無し。
『女性に体型の話をするなんて失礼ですよ』
ぐぬぬ…
『それよりエキトさん。兎肉、そろそろ良いんじゃ無いですか?』
確かにあれから30分経っている。
キットの収納に食器やカトラリーが入っていたのでそれらを有り難く使わせて貰う。
作った料理は、最後に名前を付けてる事で完成する様なので適当に〈塩焼き兎〉にしておく。
そうして出来た料理を〈鑑定〉したのがこちら
〈塩焼き兎〉(料理)
・レアリティ:☆1
・品質:★1
解説:ホーンラビットのもも肉に塩を振って焼いた物。
レアリティと品質が星1なのが気になるが、始まりの街付近の魔物の肉で作った料理だしこんな物だろう。
ちゃんと(料理)になった訳だから、コレは成功。折角だし、早速食べよう。
『私はソーセージでお腹いっぱいなので遠慮しますね』
あ、はい。
気を取り直していざ実食。
味は…うす塩味の鶏肉?
不味くもなく、美味くもなく。可もなく不可もなく。ただの肉。
あえて言う事があるとすれば、この世界での初めての食事がイルさんのホットドッグで良かった。いやマジで。
もし最初にコレを出されたら、味覚の再現なんてこんなもんか…と思った事だろう。
ゲームとは言え料理は残さず全て食べましたとも。自分1人で。
シアさんはソーセージの余韻を壊したく無いんだと…
◇ ◇ ◇
生産系スキルのレベルを上げるには、ひたすら作るしか無いそうなので、理沙が来るまで料理を続ける事にした。
待ち合わせ場所に指定した屋台の店主は王都へ旅立ってしまったが…俺がここから移動しなければどうにかなるだろう。
それじゃあ料理再開。
いつ理沙がチュートリアルを終わらせて来ても良い様に、今度は時間の掛からない料理にする。
とりあえずインベントリから…〈鹿の肉〉をバラ肉で取り出す。
取り出したバラ肉を出来るだけ薄くスライスして塩を振る。
お金貯まったら塩以外の調味料を纏め買いしよう。最低でも胡椒は絶対買う。
熱したフライパンにお肉を入れ火が通るまで炒める。
名前は…〔鹿焼き〕で良いや
〈鹿焼き〉(料理)
・レアリティ:☆1
・品質:★1
解説:鹿のバラ肉をスライスし、塩を振って炒めた物。
相変わらずレアリティ・品質星1だが気にしない。むしろこんな序盤の食材で星が沢山付いても困る。
とりあえず出来上がった料理はインベントリへ閉まっておく。後で努にでも食べさせよう。
さて、現在時刻は現実時間で9:30分。待ち合わせ予定時刻だ。通りに出て辺りを見回すが理沙らしきプレイヤーの姿は見えない。
『チュートリアルにかかる時間が30分…というのはあくまで平均的な話ですし、ゲームに慣れていない方やキャラメイクに凝る方などは2、3時間かかる事も有りますよ?』
理沙には時間は気にせずにチュートリアルをして良いからって言ったし、まだ暫くかかるかもな
『でしたら料理をつづけるのはどうですか?生産系スキルはレベルを上げるのに数をこなす事が重要ですし、〈料理〉Lv5までならエキトさんの為になるはずです』
Lv5で何かあるの?
『《再現》というMPとSPを消費して一瞬で完成させるアーツを覚えます。Lv5以降はこの《再現》が使えるか使えないかで効率が変わってくるそうなので…』
〈料理〉Lv5 以降は俺自身のレベルを上げてからの方が良いと…
『はい。それに美味しい料理食べたいですし…』
本音はどっち?
『黙秘権を行使します』
まぁ良いや…
それじゃあ今の〈鹿焼き〉と同じレシピを理沙が来るまで繰り返しますかね…
a「エキトが料理してる時のシアさん、なんか落ち着き無くないか?」
f「料理について教えたいけど教えられなくてもどかしいんじゃ無いですか?」
c「そんな制限は掛かってないはずよ?むしろ精霊って料理しない、出来ない?から興味津々って感じじゃ無いかしら?」
b「多分cが正解だけど、個人的には’お腹すいたけど明らかにイルのホットドッグ以下だから食べるか迷ってる’に1票入れたいね。」
シア『兎と鹿なら僅差ですが鹿の方が美味しそうですね。始まりの街周辺では、なるべく鹿を狩りましょう』




