第十三話 理沙
春花の親友=熊野理沙
ヘッドセットを外し、ベッドの脇に置いて時計を確認すると本当に16時だった。
FWOの世界で8時間近く動いていたのに時差を感じ無いのはありがたいな。
ベッドから起きて身体を動かしてみるが違和感も無い。
とは言えずっと寝てゲームしてたら何処かしらに不調は出そうだな…
と、そんな事を考えながら一階のリビングに顔を出す。が誰も居ない。
「春花はまだゲーム中か…」
なら予定通り夕飯の買い出しだな…
◇ ◇ ◇
今日の夕飯は何にしようかな〜?
今の気分はパスタだが、お昼に焼きそばを食べたので2食連続麺料理は無いな。
早めのお昼ご飯だったし、夜はガッツリ食べたい。
「お、豚バラの切り落としが安い!今日はコレで豚丼にしよ。」
メニューが決まれば後は早い、特売の豚バラ切り落としとネギや生姜ニンニクなどの香味野菜、それと切らしている調味料をカゴに放り込みレジに並ぶ。
「あれ?秋人さん?夕飯の買い出しですか?」
振り向くと春花の親友の理沙だった。
「やあ理沙。その通り夕飯の買い出し中だよ。ちなみに春花はゲーム中だったから置いてきた。」
「良いなぁ…実は家のルーターが壊れちゃって、まだFWOにログイン出来て無いんです。お父さんが仕事帰りに新しいの買って帰ってくれるんですが、遅くなるので実際にプレイできるのは明日になりそうです」
「それは災難だったね」
「明日、皆んなでパーティー組んでやる予定じゃ無いですか?私だけレベル低いと思うと悔しくて」
「まぁ集まるのは午後からだから、午前中に少しレベル上げすると良いと思うよ?それに実は俺もまだLv2だから、理沙とそんなに変わらないんだよね」
「まだLv2?秋人さんてゲーム苦手でしたっけ?」
「得意でも苦手でも無い程度かな、実は色々あってチュートリアルにゲーム時間で5時間かかっちゃってね。あ、普通は30分位で終わるから安心して」
「何をしたらチュートリアルに5時間も掛かるんですか…」
「まぁ、色々あったのよ色々」
サポートにつくAIが強いとは限らないし、何よりランダムで思い通りのアバターを引く可能性が低すぎる。下手に教えて期待させるのは悪いしな…
「じゃ、じゃあ秋人さん!明日の午前中、一緒にレベリングしませんか?」
「レベリングは元々する予定だから構わないよ?」
「本当ですか!ありがとうございます!それで…もし良かったら…なんですけど、今日の夜はFWOにログインしないで欲しいんです。私達のレベル差が少ない方がレベリングしやすいと思うので。ってそれは無理ですよね。」
「んー…今日の夜は宿題でもやっていれば良いし…別に良いけど」
「本当ですか!ありがとうございます!それじゃあ私、明日の9時にゲーム始めるので少し時間を取って9時半に向こうで会いましょう!」
「俺は料理スキルのレベル上げしながら待ってるから、時間は気にせずにチュートリアルして良いからね。それじゃあ始まりの街の噴水と冒険者ギルドの間ある〈イル〉って子が店主の小さいホットドッグの屋台で待ち合わせにしようか」
「イルさんのホットドッグ屋台ですね、わかりました!」
「始まりの街のNPCには有名な屋台らしいから、分からなかったら近くのNPCに場所を聞くと良いよ」
「はい!あ、秋人さん、レジ開きましたよ」
「それじゃあまた明日。あぁ、俺は〈エキト〉でやってるから」
「私は、シンプルに〈リーサ〉にする予定です。」
理沙→リーサか、シンプルすぎませんかね?
呼び間違える事が無さそうなのは良いけど…
a「〈エキト〉のログインが遅すぎるぞォォ」
c「早く来てあげて…シアちゃん見てられない」
b「おかしい…これはなにかがおかしいぞ…あの年頃なら他の何よりも買ったばかりのゲームを優先するはずだ。なのに20時を過ぎてもログインして来ないなんて…」
e「何かがあったに、違いない…」
もうお分かりだろう‼︎
〈エキト〉にログインする気が無いだけである




